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これからのお仕事こうします

 私は、あるテレビ局の記者として東京からで6年間のスポーツ畑での業務を終えて、滋賀県の大津市に異動となります。9月からです。

 夢にまで見た17年ぶりの関西です。
 なんでやねんをはじめとする関西弁、琵琶湖をはじめとする自然。
 どれだけ気持ちが落ち着くのだろうかと想像するとちょっとわくわくしています。
 本当は引っ越しのあれこれに食傷気味ですけど。

これからのお仕事こうします

 記者人生12年目の目標は、ジャーナリズムの原点に立ち返ることです。
滋賀県はニュースの規模としては小さいかもしれませんが、担当する業務は行政や選挙、災害など多岐にわたります。

 若手の頃と役割も変わりそうです。いわゆる新聞社でBBと呼ばれる立場で赴任します。(ビッグブラザーの略)
 通常業務のほかに若手記者の教育係も任されるとのことでした。(ほんまか)

本題に戻ります。今はジャーナリズムの本質が問われている時代だと思います。
 メディア不信によって厳しい目がそそがれています。
 情報を発信するだけならもはや誰でもできる時代です。
 不満は政治報道だけにあるのでしょうか。そうじゃないでしょう。
 ひとりひとりの伝え手の意識が変わらないといけないはずです。

報道機関の労働生産性や多様性に問題あり

 私の最初の担当は、日本メディアらしく事件事故取材でした。いわゆるサツ回りです。
 日常的なパワハラに夜討ち・朝駆けの長時間労働。新卒で入った私は疲労や、寝不足に頭がボーっとして考えることができなくなります。
なんで、このやり方じゃないといけないんだろう。もっと効率的なやりかたがあるはずだといった疑問は、未熟さや情報が「とれていない」ことを指摘され続けて、消えていきます。
 このブートキャンプ、結局は、取材先を待って話を聞き続ける、足で稼ぐ「回るしかない」というひとつの方法論を私の体にたたき込みました。
ひとつの解ではあると思います。しかし、すべての人に通用する方法ではなく現代的ではないとも思います。実際にサツ取材に長けていなくても優秀な記者はいっぱいいますから。

公権力の取材において、圧倒的な情報量を持つ取材先から情報を引き出すために、記者は清濁併せ呑む取材を重ねてきた。特に政権幹部や捜査当局を担当する記者は、ごく少数の関係者が握る情報を引き出すために、夜討ち・朝駆け、懇談などのオフレコ取材で「取材先に食い込む」努力を続けている。
~中略~しかしゆがんだ働き方が、ジャーナリズムや報道のゆがみを生じさせ、「信頼」というメディアの最も大切な基盤をむしばんでいる。「賭け麻雀」はそうしたゆがみの象徴であり、セクシャルハラスメントの泣き寝入りや形骸化した記者会見と同様に、日本メディアの取材慣行・体質に根ざした問題だ。
政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す  南彰 より

 当時は当たり前だったことでも、そうじゃなくなったということでしょう。短時間でWLBを保っても成果は出せるはずだし、欧米の記者はそうしているとも聞きます。

多様性を担保できるか

 加えて、報道機関で課題となっているのは多様性だと思います。
特に「これでわかった!世界のいま」のブラックライブスマターの特集で炎上した問題の一因はそこにあると私は考えています。
多様性の欠如と、異なる意見をぶつけ合える風土が欠けていたことなどなどです。
 日本企業全体の問題とも言えますが、報道現場自体は、かなり男性社会の影響が色濃いです。ボーイズクラブ的な価値観と長時間労働、多様性のなさ、これらが連関して徐々にひずみが生まれていくのだと思います。
こうしたところも多様な視点の欠如につながる危険性をはらんでいます。

大津でジャーナリズムを取り戻そう。

 きょう、先輩記者と話したら、「日頃見過ごされがちな事件事故ひとつとっても、掘り下げると社会的な問題がいくつも絡んでいる」という話になりました。その記者は、仙台の仮設住宅で火事があったときにお亡くなりになった人を掘り下げて取材したら、「被害者のだんなさんが震災関連死だったこと、その後、被害者の人が足が不自由になったこと、火事がおきた日に限って近所の人の見回りがこなかったこと、など多くのことが重なっていたことがわかった」と話していました。
 経験を積んだ今だからこそ、広い視野で取材ができるはずです。すこし気合いを入れ直して、ひとつひとつの物事を掘り下げていければ。これが大津でやりたいことの一例です。
 
 どういう仕事がしたいのか言語化するのに、先ほどの南彰さんの著書で紹介されていた韓国の言論労組の声明の内容がよかったので、書かせていただきます。

もっぱら事実に基づいて真実を追究するジャーナリズムの本分、普遍的な人類愛や人権の価値を中心にいおいて、俺に対する反省と批判をし、事態の本質や解決策を模索しなければいけない。普遍的に追求すべき人類愛の価値と、理性の根拠を中心にこつこつと調べる報道をすべきだ。
言論労組声明より

 若い仲間たちとともに歩みます。
小さなことでも世の中の理不尽や、社会に埋もれる問題を掘り起こし、権力としっかり対峙します。

 こつこつと、誠実に、粘り強く。前向きに。
 琵琶湖のほとりで楽しく元気に。

 もちろん、ユーモアや明るさで元気が出るような話題はスポーツをずっと伝えてきた自分だからこそ続けてやっていきたいと思っています。

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