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進んできた道は間違いじゃなかった ~ レバンガ北海道 菊地広人 interview ~

プロ選手になるために積み上げてきたことが、今まさにプロの舞台で花開いている。決してエリートではなかった彼が、北海道を飛び出して得てきたこと。進んできた道は間違いではなかったことを証明する菊地広人、22歳。今回は彼のマインドとキャリアのほんの一部に迫っていく。(取材日 : 2月22日 インタビュー・写真 宮本將廣)

「もしかしたらチャンスもらえるかもな」っていうぐらいだった

宮本 デビューから1ヶ月ぐらい経ちましたけど、どうですか?
菊地 今まで経験したことのない高いレベルでやらせてもらっているので、楽しいですね!
宮本 デビュー戦となった1月末の信州戦で、信頼を勝ち取る活躍をしたという印象ですけど、練習の時からいい感じだったんですか?
菊地 いや、練習での手応えは正直なかったです。チームに合流した時点ではケガをしており、信州戦の少し前から全体練習に参加できるようになったので、そもそも練習の参加回数がそんなに多くありませんでした。そこで自分のプレーを出し切ることができなかったんですけど、信州戦前の最後にライブ練習でスリーポイントが結構入ったので、「もしかしたらチャンスもらえるかもな」っていうぐらいでしたね。
宮本 試合前にヘッドコーチから、「明日行くよ」みたいなことも特になく?
菊地 試合で使うみたいなことは特に言われてなかったですけど、僕自身がチームのルールを全て把握しきれていなかったので、その確認も含めて自分から龍さん(小野寺龍太郎HC)に聞きには行きました。
宮本 レバンガ北海道はルールが細かいという印象を持っているんですけど、少し不安な部分があったりしたっていうことですか?
菊地 僕としては、そこまで細かく求められているわけではないと感じていますけど、チームのルールをしっかりと把握しておきたいのと、レバンガ北海道のバスケットスタイル的にもチームルールを理解しておかないと、バスケットが成立しなくなってしまいます。チームに合流して練習に参加する中で、そこはすごく感じたので最低限としてという感じでしたね。
宮本 ルールの質であったり、徹底度合いに関しては大学とは違いますか?
菊地 全然違いますね。ヘッドコーチの伝え方の違いもあると思いますが、大学はある程度のルールの中で選手が判断していました。レバンガ北海道に入ってからは、こういう場合はこうしましょうというものがしっかりとあって、それを高いレベルで遂行しようという感じなので、かなり違いを感じています。

シュートを決め切れば、身長差は関係ない

宮本 菊地選手が入ってきてから、ボールマンプレッシャーなどを含めた相手のボールエントリーに関するディフェンスの質がすごく上がったと感じています。島谷選手、松下選手、関野選手もボールマンに対するディフェンスに長けていますが、ラインナップに厚みが増したことで、最初の8秒で相手を楽にプレーさせないことに成功していることが増えた印象です。
菊地 自分の役割はディフェンスでどれだけハッスルして、プレッシャーをかけるかだと思っています。オフェンスに関しては、寺園さんがハンドラーとしてリードしてくれているので、シュートを打つことだけに集中させてもらえています。打てる時にしっかりと打ち切って決めることが僕のオフェンスの役割でもあり、強みでもあると思うので、自分のスタイルにマッチしたプレーができていると感じています。
宮本 Bリーグになると、マッチアップする相手がシンプルに大きくなりますよね? フィジカルも変わってくると思います。メインポジションは2番ですけど、場合によっては190センチの選手にマッチアップになる場面もあったと思います。サイズ差を埋めるために何か意識していることはありますか?
菊地 特に身長差は気にしていないですね(菊地選手は178cm)。身長があろうがなかろうが、外のプレーヤーであることは変わらないですし、むしろ大きい選手の方がプレッシャーリリースがあまりうまくなかったり、小さい選手に対して苦手意識を持っていることが多い印象があるので、身長差があることは逆にチャンスだと捉えています。オフェンスでもクイックネスとか運動量に関してはアドバンテージになることが多いので、そんなに身長差を気にしたことはないです。
宮本 最近は大学でも大きなウイングプレーヤーが活躍していますけど、大学時代からそういったマインドだったんですか?
菊地 そうですね。大学の時から2番で出ることが多かったので、自分よりも大きな選手につくことが多くありました。例えば、筑波の三谷選手(広島ドラゴンフライズ)とか、白鴎の脇選手(琉球ゴールデンキングス)とマッチアップすることがよくあったので、まずはフィジカルで押し込まれないように、当たり負けしない身体作りを意識していました。彼らに上回れるとしたら運動量だと思っていたので、そこで勝負するようにしていましたね。あとは外のシュートを磨きました。シュートを決め切ることができれば、身長差も関係なくなると思うので。
宮本 そういう意味では、もちろん地元という部分もあると思いますけど、機動力のあるタイプの選手が揃っている北海道というチームに加われたことは菊地選手としてもやりやすいチームという感じですか?
菊地 そうですね。もちろん地元の北海道だからというところは大きかったですが、スタイル的にも自分に合っていると思いました。サイズは関係なく運動量とハードワーク、そして全員でプレーするチームは自分の良さも活かせると思ったので、声をかけてもらった時は嬉しかったですね。

