声優新書はオタク以外が読んでも楽しめるものなのか? 現役声優と声オタによる匿名本音レビュー

――前記事「岩波書店の参入で、ジャンルとして確立された!?――事務所ビジネスの闇は書けない? 人気声優の新書が増えたワケ」にも登場した現役声優に加え声優オタに、それぞれの観点から声優新書(+単行本)を本音でレビューしてもらった。
※レーダーチャートの数字は両者の意見を参考に、編集部で独自に算出

■声優新書の始まりにして、痛快
『声優魂』

星海社/2015年/820円(税別)

[著者]大塚明夫(おおつか・あきお)
1959年生まれ。マウスプロモーション所属。文学座養成所を卒業後、俳優・声優の道に。代表的な役柄としては、ゲーム「メタルギア」シリーズのソリッド・スネークやアニメ「攻殻機動隊」シリーズのバトーなどが挙げられる。また、外画ではスティーヴン・セガールやニコラス・ケイジの吹き替えを担当することも多い。声優・俳優の故大塚周夫は実父となる。

声優界に並び称される者のない唯一無二の存在、大塚明夫。――誰よりも仕事を愛する男が、「声優だけはやめておけ」と発信し続けるのはなぜなのか?「戦友」山寺宏一氏をはじめ、最前線で共闘する「一流」たちの流儀とは?稀代の名声優がおくる、声優志望者と、全ての職業人に向けた仕事・人生・演技論であり、生存戦略指南書。
(同書「内容紹介」より引用)

(現役声優 評)
この本は、これから声優を目指す人というより、すでに声優業をかじっているような学生以上・声優未満の人に向けて書かれているように感じました。帯でも「声優だけはやめておけ」とうたっているように、前半は「声優はダメだ」とひたすら書いて、最後に「それでもやりたいのであれば……」と盛り上げていくので、くすぶっている声優が読むと感動するはず。でも、この本を読んで「やっぱり声優をやめよう」とはならないでしょうね(笑)。「声優はやめておいたほうがいい」というのは同感で、今、声優を目指すのならアイドル活動とかをして、そこから声優に転身したほうが売れると思います。

(声オタ 評)
声優業界の現状などへの苦言も盛り込まれていて、大塚明夫さんの実績と人望があってこそ言える内容なのだろう。「声優とは『生産社会』を諦めた人間の行き着く場所」と言い切るなど、とかく昨今の声優ブームに対しての強烈な右ストレートという感じが痛快。ただ、内容としては「芝居論」の占める割合も多く、純粋に「声優」という存在が好きな人にとっては読む必要のない本でもある。文中の痛烈な物言いに、声優に萌えたいだけのヲタは「こういう厳しい先輩が、俺の推し声優の才能を潰す瞬間が来るかも!」とビクビクしてしまうかもしれない。

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