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悩めるシューターのキャリアをかけた戦い ~ レバンガ北海道 中野司 interview ~

考えなくていいのに、考えてしまう。トップアスリートでありながらも、弱い自分を隠すことなくさらけだした彼は、むしろ強い人間なのだと感じた。中野司、27歳。うまくいかない自分と向き合って覚悟を決めた。残りの21試合にすべてを賭ける彼に声援という追い風を。(取材日 : 2月22日 インタビュー・写真 宮本將廣)

変に考えすぎちゃっている部分は正直めちゃくちゃある

宮本 今シーズンも3分の2が終わりましたけど、率直にどうですか?
中野 なかなかうまくいかないなっていうのが正直なところですね。もちろん、うまくいくシーズンもあれば、うまくいかないシーズンもあるんですけど、今シーズンはなかなか調子が上向きにならないというか……。
宮本 個人的にこれまでの中野司を振り返ると、ハンドラーとしてのスキルを上げていた時もあれば、シンプルなキャッチアンドシュートを求められたり。結論はシュートを決めてくださいということなんだけど、そこに至るまでの積み上げが結構違いがあって。そうやってスキルアップしてきたことで、逆に見えることが増えて少しぼやけているのかなっていう印象を持っていました。
中野 そうですね……。自分のタイミングでシュートを打てるのに躊躇してしまったりとか、次の展開に持って行かないといけないとか……。変に考えすぎちゃっているんですよね。折茂さんにも、「自分が考えるポジションじゃないんだから、お前は考えなくていい」ってよく言われているんですけど、なんかそこがうまく整理できていない感じです。
宮本 特に年明けのゲームから、ボールを持った瞬間がちょっとだけ長いというか。間がある印象があって、迷っているのかな……とは感じていました。
中野 「打てるタイミングで打て」とは、小野寺さんからも言われているんですけど、そもそもうまくいかないとすごく考え込んでしまう性格なので……。めちゃくちゃ考えてしまうんですよね。どこかで気持ちの整理をつけないといけないと思いながら、39試合が終わってしまって……。このバイウィークはシュートタッチを戻すことも大事ですけど、それ以上に自分の気持ちを前向きに持っていくことがすごく大事だなって思っています。なんか……根本的に気持ちの部分だよなって。

まずは絶対にロスターに入れるようにしないといけない。

宮本 昨シーズンの同じ時期のバイウィーク後は、かなりいいゲームができていたよね?
中野 そうですね。
宮本 昨シーズンと今シーズンでは、気持ち的に何が違うの?
中野 昨シーズンの場合は、変わるきっかけがあったというか。このぐらいの時期にヘッドコーチが変わって、自分自身のいいところをすごく活かしてもらいました。それはめちゃくちゃありがたかったんですけど、今シーズンは環境的な部分での変化がない。今思えば、それも甘えだったなって思ったりしますけど、本当に自分自身が変わっていくしかないと思っています。でも、そんなすぐに「明日から変わります!」とはならないじゃないですか。
宮本 確かにね(笑)。
中野 はい(笑)。だから劇的には変わらなくても、少しずつ右肩上がりに持っていけるように、今するべきことに取り組んでいるっていう感じですね。
宮本 中野選手だけにフォーカスすると、11月5日のFE名古屋戦はすごく印象的でした。ああいうゲームも自分もやりたいだろうし、もちろんファンも見たい。あの試合のマインドが、この悩みを抜けるヒントになるのかなって思ったりしたんだけど。
中野 うーん……そうですね。あの時のチームの編成と今のチームの編成って、外から見ると全然変わってないと思うんですけど、起用方法が全然違うんですよね。
宮本 確かに。
中野 あの試合は自分のシュートも入っていたので、必然的にプレータイムが伸びましたけど、次はどうなのって話だと思うんです。今のレバンガの起用方法は、当時よりも「まずはディフェンス」というメンバーでスタートしていて、そこに菊地も入ってきて競争が激しくなりました。僕の課題はディフェンスだとわかっています。関野さん、松下、菊地もボールマンに激しくマッチアップすることができる。島谷もそうで、そこが重要視されているのは理解しています。自分はその最低ラインに達していないことは事実だと思うし、練習の中で、「俺もできる」とアピールして、まずは絶対にロスターに入れるようにしないといけない。だからこそ、ディフェンスができることを証明して、プラスアルファで何ができるか。そうなるとやっぱりシュートだと思うので、そこを練習で証明していきたいと思っています。
宮本 それはまさにだと思っていて、今シーズンの39試合を見ると、レバンガ北海道のディフェンスクオリティは間違いなく上がっている。そこからゲームを作っていって、ベンチには得点力のある寺園選手が控えている。その形がある程度できたとも言えるよね。ただ、それで上位チームにもいい試合ができているけど、ある意味勝ちきれていないというのも事実で、「じゃあ、何が必要なの?」って考えるとコーナースリーとか、キャッチアンドシュートがもうちょっと欲しいのかなって。だからこそ、中野司の力は絶対に必要だと思うし、それを決め切れるか。あとは話してくれたようにディフェンスのクオリティっていうところが大切なんだろうなって感じています。
中野 そうですよね。最低限のディフェンスができないと、試合に出ることはできない。菊地が入ってきてオフェンスは似たようなタイプだけど、ディフェンスのトーンセットもできる。本当にチーム内での競争が激しくなったので、残りの21試合でポジションを奪うために、この時期はすごく大事だなって思っています。