誰よりも練習してきたんだから大丈夫

宮本 少し前にお話を伺った時に、「北海道の高校に行ったら、プロになるのが難しい気がした」という話をしていましたよね。今はレバンガ北海道U18などもできて、当時とは環境が変化してきた部分があると思いますが、高校から静岡県(藤枝明誠高校)に進学するという選択はどういった考えがあったんですか?
菊地 一番大きかったのは、本州だといろんなチームと試合ができることです。バスで少し移動すれば各都道府県の強豪校と試合ができる環境があった。自分は北見市出身なんですけど、当時の北海道の環境では強豪校も限られていましたし、試合をするにしてもバスで3時間とか下手したらもっと時間が必要でした。プラスして道外の強豪校と試合をするチャンスは決して多くはないと聞きました。そういう意味でも本州の方が、試合を通してレベルアップできる環境があったことが僕にとって魅力でした。あと僕は小学校でバスケットを始めた時にプロ選手になりたいと思った時からプランを立てていて、中学校ではジュニアオールスターに選ばれること。高校を選ぶ時は、プロ選手になるために関東1部の大学に進学することが大事だと思って、進路を考えました。全てはプロ選手になるための逆算だったんですけど、総合的に考えると高校から本州でプレーした方がいいと思ったし、本州の方が関東1部の大学のコーチにも見てもらえる機会が多いのではないかと思いました。それが大きな理由ですね。
宮本 すごいですね。大学の時も反骨心という表現が正しいかわからないけど、簡単に言えばメンタルが整っている印象がありました。今も「強心臓」と呼ばれていますけど、自分が見据えたプランに向けて決断する力というのは、コートの中でも活きていることがありそうですね。
菊地 僕は世代別の日本代表に選ばれたこともないですし、全国大会で何か結果を残したわけでもありません。いわゆるエリートではなかったので、そう呼ばれている選手たちが、高校でも大学でも取り上げられている中で、彼らを超えるためにどうすればいいのかを考えてきました。その中で見つけた答えは、その選手たちと同じことをしていても意味がないということです。そもそも自分はその選手たちよりも能力が低いし、身長もない。持って生まれてきたもので優れたものはないことを受け入れて、練習の量と質で勝負するしかないという結論に至りました。だからチーム練習でも、どんな意図があるのかをしっかりと理解して、そこを突き詰めて練習をしてきましたし、自主練なども含めて誰よりも練習しようと思ってやってきました。その中でシュートが自分の強みかもしれないと思った時から、そこを磨くために誰よりも本数を打ってきたつもりです。試合の時は、「誰よりも練習してきたんだから大丈夫」というメンタルができていますし、もしも決めることができなかったら、また練習すればいいだけのことだと思っています。今までやってきたことは間違いなく自分の評価に繋がってきたからこそ、いまここでプレーできていると思うので、自分に自信を持って今シーズンを最後まで戦いたいと思います。

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