ゴールキーパーの息子の話

高校一年の息子はサッカー部で、ポジションはゴールキーパー。

もともと未熟児で産まれて、それでも元気に大きくなってくれた息子には感謝しかなく、彼が選手として優秀かどうかは、父親としてはあまり興味がない。

が、しかし。

ママはそのへん大変厳しく、キーパーとしての基本ができてないとか、原則的にはこうすべきだったとか、なんやかんやと注文をつける。

息子には息子なりの考えがあるから、時々ケンカまでしてる。
平和である。
でも、うっかり平和だなぁ、などと呟くととばっちりがくるので黙っている。

さて。

今日などは試合の模様をビデオにおさめ、家族みんなで眺めた。
今日は格上の対戦相手だったのでキーパーの出番が多くて大変面白かったのだが、息子のプレーは確かに、素人目にみてもたまにハラハラさせられた。
正式名称はわからないけど、飛び出しが多い。
キーパーが飛び出すとゴールには誰もいなくなるので、ものすごくリスキーだ。
それを、まぁまぁの頻度でやる。
うまくいくときもあるし、失点するときもある。
これについてママからめちゃくちゃ批判されるが、「いやいや、その時、キーパーにしかわからない判断があるんだよ」と息子は言うのだった。

素晴らしいと思った。
よくそこを理解した。
俺が高1の時にそう言い切れたろうか。

「キーパーが全て止めれば絶対に負けない」なんてことをよく言われる。
最後の砦として、目まぐるしく変わる戦況の中で、少なからぬ重圧の中、彼は飛び出す。

一対一を作られてから対応し、失点したとしたら、それ程責められはしないと思う。でも、一対一の場面を作らせないように、サッカー選手としては足が遅い事を自覚している彼なりの、直感と勇気でもって、飛び出す。

当事者にしかわからないことがある。

そして、殆ど瞬間的に判断を迫られて、勇気をもって突っ込むことに、俺は価値があると思う。
経験を積めば、もっとスマートで老獪な対応ができるかもしれない。他の選手への指示や普段からのコミュニケーションなど、無数の選択肢や、タラレバがある。
常に向上心を持って、自己研鑽。
大事さもちろん。
そして大人になると、「どう評価されるか」みたいな問題も出てくる。
頑張ってるフリして逃げてる大人はたくさんいるし、それも時々(かなりの割合で?)必要だ。
実際、役割として必要な場面があるんだ。

でも、飛び出せない人はいると思う。
飛び出すべき時に飛び出せない人はいる。
それは正しいとか間違ってるとかでも、善悪でもレベルの問題でもなく、殆ど個性だと思う。

俺は。

飛び出す息子が好きだ。
そして、批判されてもそれを曲げない息子が好きだし、全面的に支持する。
そんで、そんな彼は、他者が勇気を持って飛び出した時、安易に批判しないだろう。
当事者にしか見えない世界があると理解しているから。

テクニックはまぁ、後からでいいよ。多少損したり誤解されてもいいと思うよ。

好みはあれど、いい男になってきたなぁと思う。

俺は嬉しい。

そんなわけで。

こういった暑苦しい父親の気持ちを詰め込んだ「高校生」という歌を、アレンジャーの金戸俊吾さんに、爽やかに、カッコよくしてもらってます。

完成したら是非聴いて欲しい!
お楽しみに!