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不快なものを「不快」と説明する人の自己矛盾

不快なものとして晒される対象には、2種類の方法で説明が与えられる。
①感情的方法と②論理的方法である。

※★が結論なのでそこだけ読めば内容がわかる。
※「つまりこういうことが言いたい」みたいなものは①と②には含まれない。

①では、不特定他者の経験的な感情論によって不快なものの説明がなされる。感情論とはすなわち個人的な論調だから、極めて自由性が高い。その自由性は個人を担保としているので、常に孤独に晒されている。個人が孤独であればあるほど個人的論調は高まるので、感情論者は常に孤独に悩まされる。そのため孤独な個人は集団への帰属意識の高まりを認知せざるをえなくなる。同じような感情を抱える個人を見つけ出して集団化を欲望するのだ。不快なものに対する自身の論調と全く同質の論調を持つ他者を見つけ出すための嗅覚を発達させる。のちに出来上がった不特定多数の集団は、多様さの源泉になり得る。無力な孤独者は有力な元孤独者集団になることで周囲に認知されるに至るので、その集団が持つ感情論が多様なもの自体として世間に流布する。多くの感情やその論調が多角的に広まることで多様化が進み、人間同士の相互作用に福音をもたらす。(これは不快だよね。あれも不快だよね。これは心地いいよね。という感情など。)しかし、多様化概念におんぶされている感情論は有力であるがゆえに、それ以外の感情論を持つ他者の尊厳を迫害しかねない作用も持ちうる。すなわち、感情的自由は多様化概念により大きな権威を獲得することによって、誰かの不自由を生み出すことに繋がっていく。不自由な者は差別の倫理によって自由な者へと迎合していくことになる。

②では、不特定他者の経験的な論理によって不快なものの説明がなされる。論理的であるものとはすなわち一般的なものである。論理は再現性が合意されていなければならないため、対象は一般化されるのだ。つまり、一般的なものは極めて規律性が高いといえる。規律性の向上は規範を発達させ、理路整然な社会の基盤等になりえる。しかしながら同時に、規範は疎外を生む。規範に則らない事実や対象は暗黙のうちに疎外されなければならない。なぜか。論理的である自己が論理による疎外を正当化しなければ、自己自身を裏切ることになるからである。規律や規範は不特定多数の疎外を生み出しながら、規律や規範を生み出した自己自身をもその規律や規範に対して自縄自縛になるのだ。このようにして疎外は勝手に亢進していく。不快なものに対する論理的な説明は、一般化を経由して、周囲への規律や規範を無意識に作り出し、疎外を産み落としていくのだ。一般論としての正論はこのように形成される。正論以外の論理は(個人的に)矛盾であるしかない、と。「この事実は論理的に不快なのだから、不快以外の何物でもない。社会通念上一般的でないのだから疎外されてしかるべきだ。矛盾は正さないといけない。」矛盾の烙印を押されたものは不自由になり、そのものの特徴が周囲の中で際立って現れるようになる。疎外とは孤独であり、孤独とはマイノリティ性そのものだ。そのため、誰もが疎外で際立った個人的特徴に対面せざるを得なくなる。その際立ちは非常に個人的であるため、アート的作用としての「様式」になり得る。(不快なものの不快さが際立ち、周囲へ知れ渡るということ。)つまり、一般論で疎外された不快なものは、逆説的に際立ち、唯一無二の「様式」になる。不自由性は様式やその様式自体のメディアのための基盤となり、多様さへの一助となりえる。(際立つ個人は後に①へと至り多様化概念の大きな権威になるかもしれない、みたいな流れを意識するといい。)

説明がもたらす結果

①の感情的説明は自由を謳うが、それは誰かの不自由の下で成り立つ脆弱なものである。基本的に「孤独→集団」の流れがあり、集団の形成によって疎外という概念を生み出す。孤独の力によって、結果疎外を作る。
②の論理的説明は一般性や規範を尊び、それ自体が不自由な個人を生み出す。その不自由性は、際立ち現象によって、様式やメディアの自由性を逆説的に担保する。基本的に「集団→個人」の流れがあり、一般という名の集団は規範外の対象を排除し疎外しうる。一般という名の集団の力によって、結果疎外を作る。

★疎外をつくる矛盾した自己

不快なものを説明しようと試みる者は、せっせと「疎外」を作っていることになる。自己自身が疎外されないように同じような感情を持つ集団に帰属したり、何かしらの論理を使って一般や規範に迎合するのに、不快なものに対しては「疎外」の限りを尽くしている。説明している時点でその者の「疎外」を欲望している。そして、その欲望は自己矛盾する。自己矛盾自体が存在するのは仕方がないと考えるにしても、その自己矛盾が「疎外」を正当化しているのであれば、それは放任し難い現象だ。

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