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子どもの成長を助ける小児外科医

子どもが病気になったらまずお世話になるのが小児科。しかし外科的な処置・手術が必要な場合には、小児外科医の登場です。おとなの20分の1ほどの小さなカラダの不具合を、できるだけ小さなキズあとで治す小児外科医、千馬耕亮医師に話を聞きました。3回に分けてお届けします。(2023年6月21日)

小児外科って何ですか?

イズミン 小児外科というのは、小児科とも違うし、一般外科とも違うんですよね。

チバ 小児外科は、もとは外科のなかで小児を診ていたグループが分かれてできました。なので、一般的な小児科が成人でいう内科だとすると、僕らは外科の方を担当している感じです。
 小児科の患者さんで手術が必要そうだなとなったら、僕ら小児外科に紹介していただき手術するような流れです。

イズミン 小児外科の先生って全国的にもそんなにいらっしゃらないと思いますが、数あるなかで、先生はなぜ小児外科を選んだんですか。

チバ 僕は名古屋大学出身なのですが、大学の小児外科にすごく憧れの先生がいて、かっこいいなと思ったのがまず一つ。 また小児外科は手術で治すことができる(治癒できる)病気が多いのが魅力だと思いました。

イズミン どんな病気を扱っているのですか?

チバ 小児外科の守備範囲はめちゃくちゃ広くて、頭と心臓と骨以外はほぼ全部です。
 子どものうちに発症して、手術でしか治らないような病気を主に診ています。例えば鼠径ヘルニア臍ヘルニアといったものが一番多い病気です。あとは、生まれつき腸が繋がってないとか、肛門がないといった子の腸を繋げたりお尻の穴を作ってあげたりという手術もします。

シノハラ いわゆる先天異常ですね。

チバ そうです。生まれ持ってそういうふうになってしまった子と、あとは生まれてきてから発症した、多いものだと虫垂炎(いわゆる盲腸)がありますが、そういったものも対象としています。

これから何十年も生きていく子どもたちのトラウマにならない


イズミン 医療業界って、専門科にすごく分かれていて、各専門分野に長けた先生方がたくさんいらっしゃいますが、小児科・小児外科はその年齢だけで区切って、本当にいろいろな分野を知らないとできないお仕事ですね。

チバ そうですね。耳鼻科、呼吸器外科、一般外科、泌尿器科、婦人科などありますが、範囲がすごく広いだけじゃなく、その後、その児が何十年も生きていくうえで、どういうふうに手術をしたら、うまく成長発達できるかも考えながら治療していかなければならないことが、小児外科の難しいところであり、醍醐味じゃないかと思っています。

シノハラ 広いけど浅くではなく、深く、そして将来に向けていろいろイメージしながらやっていかれるお仕事なんですね。
 子どもさんを治療する際に、今後の成長を視野に入れて治療を行ううえで、心がけていることはありますか?

チバ 一番心がけていることは、できるだけ傷を小さくするということです。やっぱり傷が大きいと、その傷を持って何十年と生きていくわけです。昔は外科といえばガバっとお腹を開けるような手術が多かったと思うんですけれども、傷を小さくするとか、あとは手術自体の負担を減らしていくという意味でも、最近は小児外科でも胸腔鏡や腹腔鏡の手術をたくさんやっています。

イズミン 腹腔鏡手術というのは、小さい孔を開けてお腹にカメラを入れて、なるべく小さな傷でお腹のなかの施術をする、というものですね。

チバ 例えば、虫垂炎の手術だと昔は右の下っ腹を、3~4センチくらい切っていたと思いますが、僕はおへその傷だけの手術をやっています。そっちの方が手術する側としても、腹腔鏡でお腹の中全体を見渡すことができて、手術しやすく、より安全にできると考えています。何より、おへそから切れば、体表に傷をつけることなく手術ができますので、そこが一番の利点です。

イズミン 先生は新生児の手術も結構されるそうですが、新生児の手術はやはり難しいんですか。

チバ 新生児というのは生まれて1カ月未満の児のことを指すんですけれども、それぐらいだと体重が3キロ前後なので、普通のおとなの20分の1ぐらいの大きさの子どもを手術することになります。なので、細かい力加減なども必要になります。ただ、僕もここまでたくさん小児・新生児の手術を経験してきているので、そこは問題ありません。


ゲスト紹介
千馬耕亮(ちば・こうすけ)
大同病院 小児外科部長。
小さな子どもたちが、健やかに成長していけるように小さいうちに手術で病気を治す。そのことに魅力を感じて小児外科医の道を選んだ。趣味はゴルフと車。日本外科学会認定外科専門医、日本小児外科学会認定小児外科専門医。


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