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『ダブドリ Vol.15』インタビュー06 ポール・ヘナレ(島根スサノオマジック)

2022年11月9日刊行の『ダブドリ Vol.15』(株式会社ダブドリ)より、ポール・ヘナレHC(島根スサノオマジック)とのインタビュー冒頭を無料で公開します。

就任1年目にして、超攻撃的バスケットボールを武器に島根スサノオマジックをチャンピオンシップセミファイナルに導いたポール・ヘナレHC。B.LEAGUEに旋風を巻き起こした「バズソー」のルーツやコーチ自身のコアとなる考え方について聞いた。(取材日:9月8日)

まずは選手としてだけではなく、一人の人間として、お互いを知るところから始めるんだ。

―― 就任1年目は素晴らしいシーズンだったと思いますが、どの程度ゴールを想定していたんですか。
ポール・ヘナレ(PH) 優勝する、プレーオフに出る、何勝するといったゴール設定はしていないんだ。「今のチームはどの程度まで来ていますか?」「今のチームは100%の何%ですか?」とよく質問されるんだけど、チームのポテンシャル、100%なんてわかるわけないし、どの程度か測ることはできないんだ。
―― 多くの新しいことを短期間で導入していったと思います。どういったアプローチを取られたんですか。
PH 島根での最初のゴールは、基盤を確立することだった。コート外で、まずはチームのメンバーがお互いを知るということ。すでにほとんどのメンバーが一緒にプレーしていたけど、私のチームでは、チームメンバーが、選手、コーチ、トレーナーとしてだけではなく、一人の人間として、お互いをより深く知るようにするんだ。そしてコートでは、新しいシステムなど、多くの学ぶべきことがある。なので、そういったやるべきことの基盤を、ステップを踏んで作っていくんだ。
―― 具体的にはどのように進めていくのですか。
PH まだ今シーズンはできていないけど、椅子を並べて全員で同じことについて話すんだ。例えば、人生、彼らのそれぞれのゴール、自分がどういう人間か、自分のモチベーションは何か。みんながその効果に納得してくれているかはわからないけど、私にとっては沢山のことを学ぶことができるんだ。例えば、私からは「このチームにいる理由は?」「なぜバスケットボール選手、コーチ、トレーナーをしているのか?」「何のためにその仕事をしているのか?」といった多くの「なぜ」を質問するんだ。すると、たくさんの違ったモチベーションがあって本当に面白い。そういうことを理解していくことで、例えば「彼はこういうことを達成したいんだな」ということを覚えておく。それを達成するためにどうコーチできるか、どういう役割を与えるか、チームとして達成したいことと、それをフィットさせていくんだ。
―― そういったコミュニケーションの方法はどこで培われたんでしょうか。
PH 私は非常に恵まれていて、ニュージーランドスポーツのコーチ育成プログラムの一員で、そこで学ぶのはバスケットボールではなくて、コミュニケーションやゴール設定といったコーチングなんだ。例えば丸1日かけて馬の訓練をするんだけど、囲いの中に入れたり、追いかけさせたりして、それを録画するんだ。これは本当に貴重な体験だったよ。だって馬って動物じゃない? でも彼らは緊張したり、敵意を感じたりするし、こっちに力がないことを察知すると好きに動いたりする。そんな中でこちらもバランスを見つけないといけない。このプログラムにはオールブラックスやあらゆるスポーツのオリンピックのコーチが多く参加しているんだ。
―― 香川ファイブアローズでも同様のアプローチを取られましたか。
PH かなり似ているね。ただ、香川にはシーズン途中から参加して、そこからチームを引き継いだので、それはチャレンジだった。ただ、そういった違いはあるけど、どのチームも違って当然だし、同じチームでも今年は去年と違うという意味では、どのチームも同じように対応するなんてことはできないしね。

大智にとっては大きなチャレンジだけど、トラビス相手に役割がこなせれば、自信が持てるはず。

―― 基盤という意味では、新加入の谷口選手、津山選手にも早い立ち上がりが期待されますね。
PH 彼らにとってはすべてが初めてだし、去年いた選手とは大きなギャップがある。それを出来るだけ早く埋めるのが我々コーチの仕事だね。
―― その場合、やるべきことを最初からすべて渡すんですか。それとも分けて細かく渡すのでしょうか。
PH 分けているね。シチュエーションごとにドリルも分解して渡していく。とにかく繰り返しやらせて、説明して、ビデオを見せて。
―― その積み重ねですね。
PH 二人とも学習スピードが本当に早いんだ。大智にとっては、まったく別のスタイルだし、新しい技術も多く、期待値も高いけど、彼はチームにとって貴重な存在になってくれると思ってるよ。練習中は必ず外国籍の3人と当たるしね。リーグでもトップレベルのリード・トラビスとのマッチアップは大きなチャレンジだけど、そこでトラビス相手に競って役割をしっかりこなせれば、リーグの誰が相手でも自信を持てるはずだ。
―― 他にはどこが二人のチャレンジになっていますか。
PH ディフェンスの細かいところだね。同じディフェンスのシナリオや技術だったとしても、チーム、コーチが変わると言葉、身体の位置、細かいところが違う。60試合を戦った選手と比べると、今までの知識を捨てるわけではないけど、すべてを一から学んでいかないといけないのだからチャレンジだね。
―― 昨年もシーズン中の変更や問題への対応などあったと思いますが、どういうところに苦労されましたか。
PH 日本に来て数年だけど、60試合のシーズンで土日水土日と試合が続く週もある。逆にFIBAの期間は4週間試合がなかったりする。このスケジュールで上手く進めなければいけないということ。そしてその期間、30~35分プレーする選手がいて、まったくプレーしない選手もいる中で、バランスを取ることがシーズン中の対応としてはあるね。それから他のチームも同じだけど、故障者が出た際の対応だね。特に外国籍選手はチームの主力だけに、残された外国籍選手の負担が大きく増えるし、スタイルを変える必要もある。日本人選手の場合はそこまで大きな変更はないけど、ここもシーズン中の大きなポイントだね。

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