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フレンチトーストにオレンジピール(11)

病院から解放されたタケルとナオは、家に戻ると朝の約束通り作り置きの惣菜を食べ、風呂に入り、お互いの寝室で眠った。
「私たちってやっぱり間違ってるのかな?」
 ナオの放った言葉をタケルは、違うと否定した。
 しかし、内心では悩んでいた。
 俺たちは、ずっと努力してきた。 
 それこそ普通と変わらない人生を送る為に。
 運命に嘲笑されないよう、したい仕事に就いた。
 タケルなどは個人で行う仕事だから異性にも同性にもそこまで振り回されないが、ナオは、同性の刺激があまりに強い仕事だ。自分が進めたのも確かにあるかもしれない。しかし、今日まで歩んでこれたのは彼女の持って生まれた強さと努力だ。
 性欲に関しては逆に縛らずに自由にすることにした。
 心を満たす最愛の相手がいるのだ。ただの処理と割り切り、それだけの関係になるよう努めた。そうすることで今まで悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなり、前を向くことが出来た。最初は、そう言う商売の人たちに金を払ってお願いしていたが、欲が出てしまい、誘いあって見つけたりもした。それでも自分たちなら上手くやれると思っていた。
 しかし、やはり人間に絶対はない。
 人と付き合えば欲だけでなく、感情も付いてくる。
 生きたいように生きるには、運命に抗うには代償が必要なのだ。
 タケルは、英国紳士を思い出す。
 もう、彼に会うことはないだろう。
 メッセージもいつの間にか拒否されていた。
 彼には酷いことをした。
 彼の純情な思いを泥に捨てた。
 彼の悲壮な顔が脳裏に焼き付く。
 彼には俺たちの考えなど理解出来ないだろう。
 俺たちは、誰にも理解されないのだろうか?
 思考に耽ると必ずはまってしまう論理。
 誰にも理解されない俺たちは間違っているのか?悪なのか?
 タケルは、答えの出ない迷路に迷い込んでしまった。

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