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「日本一勤勉なチーム」はいかにして作られているのか ~ レバンガ北海道 小野寺龍太郎 interview vol.2 ~

「日本一勤勉なチームを作る」その言葉を聞いた時、いかにしてそのチームを作るのか。その方法論が気になった。今回はその疑問を紐解くべく、小野寺龍太郎HCに話を伺っていく(インタビュー : 2月25日 インタビュー・文・写真 宮本將廣)

0対0でもいいからディフェンスマインドで入ってもらいたい

宮本 少しバスケットボールのお話も伺っていきたいと思います。佐賀戦を含めた残り21試合のキーポイントとして、僕は寺園選手を挙げたいと思っています。僕の視点では、彼は開幕の頃よりも心地よくプレーができているように見えています。正直、ディフェンスやサイズという部分ではマイナスがありますが、スコアラーとしてはスペシャルです。だからこそベンチから出てくることは相手にとっても厄介であると同時に、彼をベンチスタートにすることができたのは島谷選手の成長ありきだとも思うのですが。
小野寺 そうですね。今の形が明確になったのは、菊地が加入したタイミングになります。あとはドワイトのディフェンスが良くなってきたことで、寺園を後からという考えが現実化していきました。シーズンの序盤はチームとして得点することに苦しんだ時期があったので、寺園をスタートで使っていましたが、関野や松下というディフェンスで評価の高い選手がオフェンスでも貢献度が高くなってきたり、ドワイトのディフェンスでの成長、そして菊地の加入という順番でそこに至りましたね。あとは島谷が安定してスタートを任せられるプレーヤーになってきたことも大きいです。僕は寺園を高く評価しています。特にオフェンスの部分で他の選手が持っていない武器を持っている選手ですよね。一方で、ゲームスタートの3分間は失点を抑えていくことを大切にしています。ゲームの入りでビハインドを作られないように、一時期は桜井をスタートにしていた時期もありました。島谷、関野、ドワイトや桜井に外国籍選手2人の5人でしっかりとディフェンスのトーンセットをしてほしい。最初の3分間は極端に言えば、0対0でもいいからディフェンスマインドで入ってもらいたいと思っています。そういうゲームプランを掲げていながら、序盤はそれを遂行できないゲームが多くあったので、最初にディフェンスマインドの高い選手を出すようになりました。あとは寺園に責任のない状態というと嘘になりますけど、彼にはある程度余裕を持たせてプレーをさせたいと思っています。総合的に考えた結果、ベンチスタートという位置が彼にとっても、チームとしても一番いい状態なのかなと思っています。

我慢強くやり続けた選手たちの真面目さが今シーズンの強み

宮本 もうひとつが開幕節の秋田戦でお話を伺った時に、「もうちょっとエントリーをスムーズにしていきたい」と話されていました。バイウィーク前の数試合を見ると、そのあたりがスムーズになってきている印象がありますし、先ほど小野寺HCも仰ったように、関野選手や松下選手のようなディフェンスを担う選手たちのオープンショットの確率が上がってきています。
小野寺 先ほどの再現性の話でもしましたが、アドバンテージを作る中で結果的にシュートが落ちることはあります。僕はこの39試合を14-14-11の3つに分けているのですが、最初の14試合はスリーポイントのパーセンテージが低すぎました。そこは勝率にも大きく影響したひとつの要因だと思うという話を、14試合が終わったタイミングで選手たちにも話しました。ただ確率が低くても打つことをやめるということではない。もっと言えば、対戦相手によってスポットのスリーポイントが作りにくいチームもあります。そういったことも整理して、選手たちに伝えています。相手のディフェンスの構造はこうだから、自分たちはこの試合でスリーポイントをこれぐらいの割合で打つ。自分たちのポゼッションを考えると何本ぐらい打つことになるという話をゲーム前にしています。それらを含めて、どこにアドバンテージが生まれるかも合わせて説明をします。完璧ではないですが、その辺りを選手たちが理解しながらプレーをできているので、関野や松下、菊地もスポットのスリーポイントが非常によくなってきていますし、綿貫も貢献度高くプレーしてくれています。寺園もプルアップのスリーポイントを打ち切ってくれますし、ダラルのポップアウトからのスリーポイントも序盤は決まっていませんでしたが、今は自分たちの武器になってきています。そういったステップアップがそれぞれできていると感じています。
宮本 スカウティングベースでディフェンス構造の理解力が上がってきたからこそ、アドバンテージが作りだせることがわかってきた。そこがショットパーセンテージと連動して上がってきたということですね。
小野寺 そうですね。だからこそ決め切れるようになってきた。そこは非常に大きな部分だと思っています。トランジションもそうで、まずはディフェンスとリバウンドのルールをしっかりと遂行する。そして、ディフェンスリバウンドをしっかりと取り切る。リバウンドにおいてトムの貢献度は大きいですが、ここに関してはトムがいるとかいないとかはまったく関係ありません。自分たちがどういうディフェンスリバウンドのルールでプレーをするのか。ペイントのビッグマンがどういうボックスアウトをするのか。それ以外の選手たちが、どこにポジショニングを取るのかもチームのルールとして設定しています。そこからトランジションオフェンスのルールを遂行する。誰がどこを走るのか。リバウンドを取っていないビッグマンはどこを走るのか。リバウンドを取ったビッグマンはアウトレットを出したらどこを走るのか。細分化されたルールの中で全員がプレーしていて、それが崩れない。選手たちがやり続けてくれていることが大きいですね。制限をされているので選手たちは不自由さを感じていたと思います。ただ39試合を戦って、それが成果として現れてきました。我慢強くやり続けた選手たちの真面目さが今シーズンのレバンガ北海道の強みと言えます。
宮本 ありがとうございます。正直、僕はバイウィーク明けからレバンガ北海道が勝てるイメージが湧いているんです。そのために一番重要な試合が、バイウィーク明けの初戦である佐賀戦だと考えています。
小野寺 おっしゃる通りだと思います。
宮本 個人的に今シーズンの佐賀と北海道は対局なチームであると感じています。それこそ佐賀の宮永HCとは、数シーズン前のレバンガ北海道でヘッドコーチとアシスタントコーチの間柄でもあったので、対戦を楽しみにされている方も多いと思います。このゲームのどこでどっちが先にゲームの流れを掴むのか。これはたったひとつの局面ですが、両チームの21試合においてかなり大切だと考えています。今、お話いただいたような小野寺HCの原則に沿ったルールやロジカルなバスケットボールに対して、佐賀の宮永HCはゲームの中の嗅覚を持っているコーチだと思っています。
小野寺 そうですね。正直、嗅覚とか感覚というのは僕には一切ないものです。おっしゃる通り、そういうものを宮永さんは持たれていると思うので、単純にすごいと感じています。佐賀のスカウティングをしていると、チームのルールの中でその時に応じて選手たちがコートの中で判断していることが多くあると感じています。佐賀が勝利した試合を集めると、対戦相手は佐賀のオフェンスに対しても、ディフェンスに対してもゲームのどこかでコンフューズ(混乱)が起こっている。だからこそ、僕たちがやることは佐賀さんがやるべきことを限定させる。ある程度こう動けば、佐賀はこう動いてくるだろうという想定の中で、そういう状況を自分たちで作っていく。あえて佐賀をそうさせると言った方がわかりやすいかもしれません。佐賀さんに関してはアジャストすることが多いと感じているので、だからこそ自分たちはより明確化して、それをシンプルに遂行する。宮永さんが率いる佐賀さんと対戦するのはすごく楽しみですね。

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