だから絶対に諦めないです!

宮本 ディフェンスとシュートがここからの21試合ですごく大切になる。それは間違いないけど、なにか他に考えていることはあったりするの?
中野 1個だけ決めたことがあって、絶対に腐らない。それは年明けぐらいにめっちゃ思いました。正直、自分は心がめちゃくちゃ弱いので、すごく病んでたんですよ。「なんで試合に出してくれないんだ。絶対にできるのに」って思っていたんですけど、そう思いながらもパフォーマンスが出せてないこともちゃんとわかっていた。それってそう思わないと自分がダメになっちゃうっていう、ある意味の自己防衛だったと思うんです。腐るのってすぐじゃないですか。
宮本 うん、そうだね。
中野 やらないのはめちゃくちゃ簡単だから、それだけは絶対にダメだなって思ったんです。今、こうやってバスケットボール選手をやらせてもらっていて、辞めるのはいつでも辞められる。でも、それこそボロボロになってもチームで一番ハードワークしている良太さんが目の前にいるのに、これぐらいで腐っちゃって、諦めちゃったら絶対に後悔するなって思ったんです。そうやってキャリアを終わりたくはない。正直、群馬との試合が終わった時のアウェイ5連戦は、遠征メンバーから漏れると思っていました。だからこそちょっとそこで切り替えようと思って、がむしゃらに全部を出し切って、バイウィークで絶対にポジションを奪い返すっていう気持ちでやろうって。絶対に生き残るっていう、そのぐらいの気持ちを持たないと、這い上がれないと思うので。
宮本 うんうん、気持ちの部分から変えていこうっていう。
中野 そうですね。そのぐらいの気持ちを持たないと、絶対に自分は腐っちゃう。しんどい練習とかもたくさんあるけど、絶対に腐らないってことだけは決めたので、そこだけは安心して欲しいっていうか……。うん、だから絶対に諦めないです!
宮本 ハハハ。よかったです。でも、そういう年齢だと思うんだよね。個人的に96年世代は関係の深い選手が多いんだけど、キャプテンをやっている選手もいれば、それこそロスター外で悩んでいる選手もいる。中野選手みたいに期待をされているんだけど、その期待と現実のギャップに悩む選手もいる。でも、27歳ってそういうものにぶち当たる年齢でもあるというか。バスケットボール選手としても、自分はうまくいかない。でもチームとしては引っ張ってほしい。周りからの期待とか要求はどんどん増えていく。でも、ある意味それってそういう年齢だから(笑)。悩んでいる、でも絶対に諦めないっていう気持ちが聞けてよかったです。
中野 そうですね。そこは今日話したことの中で、一番伝えたかったことかもしれないです。
中野・宮本 ハハハハハ。
中野 絶対に後悔はしたくない。これでシーズンを終えて、チームから放出されるのであれば、それは仕方ないと思うし、むしろここから結果を残せないのであれば、自分としてもこのチームを出るべきだと思います。それがプロの世界だと思うので。でも、チャレンジをしないで諦めることだけは絶対にやめようって。だから、もう大丈夫です!

レバンガ北海道、シーズンラストも目が離せない!

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