【菅野裕子×田尾下哲】音楽と建築を語り尽くす――“良いホール”の条件って、何? 耳で聞く! 建築の“旋律”論――識者が語る建築と音楽の関係

――J-POPのコンサートを楽しむには、どのような空間が最適で、オペラを十二分に味わうには、どんな空間が適宜とされるのか?離れているようで、実は密接な関係にあった“建築と音楽”の歴史を振り返りながら、両者の共通項を解く。

東京文化会館
1961年に竣工。「東京都開都500年祭」の記念事業として開館し、建築家・前川國男の代表建築として知られている。海外の著名な歌劇公演が開催される場所として世界的な建物は、昨年改築を施し、リニューアルオープンしたばかり。(写真/黒瀬康之)

 建築と音楽――一見、どのような共通性を持つのか首を傾げてしまいそうな2つの言葉だが、はるか昔、数世紀も前から、建築と音楽は同じ視点から語られることが多く、また共通する項目がいろいろと指摘されてきた。例えば1436年、フィレンツェの大聖堂「サンタ・マリア・デル・フィオーレ」の献堂式にて発表された記念碑的楽曲「ばらの花が先ごろ」の小節の長さと、その大聖堂の長さや高さには〈6、4、2、3〉といった共通する整数が隠されていたといわれている。

 果たして、建築と音楽の関係性は、これまでの建造物にどのような影響をもたらしてきたのか。また、“音”にとって良いホールと悪いホールの差異とは、いかなるものなのか。

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