ジャカルタ州知事選挙からインドネシア政治を読む(2/4)

2.選挙運動でイスラムはどう使われたか

<構成> 2.0. はじめに / 2.1. ユドヨノ側のイスラム利用 / 2.2. イスラム冒涜とされた問題ビデオ / 2.3. 素早かったMUIからのファトワ発出 / 2.4. 体制内活動を担うイスラム団体はアグス=シルビア組を支持 / 2.5. 筋金入りのイスラム強硬派はアニス=サンディ組を支持 / 2.6. イスラム強硬派による反共喧伝


 2.0. はじめに 

 連載第1回の前章では、反アホック勢力がどのように候補ペアを選定したかのプロセスを振り返った。ジャカルタ首都特別州知事選挙のなかで、こうした候補ペア選定プロセスは一般にあまり重要だとは思われないかもしれない。しかし、そのプロセスで起こったことのなかに、今後のインドネシア政治を見ていくうえで重要な動きがあった。

 その一端は、なぜ反アホック勢力がまとまって統一候補ペアを出せなかったのかに凝縮されている。すなわち、イスラムの名の下に大衆動員をかけ、あたかも全部のイスラム教徒が反アホックでまとまっているかのように見えながら、候補ペアを統一できなかった、イスラムの名の下に大同団結できなかったのである。

 そのプロセスについては、連載第1回の前章をもう一度お読みいただいたうえで、本章をお読みいただければ、ジャカルタ首都特別州知事選挙における候補ペアとイスラムとの関係をより正確に理解することができると思われる。

 以下では、候補ペアを統一できなかった反アホック勢力のユドヨノ側とプラボウォ側がイスラムをどのように活用したか、イスラム団体側はどのように反応したのか、なぜあれだけの大衆動員が可能だったのか、などについて、私なりの分析を試みたい。

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