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中世の匂いが残る街で一期一会#イタリア5

今俺がいるのはローマ近郊の歴史ある小さなまちザガローロ。16世紀の街並みが今もなお残る美しい街だ。街の中心には大きな教会聳え立ち、毎日決まった時間に大きな鐘の音が聞こえてくる。絵葉書に描いてありそうな美しい街並みと今日の天気は言葉を失うほど綺麗だ。街のどこを切り取っても絵になるこの街をカメラ片手にぶらつきまわる。これが一人旅の醍醐味の一つで、他人に気を使わずに好きなだけのんびりと時間を使える。俺はいつも、その土地のローカルな生活を感じるために裏道や路地に入ってゆく。これが一番地元の匂いを感じることができる方法だと思うからだ。縄にかけられた洗濯物、壁に描かれているスプレーアート、家から聞こえてくるテレビの音漏れ。日向ぼっこをしながら昼寝をする猫や散歩中の老夫婦もいる。怪しい者じゃありませんよと伝えるためにニコニコ挨拶しながら通りすがる。

魔女の宅急便の世界に迷い込んだかのような景色に見惚れ歩き続けていると、もうこんな時間だ。たまたま近くに賑わっているカフェらしき店を見つけたから入ってみることに。

店に入って瞬間から焼き菓子とコーヒーのいい香りが広がっている。一気にお腹が空いてきた。イタリアでよくある、カウンターで立ちながら頼んだものを食べたり飲んだりする式の店だ。このタイプにまだあまり慣れていないので少し緊張しながらも、カプチーノとクロワッサンを注文する。

激うまクロワッサンとカプチーノ


「はい、お待ちどうさま!あんた見ない顔だね、どこからきたの?」
「日本からだよ、近くで農業ボランティアをしてるんだ!それにしてもいい街だね〜〜」
「日本から来たのね、いらっしゃい!」

イタリアの小さな街は余計とアジア人の俺は目立つのだろう。店員さんだけではなく周りのお客さんたちまで興味津々で俺の話を聞いてくれる。

「旅をしているの?」
「そうだよ、バックパッカーをしてるよ。実はイタリアが一カ国目なんだ」
「へ〜〜光栄なことだね、ご飯がうまいだろ!」
「うん、美味すぎて1日中何かしら食べてるよ〜〜笑」

聞くとこのお店は70歳のおばあちゃんとその娘が営む街のみんなが愛し毎日の集いの場になっているカフェみたいだ。娘のマリーはお客さん全員と友達な様で、「マリー、カプチーノ二つ!」「マリー、いつもの頼むよ!」と言った会話が店内で飛び交っている。

そんな中で俺に興味津々な様子で喋りかけてくれたのがマイク。マイクはエンジニアとして働いている30代くらいの兄ちゃんで、旅のことを聞かせてくれよと隣に座ってきた。

「20歳でよく旅する勇気があるな、だいちはすげーよ!この街で他に観光客はまだ見てないだろ、あんまいないからな〜」

「うん、みんなにジロジロ見られるから相当珍しいんだろうなとは思ってたよ笑」

「この街にはそもそも観光客が来ること自体珍しいんだよ」

「俺は超マイナーな街に来れたってことか、ラッキーだなあ」



ローマのような大きな観光地ももちろんいいけど、人が温かくローカルな匂いがぷんぷん漂うこの小さな街を放浪するのがもっといい。カメラを持ってただひたすら歩き続けるだけだが、一本入り組んだ道に入るだけで全く違う雰囲気を味わえる。天然酵母を謳うパン屋や少し値段の張る手作りの雑貨屋、そしてテラスで新聞を読みながらタバコを吸ってコーヒーを飲んでいる人たちが集うカフェがあったり。この感じがいい。


「大地の分も俺に付けといてくれ、マリー、いくらだ?いつか旅の本なんかを書くときには俺に奢ってもらったことをかけよな!気をつけて頑張れよ!」

マイクは昼休憩を終えて仕事に戻って行った。


マイクとマリー


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