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グーグルと国連がSDGsのためのデータコモンズを発表――国連のデータを一元化し、誰もがアクセス可能に

グーグルと国連経済社会局は、国連総会ハイレベルウィークの期間中となる9月19日、新たなデータ共有イニシアチブ「UN Data Commons for the SDGs(SDGsのための国連データコモンズ)」を発表した。総会の関連イベント「SDGメディア・ゾーン」では、それぞれの担当者が登壇し、SDGs達成に向けてデータを活用する重要性やシステムの概要について語った。

SDGs達成・加速化に向けてデータを活用する重要性

グーグルと国連の協力による「UN Data Commons for the SDGs」(以下、データコモンズ)は、SDGsに関連するデータを広く共有しアクセス可能にするための取り組みで、発表に伴いデータの検索や閲覧ができるウェブサイトが公開された。

SDGメディア・ゾーンのセッションでは、グーグルの研究/技術/社会担当上級副社長のジェームス・マニイカ氏と国連経済社会局政策調整・機関間担当事務次長補のマリア・フランチェスカ・スパトリサーノ氏が登壇し、モデレーターを国連広報部のナネット・ブラウン氏が務めた。

左からグーグル:ジェームス・マニイカ氏、国連経済社会局:マリア・フランチェスカ・スパトリサーノ氏、国連広報部:ナネット・ブラウン氏 (写真:UN Photo)

まず、今回のデータコモンズを立ち上げた背景について尋ねられた国連のスパトリサーノ氏は、次のように語った。

――“データ”はより良い決定を下し、正しい選択をするため、私たちが生きる世界を理解するため、SDGs早期達成に向けての行動を起こすために必要です。国連では多くのデータや統計情報を作成し保有していますが、これらのデータへ手軽にアクセスし、生データを理解するのは時に難しい場合があります。

そこで、国連のシステムを刷新するようにと事務総長からの直接の呼びかけがあり、次の時代へと進む試みを進めることになりました。このデータを多くの人々にアクセス可能にしようという試みです。その中で、このたび、グーグルの協力によって、貧困撲滅、健康、教育などSDGs分野のさまざまなデータに、活動家や政策立案者をはじめ、関心のある人たち誰もがアクセスしやすく、使いやすいツールを作成することができました。

これを受けて、グーグルのマニイカ氏が、同社が本プロジェクトに参加する意義と役割について述べた。

――グーグルは、世界中のデータ資源を利用可能にし、社会の課題に取り組む人々や組織に役立てることを目指しています。国連は多くの情報をさまざまな分野で収集していますが、特にSDGsに関しては非常に信頼性の高いデータが集まっています。このデータを活用可能にするため、国連と共にデータコモンズを立ち上げたことを非常に喜ばしく思います。SDGsの進捗に遅れがある中で、まだまだ多くのやるべきことが残されている現状がありますが、テクノロジー使って支援ができることにとてもワクワクしています。

「UN Data Commons for the SDGs」のウェブサイトでは、SDGsの個々の目標の進捗に関する統計データがまとまっており、国・地域別、17目標別のカテゴライズから目的の項目をみることができる。自然言語による検索機能も備えている。

「UN Data Commons for the SDGs」ウェブサイトのトップページ画面。現在は英語対応のみ。世界地図上に表示される「Explore SDG Data by Countries or Areas」の検索窓では、プルダウンで国や地域を選択可能。
トップページからスクロールすると、17目標別にカテゴライズされたページへのリンクボタンが表示される。その下の「Explore UN Data Commons for the SDGs」とある検索窓を使って、自然言語を用いた質問形式で検索ができる。
トップページ下方の「Explore UN Data Commons for the SDGs」と表記されている検索窓に、英語で「日本における女性管理職の割合を教えて」と入力し、検索すると、上記のようにデータがグラフで表示された。

政府、活動家、研究者など多くのステークホルダーの意思決定をサポートするツール

データコモンズのコモンズには“共有資源”という意味がある。モデレーターのブラウン氏はこのことに触れながら「コモンズというネーミングからも分かるように、このイニシアチブが何を意味し、なぜ幅広いデータへのアクセスが重要なのか」をスパトリサーノ氏に尋ねた。

――私たちは、一部の政府関係者だけが知識にアクセスできることを望んでいません。国連は世界の多様なステークホルダーからの意見や見解を受け入れるオープンな組織です。ですので、誰もがこのデータを使用できるようにすることが重要です。

自然な言語で質問できるこのシステムは、視覚化やトレンドの分析が可能な強力なツールとなります。そして、このデータが次の行動への後押しとなることが重要です。行動の原動力となり、SDGs達成に向けて加速することを願っています。

グーグルの技術で異なるソース間のデータ相互運用と自然言語インターフェースを実現

グーグルによるシステム構築については、具体的に2つのポイントにフォーカスしたとマニイカ氏は説明した。

――一つめとして、すべてのデータを標準化し、異なるウエアハウスやサイロに点在するデータリソースの相互運用・アクセスを可能にする仕組みとスキームの開発に取り組みました。このために国連チームと共同で行った作業は莫大なものでした。

二つめとして、AIを活用し、自然言語によるインターフェースを導入することで、通常の言葉で質問し、必要な回答を得られるようにしました。データにアクセスするためにデータサイエンスやコーディングといった専門的なスキルは、もはや必要ありません。SDGs進展の加速に向けて取り組む組織や政府にとって、現在の位置を把握し、意思決定するための強力なツールとなっています。

これは最初の一歩ですが、非常に重要な一歩だと考えています。

(写真:UN Photo)

まずは英語対応のみとなっているが、今後は他の言語にも広げていく予定だとマニイカ氏は語っていた。

「UN Data Commons for the SDGs」へは下記からアクセスできる。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock/NicoElNino
編集:タテグミ

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