書店のこれからについて考えてみる

出版社の営業をしていて


私はとある出版社の営業をしている。

出版社の営業と聞くと一般の人はどんなイメージを持っているだろうか。もちろん、会社によって営業スタイルは様々だろうが、基本的には各書店を回り、書籍の補充提案、フェアなどはじめとした企画の案内、新刊の紹介などを行っているはずだ。私もその例に漏れず毎日せっせと東北各地の書店へ足を運んでいる。


この業務に着いてから3年が経とうとしている。残念ながらこのたった3年の間に私の担当している書店は着実に減少していっている。

大手書店の新規開店が全く無いわけでは無い。だが、それをはるかに上回るペースで閉店が続いているような状況だ。

営業マンとしては得意先が無くなることもキツイが、一人の本好きとして、街から書店が消えていくのは悲しい。

この傾向はこれからも続くだろう。
業界的に見ても書籍の売上は厳しい。出版業界のピークは1996年と言われている。これは私の生まれた年でもある。私が生まれてから今に至るまでずっと、出版業界は右肩下がりになっているというわけだから、我ながらよくこんな業界に入ったものだと思う。


書店の現在



必然、書籍を扱う書店の経営も苦しくなる。
最近は都市部の書店でも雑貨、文具コーナーを増やすなどしてどうにか利益を上げようと模索している様が見える。
さらには「フードロスコーナー」「ガチャガチャコーナー」など、最早書店とは無縁なコーナーを設け始めている書店もある。
そういった書店の変化を安易に否定することはできない。もうずっと言われていることだが書籍は利益が少ない。例えば1000円の書籍を売っても、基本的には書店には200円少々の利益にしかならない。また「取次」という卸会社との都合もある。その辺りの事情は多くの方が指摘している通りだ。
だからこれもまた今後の書店の姿の1つとして割り切るしかないのだろうか。


個人的な意見としては書店にはやはり書籍を置いてほしい。
書籍以外のコーナーを設けるということはその分書籍の在庫数が減ってしまうわけだ。書籍を求めに書店へやってくる人間に対して、書籍数が少ないという事は致命的な弱点である。

そもそもだ。
今は本を読む人がかなり少なくなっている。インターネットが普及していない時代では情報の多くは本に頼るところが大きかった。したがって生活の中で本は必須な物に近かった。
だが、現代ではスマホ1つでたやすく情報収集できる。これの良し悪しを語るのは趣旨とずれるのでここでは書かないが、本を読む必要性が薄れているのは事実だ。

ただ数は減ったとは言え、本が好きな人はまだまだ多い。そしてそういう本好きは本を求めに書店へ足を運んでいるだろう。だが…。




書店の未来?




私が今考えている書店の最悪な未来の話をする。

書店では万人受けを目指した中途半端な店作りが進行していく。書籍コーナーが狭まり、本好きが見つけたい本がなかなか見つからなくなっていってしまう。
するとどうするか。ネット注文だ。ネットなら送料などにさえ目を瞑れば大抵の本が手に入る。
それならと、本好きも書店へは足を運ばなくなっていく。

さて、本好きが訪れなくなった書店はますます書籍以外に力を入れ始める。やがてはコンビニの書籍コーナーぐらいの本しか置かなくなり、付け焼き刃的な雑貨、衣類などに手を出すが、多くの書店は本業で扱っている店には勝てず淘汰されていく。
そして街から書店が消えていく……。

こんな感じだ。
すでにこのパターンで消えてしまった書店もあるのではないかと思う。


書店のこれからを考えるにあたって




これも時代の流れと言ってしまうのは簡単だ。

だが、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さん、さわや書店(岩手県)の書店員さんなど多くの方が書店の未来について考えている。

多くの本好きの方が言う通り、書店とは「本との出会いの場」であることは私も強く感じている。
 
未知の本をネット検索を使って探し、さらにそこから自分が読んでみたい本を探してみることは意外と難しい。どういうワードで検索すべきか、そのワードで出した検索結果で本当に良いのか、そこの判断が私としては難しく感じるところだ。
また似た内容の本を比較したくとも見比べることもできない。
特に全く新しいジャンルに挑戦してみたいとき、これらはより大きな弊害となる。

その点、書店であればネット検索ではなかなか引っかからないような本が目に入ってくる。実際に内容をチェックできることも多いし、類書との比較もしやすい。

そして今まで本を読んでこなかった人に対して、読書へのきっかけを生み出すのもまた書店である。

書店という本に溢れた空間の中で、存分にまだ見ぬ本との出会いを楽しむことができる。これが書店の何よりの魅力だ。私はいくらネット社会になったとは言え、こういう場を絶やしてはならないと強く思う。


まだ業界数年の若造が言えることなんてほとんど無い。ここに書いたことなどすでに多くの本好きの先輩方が書いたことの二番煎じに過ぎない。
だが出版社の営業マンとして、一人の本好きとして「書店のこれから」は今後とも考えていきたいテーマの1つである。


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