織部
看取り人をまとめました! 随時更新しています!
半竜の心臓をこちらにまとめていきます! あらすじ 白竜の王と人間の女性との間に生まれた少女。棲家としている雪山で父竜と平穏に暮らしていたが、突如、現れた暗黒竜の群れに父竜を殺され、少女は手足の自由を奪われて虐げられていた。絶望の日々の中、神鳴と共に勇者一行が現れて・・。 数奇な運命を歩む半竜の少女の話し
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜をまとめました!
あらすじ 宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。 後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。 そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。 「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」 これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し。 本編 19,991 19,992 宗介は、白い天井の節
「翌日も翌々日もたくさんの人達がにゃんにゃん亭茶々丸の高座を見に公園を訪れましたにゃ」 茶々丸は、その時のことを思い出したように鼻を舐める。 「戸惑う男は当初はあの時だけだと断りましたが、その途端にブーイングの嵐。また落語を聞かせろ、可愛い茶々丸に合わせろ!茶々丸最高!と言う声が響き渡ります。仕方なく男は茶々丸と一緒に落語をしますにゃ。この時だけ、この時だけ、そう思い落語をしますがその度に観客は増えていきますにゃ」 それでもその時はすぐに収まるだろうと安直に考えていた。
「それから男は毎日、公園にやってきては茶々丸の前で落語を披露しましたにゃ」 師匠は、その時のことを思い出す。 酒に溺れた頭を覚ましてから簡単に着替え、コンビニで朝食と猫用の缶詰を買って公園に向かう。 茶々丸は、師匠がやって来るのをどこからか見ているようですぐに駆け寄ってくる。そして二人で朝食を済ますとそこから落語が始まる。 猫の皿。 猫の災難。 猫忠。 猫怪談。 猫の題材の落語が尽きたら古典落語から創作落語まで様々な落語を茶々丸の前で披露した。 茶々丸は、翡
「男は、飛び降りるのをやめましたにゃ。理由は自分でも分かっておりません。猫を見たことで興が覚めたのか?それとも猫の愛らしさにやられたのか?」 自分で言うか? まあ、さっきからずっとアピールしてるか、と師匠は苦笑する。 でも、確かにそうだ。 俺が自殺を止めたのは茶々丸と出会ったからだ。 あいつを見た瞬間、背中を押してた何かがすうっと消えたのだ。 「気がついたら男と猫はフェンスの内側に戻り、公園のベンチに腰掛けておりましたにゃ。男は自分から着かず離れない猫を横目にし、猫
note仲間のさくらゆき様が諸作"看取り人"のキャラクター、にゃんにゃん亭茶々丸を描いてくれました❗️ このクオリティ❗️ 涙ものです❗️ さくらゆき様ありがとうございます😊 にゃんにゃん亭茶々丸の出てる話しはこちらからになります❗️ よろしかったらさくらゆき様の絵を見ながら是非お読みください❗️ #感謝 #さくらゆき #看取り人
茶々丸は、息を吐くように口を開ける。 師匠は、黄色く濁った目から涙が掠れるように流れていた。 「それからしばらくたったある日のこと。男は家の近くの公園に足を運びましたにゃ。高速道路が近くにあり、野鳥が見えることで地元でも有名な公園ですにゃ。娘が幼い頃、家族でよく遊びに来た公園。設置された遊具で遊び、囲いに覆われた池に集まる野鳥を見て興奮し、妻の手作りのお弁当に喜ぶ娘の姿が蘇る。そしてそんな娘を嬉しそうに、夫を愛おしそうに見る妻の姿が蘇りますにゃ」 茶々丸は、翡翠の目を細
「娘は、高校を卒業すると同時に男の一門に入りました。所謂、弟子入りでございますにゃ。娘としては中学校卒業して直ぐにでも入りたかったのでございますが両親に反対されましたにゃ。父親は自分が味わうことのできなかった学生生活を、母親は娘の将来的なことを心配しての願いでしたにゃ。出遅れてしまうことを心配した娘ではございますが、そこは鬼才天才の子であり、幼少期より誰よりも間近でプロの世界に触れてきただけはあり、同時期に入った弟子たちよりも肉球五歩分は先に行っておりましたにゃ」 それって
