グッチが偽ブランド品をサンプリング! “ブート・クチュール”の複雑化する最尖端

――ブランドのロゴを勝手に使い、自己流にアレンジした“ブート・クチュール”と呼ばれるアイテムが、最近ファッション界でイケてるという。しかし、“偽ブランド品”とは何が違うのか? ファッションと法律の両観点から、その最新状況と是非を整理してみたい。

2人がかぶるキャプはシュプリーム……と思いきや、ボックスロゴがなんか違う!?(写真/小濱晴美)[衣装協力(キャップ)]作品タイトル:Dear Supreme/作者:GraphersRock x Nukeme/価格:非売品/問い合わせ:nukeme.nu@gmail.com

“ブート”とは、“Bootleg(ブートレグ)=海賊版、密造品”のこと。それらを自分流に解釈して仕立てる(=クチュール)ことを指した“ブート・クチュール”なる言葉がある。“オート(=高級)クチュール”とは真逆といえるものだが、近年、ファッション界でこのブート・クチュールが注目を集めている。しかも、悪い意味ではなく“良い意味”において、である。

 2018年夏、グッチは30年前のブート品をサンプリングした「グッチ〔ダッパー・ダン〕コレクション」(84ページ写真上)を発売した。ダッパー・ダンとは、1980年代から90年代初めにかけてカルト的人気を誇った、ニューヨーク・マンハッタン出身の黒人テイラーだ。独学で服づくりを学び、ハーレムにショップを開くと、グッチ、フェンディ、ルイ・ヴィトンなどハイブランドのモノグラムを全面にプリントしたファブリックやレザーを密造。およそそのブランドの製品とは思えない独自のスタイルを生み出し、ブルゾンやスーツなどをオーダーメードで仕立てた。もちろんブランド側には許可を取っていない違法ビジネスだったが、黒人のヒップホップ・スターやアスリートたちにとって彼のアイテムを着用することがある種のステータスになっていた。

 ところが88年、彼の顧客だったプロボクサー、マイク・タイソンとライバルのミッチ・グリーンがダッパー・ダンの店で暴行事件を起こす。この事件はテレビや新聞で大きく報道され、ダッパー・ダンの存在やブート・クチュールも世間に露呈してしまう。これが原因でブランド側がこぞって彼を訴え、92年、ダッパー・ダンの店は閉店に追い込まれた。

ヒップホップのクラシック(名盤)のひとつとされている、エリック・B&ラキムのアルバム『Paid in Full』(1987年)。このジャケットで2人が身にまとっていたのも、ダッパー・ダンが手がけたブート・クチュールだった。

 ファッションジャーナリストのA氏は、ダッパー・ダンについてこう評する。

「単にブランド名をプリントしただけのコピー品は、アジアを中心に世界で流通していますが、自身のテイラーの技術を駆使したクリエイティブなブートという意味で、彼は異質でした。サンプリングの仕方にしてもひねりが効いていて、同時代のヒップホップ文化と完璧にリンクしていたといえます」

 そこに注目したのが、2015年にグッチのクリエイティブ・ディレクターに就任したアレッサンドロ・ミケーレだ。17年6月に発表した18年クルーズコレクションには、袖が大きく膨らんだファージャケットが登場。これが、ダッパー・ダンがかつてデザインしたジャケットに似ているとインスタグラムのアカウント「Diet Prada」(87ページのコラム参照)で指摘されて、話題となった。ほどなくアレッサンドロ・ミケーレは、このジャケットはダッパー・ダンへの“オマージュ”とソーシャルメディアで説明。その後、同年9月にはダッパー・ダンを17年秋冬シーズンのメンズのテーラリングキャンペーンモデルに起用し、18年にはオーダーメードでメンズウェアを仕立てるダッパー・ダンのアトリエをオープンした。そして、18年秋冬コレクションではダッパー・ダンとコラボレーションした先述の「グッチ〔ダッパー・ダン〕コレクション」を発表するに至ったわけだ。すなわち、本家がニセモノをリスペクトした上にフィーチャーするという、複雑な事態が起きたのである。

ストリートにすり寄るハイブランドの魂胆

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