見出し画像

田口成浩選手のご家族にインタビュー(前編)

ダブドリvol.16より、俳優の渡辺早織さんが選手のルーツに迫るコラム「あの日のあのね、」の連載がスタートしました。初回となる今号では秋田ノーザンハピネッツ田口成浩選手のご実家にお邪魔し、父直通さん、母敏子さん、姉啓子さんから幼き日の成浩少年がスター選手になっていく過程についてお話を聞いています。
 前編は田口選手の根っからのポジティブ思考がわかる学生時代までのお話です。成浩少年はポジティブ名言製造機だった?

渡辺 成浩さんが小さかった頃の、将来の夢は覚えていらっしゃいますか?
敏子 保育園の頃は仮面ライダーになりたいとか、なんとかレンジャーになりたいと言ってました。
渡辺 かわいいですね(笑)。正義感が強いお子さんだったんですか?
敏子 小学校低学年の時に捨て猫を段ボールごと拾ってきたことはありました。それから猫を飼うようになりました。
渡辺 やっぱり正義感もあって心優しい少年だったんですね。
敏子 家では全然そんな感じはなかったんですけど、通信簿に書かれてたりとかはしました。通信簿をまだ取ってあるんですよ。
渡辺 いいんですか、成績まで見せていただいて(笑)。
敏子 体育は5です(笑)。
一同 ハハハハハ。
渡辺 (通信簿を見ながら)応援団長をやっていたんですね。やっぱりリーダーシップがあったんだ。
敏子 盛り上げ役ですよね。

渡辺 お二人の「こう育ってほしい」みたいな思いを受け継いだ部分があったんですか?
敏子 何もないですね。こうしてほしいとか、これになってほしいとか全然なかったです。
直通 あまり縛らないで、自由気ままにいこうという感じだったので。
渡辺 一流のプロ選手の家庭環境って、ご両親が昔から厳しくてやらせるイメージが少しあったので意外です。
直通 私はむしろ野球をやらせていたぐらいだから(笑)。
敏子 成浩は一番下なので、上の子たちがよく面倒を見てくれました。
啓子 成浩が生まれたときに私が5歳で、姉が7歳、兄も10歳だったので、3人で取り合いしていましたね。
渡辺 それは嬉しいですよね。優しいお兄ちゃん、お姉ちゃんで。一緒にバスケして遊んであげたりもしましたか?
啓子 私たちの試合を観には来ていました。試合の流れを観て、途中でゲームボーイをしながら「今日は負けるな」とか言ってくるんです(笑)。
直通 結構勘はよかったですね(笑)。
渡辺 お姉さんから見て、小さい頃の成浩さんはどんな印象ですか?
啓子 自由人ですね。いろんなところに友達がいて、うちの両親が送り迎えできないときでも向こうの親御さんにお世話になったりして、気ままに遊んでいました。成浩の周りには友達が集まるという印象は持っています。
直通 男の子だけじゃなく女の子も、性別関係なくみんな集まってくるし、今でも当時の友達との付き合いが続いているんですよ。
啓子 生まれ持ったそういう人間性で人が集まってきて、大晦日とかはいつも実家が溜まり場になるんです。
渡辺 (リビングに)椅子が多いなとは思ったんですよね(笑)。
一同 ハハハハハ。
啓子 年末年始になると成浩が友達を5、6人連れてきて、初詣に行った帰りにみんなでここで飲んで、朝まで雑魚寝するんですよ。
渡辺 大人になっても変わらず?
啓子 変わらず。つい最近までここで雑魚寝してました(笑)。

渡辺 成浩さんは高校からバスケを始められたんですよね?
直通 中学まではずんぐりむっくりだったんですよ。それが中学3年生ぐらいのときに一気に上に伸びて、細く体型が変わっていったんです。
啓子 私は高校の頃寮に住んでいて、実家に帰るたびに成浩の身長が伸びている時期がありました。デブだった頃も可愛かったんですけどね(笑)。
直通 身長が伸びたので、元々好きだったバスケットをやりたいということで、啓子と同じ秋田市内の明桜高校(ノースアジア大学明桜高等学校)に入ったんです。
敏子 実は第一志望じゃなかったんですよ。その時に私たちは「どうしよ、どうしよ」って言ってたんですが、成浩が「今失敗したからって将来どうのこうのではなくて、これから入ったところで頑張ればいいじゃないの」って言ったのを覚えています。あまりにもポジティブですよね。
直通 前向きでしたね。あまり落ち込まないんですよね。
敏子 「やればできる。やらないだけだ」って言ってました(笑)。
啓子 たしかに言ってた(笑)! やった人が言えばいいのにね(笑)。
渡辺 うちは親がかなりの心配性で、何をするにもまず心配するんですよ。できることでも先回りしてやってくれちゃったり。それってこどもにとっては、信じてもらえてないという気持ちになるんです。それに比べて成浩さんの場合は、お二人が何も言わないことで「信じてもらえている」というパワーがあったのかなと思いました。成浩さんのポジティブなところは、お二人のどちらに似ているんですか?
直通 多分こっち(母)じゃない?
渡辺 ご自分でもポジティブ思考だと思われますか?
敏子 そうですね、ネガティブだと暗くなるばっかりなので。心配するのは気持ちだけにしています。
渡辺 素敵ですね。
直通 バスケットボールに関して言うと、高校受験に失敗しなければ今はなかったかもしれません。
渡辺 と、言いますと?
直通 受験に失敗して行った明桜高校に、いい選手がみんな集まってきたんですよ。磁石に吸い寄せられるみたいに。それまではいつも1回戦負けのチームだったんですけど、徐々に力をつけてきて、結局最後は県で優勝して東北大会まで行ったんです。成浩はバスケットに関してはチームで一番知らなかったと思いますけど、バスケットをやってきた周りの子たちからどんどん吸収していきました。
敏子 自分は素人同然だったから、結構刺激はあったんじゃないんですかね。

<撮影:三浦雄司>

(後編につづく)

📖ダブドリVol.16📖
本インタビューをもとに渡辺早織さんが執筆したコラム
「あの日のあのね、」が掲載されています。
↓各書店さんのほか、公式オンラインショップでもお求めいただけます↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?