「真打になってからの男の活躍はまさに飛ぶ鳥を落として猫が食べにくる勢いでございましたにゃ。高座に出れば拍手喝采。肉球がポフポフ鳴り響く。古典を話せば破裂するように笑いが起き、怪談噺をすれば温度が下がって冬眠するように震えがおき、人情噺に涙する。冒頭で鬼才天才と言う話しをしましたが、男はまさにピタリとハマりましたにゃ」 言い過ぎだ、と師匠は思わなかった。 確かにあの頃の俺は鬼才天才の名を欲しいままにしていた。欲しいままに詰め込みすぎてポケットが破れちまった。 「しかし、天才
師匠の目が大きく開く。 (看取り落語?) 古典でも?創作でもなく⁉︎ しかし、そんな師匠の疑問を置いて二人の噺は始まる。 「皆様、お気づきかどうかは分かりませんが……私……」 看取り人は、いや看取り人の声を借りた茶々丸は言葉を溜める。 「猫でございます!」 淡々とした声でドヤる看取り人、もとい茶々丸に師匠は唖然とする。 「猫と言いますとニャれお気楽、ニャれのんびりして羨ましい、ニャれいつも寝てるなんて言われておりますが、こう見えて野良猫だったら餌探しに奮闘し、飼い猫
師匠は、節目の多い白い天井をぼんやりと見つめていた。 痛みはない。 苦しくもない。 力も入らない。 耳障りだと思っていた鼻に繋がれたチューブから酸素を送る機械の低く唸るような音ももう気にならない。 ただ、もの凄く眠かった。 頭の奥の奥を温めるように心地よい眠気が優しく撫でてきて何度も意識を失いそうになる。 しかし、寝てしまったらもう二度と起きることはないのだろうと漠然と感じた。 師匠は、視線を枕元に向ける。 女性が立っていた。 五十過ぎくらいの、栗毛に白
饅頭怖い。 火焔太鼓。 子は鎹。 粗忽の釘。 目黒のさんま。 古典落語の名作として知られる落語。 落語が好きでなくても何かの例えや表現で用いられたり、モチーフにした創作であったり等でどこかしらで聞いたことのある噺。 看取り人は、先輩からの助言に従い、茶々丸を動かすのを最小限に留め、スマホを横目にしながら丁寧に噺を読んだ。最初に披露した時に比べれば流暢になった。なったと思っていた。 しかし……。 「店長、消毒液とバンドエイドを」 先輩が申し訳なさそうに言う
看取り人と先輩の前にクリーム色のふっくらと焼き上がったフレンチトーストが運ばれる。 フレンチトースト用に店長が一から焼き上げた食パンに厳選した卵、牛乳、蜂蜜のみで焼き上げた店自慢の一品。クリームやメープルシロップと言った添え物はなく、ただ存在感のある分厚いフレンチトーストはそれだけで見る物を圧倒し、舌に味を想像させる。 看取り人は、じっとフレンチトーストを睨むと用意されたナイフを使って丁寧に切り、フォークで口に運ぶ。 先輩は、切長の目で彼が咀嚼する様子をじっと見る。
看取り人と所長以外の観客たちが外に出たのを確認すると鉄芯が入ったように伸びていた黒子の背筋が崩れるように折れる。膝の上に乗っていた茶々丸は飛び降り、後ろで控えていた看護師が慌てて身体を支える。 「ありがとう」 黒子が発したその声は多目的ホールの隅々まで張り上げいたとは思えないほど弱々しかった。 茶々丸が足元に両足を付いて座り、翡翠のような丸い目で黒子を見上げる。 「悪かったな。心配かけて」 黒子は、茶々丸の頭を優しく撫でる。 茶々丸は、嬉しそうに目を細めて喉を鳴らす
それは一週間前、一人の高齢者の看取りを終えた翌日、報酬であるシウマイ弁当と交通費を受け取りにホスピスを訪れた時のことだった。 「また、看取りをお願いしてもいい?」 所長の言葉に看取り人は長命寺の桜餅を食べる手を止める。 旅行と和菓子が大好きな英国と日本のハーフの所長は出かける度に看取り人が好きだろうと和菓子を買ってきてくれる。特に和菓子好きと公言したことはないのだが看取りを終える、報酬をもらう、和菓子を食べるが一つのルーティンと化していた。そして唐突に看取りの依頼が入る
織部です。 看取り人がエプリスタの執筆応援キャンペーン"涙"で佳作をいただきました❗️ これは・・・夢⁉️ 看取り人に何が起きてるのだろう?
「チャチャチャンチャンチャンッチャチャン」 看取り人は、日曜日の夕方に流れてくる曲を抑揚なく口ずさむ。 それと一緒に彼の膝に乗せられた茶トラ猫が不機嫌に頭を下げさせられる。 先輩は、ほうっと驚いたように切長の右目で看取り人と茶トラ猫のやり取りを見る。 「にゃんにゃん亭茶々丸でございます」 看取り人の文章を棒読みするような名乗りに店長とお客さん達が反応する。 看取り人に握られた茶トラ猫の前足が右へ左と動かさせる。 茶トラ猫の顔が不機嫌に歪む。 「ようやく暦的に