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映画『透明人間』〜こんなサプライズ夫はいやだ〜※ネタバレ

私の周りでは前評判の良かったこの作品。がしかし私としてはツッコミどころ満載で違った意味で楽しんでしまいました。ということで、その主な原因であるサプラ〜イズ!夫エイドリアンさん中心に語らせていただくことにします。

エイドリアンから見たこの物語

作中"ソシオパス"と表現される、ありとあらゆるものを徹底的に管理下に置かなければ気がすまない男・エイドリアン。本編でその素顔がはっきりとわかるのは終盤も終盤ですが、Maroon5のボーカルに見えて仕方なかった私をまずどうにかしてください。


彼の異常さは冒頭、主人公が妹の車に乗り込む場面ですぐにわかります。勿論妻が夫のもとを去る際の異様な怯えようからも。飼い犬の名前もおそらく彼がつけたんでしょう。ゼウス(ギリシア神話の全知全能の神)ですからね。でもその犬が電気首輪を"着けられている"という。(ゼウスは雷を武器とする神)

サプラ〜イズ!エイドリアン、妻の居所を突き止める!

主人公である妻がエイドリアンのもとから逃げた際、彼に残されたのは
・妻が落とした避妊薬
・妻を連れて行ったのは妹という情報
のみでした。避妊薬に関しては致命的な落とし物のように映されたものの、結局落とそうが落とさまいがというオチでしたね。(ジアゼパムは避妊薬じゃなくて抗不安薬ですね)

エイドリアンとしては妹から妻の現在の居場所を突き止めたかったはずですが、妻が妹と接触しないようにしていた為、万事休す…かと思いきや、さすがは光学のパイオニア(?)。「僕死んじゃったよ計画」を発動し、それにより見事妹が妻に接触、居場所を突き止めて封書を送ったのでした。

一度持ち上げてから落とす、これがソスィオパス!

鑑賞後、ふと頭をもたげた疑問が「居場所わかったんなら"透明"なんだし、さっさと脅して妻連れ帰れば手っ取り早くね?」だったんですが、そんなことをしても妻はまた逃亡するでしょうし、何よりエイドリアンは妻を二度と自分を裏切ることができないほどに罰したいわけなので、愚問であると気がつきました。とはいえ、もう居場所はわかっているのに遺産相続話で一度めちゃめちゃ喜ばせ(これも相続なんてさせる気はハナからなかったことがわかりましたが)、罰といっても仕掛けるのはベーコンエッグ燃やすだとか、白い息はぁ〜だとかプチいたずらレベル。おいおい、エイドリアン…

焦らすねえ〜!

でもね、プチいたずらシーンは映画っぽいというか、この映画で観客が欲しいシーンだよなあと思いましたし、エイドリアンさんは裏切った人間は一度度持ち上げてから落とす、そして時間をかけてじっくりと痛めつけるのが好きだという、どソシオパスであることがよーくわかりました。

おいおいエイドリアンはん、雑ちゃうか?

その後ペンキをかけられたのが気に食わなかったのか(ちゃうやろ)、お遊びはここまでだ!と、胸糞に胸糞を重ねたサプラ〜イズ!をし始めるエイドリアンさん。中華料理屋で妹が殺されるシーンなんかショッキングでしたよね…しかも妻が殺したことにされてしまう。むなくそぉ…。さらには捕まった先で知らされた、ソシオパス夫の子を身籠っているという事実。妊娠が絶望をもたらす系映画(?)はこれとあと一本、某フィンチャーさんの映画しか存じ上げないですが、個人的にあの作品ほどではないものの、かなり絶望度は高かったのではないでしょうか。いやあ〜すごい。エイドリアンさん。とことん妻を突き落としてくれますね。

がしかし、その後の精神病棟での戦闘シーン。直前に妻にペンで刺されたので気が動転していたのかもしれませんが、それまで作中でエイドリアンさんが築いてきたイメージからは想像できない雑っぷりだったのではないでしょうか。「え?こんなにたくさんの人カメラに映るとこで殺して大丈夫?しかも途中殺してない警備員おるよね?その人ら証言して妻が精神異常でないことの証拠になっちゃうよ?」と、まさかのこちら側を心配させたことについてはエイドリアンはん、どう思ってますの?

その後は妻を匿っていた警官親子を襲撃、がしかし罪を自身の兄であるトムに着せ、自分はというと自宅でずっとトムに監禁されていたということにし、何食わぬ顔で元通りの生活を目論みます。

30秒でわかる!エイドリアンの「僕死んじゃったよ計画」

流れがややこしくなりました、整理しましょう。

妻脱走

「僕死んじゃったよ計画」始動。妹が妻と接触したことで妻の居場所を突き止め、遺産相続の話を餌にトムの元へおびきよせる。(が、すべてフェイク。そもそも死んでいないし、のちに妻を遺産相続ができなくなる犯罪者に仕立て上げるつもりなので)

妹を殺した罪を着せ、妻を犯罪者に。

妻は遺産相続が出来なくなり、さらには妊娠が発覚。(ここでおそらくエイドリアンは絶望した妻が自分のもとへ戻るだろうと思っていた)

妻による襲撃(予想外)

警官親子襲撃(ここで兄に罪を着せ、自分は監禁されていたというプラン(おそらくプランB)へ

エイドリアンはん、説教させてもらうで。

そんなエイドリアンはんの最期は、彼の自宅の設備で同じく透明スーツを作っていた妻により、自殺と見せかけられて殺され…めでたしめでたし…

いや、あのさ、

妻が家来てスーツ作るかもて

考えへんか?(マジ説教のトーン)


ほんでそのスーツ作るとこの暗証番号が「2人の出逢った日」て…「ロマンティック…」やあらへんがな。あとあのスーツ、

ボタン一押しで作れたよな?

めちゃくちゃお手軽やん。え、なんで?なんでなん?なんでそこ詰めへんの?綿密緻密な完璧エイドリアンなんやろ?違うのん?精神病棟のシーンといい、「詰める、詰めへん…詰め、る へんのかーい!」©️吉本新喜劇
と、私の関西人の血が騒いだことについてエイドリアンはんどない思ってんの?


この作品が好きならこっちも?

今回の『透明人間』を観てまず思い出したのが、あの世界的デザイナー、トムフォード監督の『ノクターナル・アニマルズ』でした。両作とも妻がじわじわと追い詰められてゆくという点では同じものの、今作は私的にはすごく表面的な嫌悪、あちらは胸の奥をまさぐられるようなより陰湿な嫌悪(でも今作のように直接ドンパチするわけでもなく、映像なんか非常に洗練されている感じがしたので余計に)を感じる作品だったように思います。よりモヤモヤしたい方にはおすすめです。

エイドリアンはんには色々言うてしまいましたが、エリザベス・モスのあの名演が観られたのは良かったです。どんどん顔色悪くなってやばい女になってたもんね。女優さんはすげえなあ〜

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