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子どもとラルゴに使った、美しい抱っこ紐

子どもが生まれた当時
私たち夫婦は車がないばかりか
免許すら持っていなかったので
移動は徒歩か自転車・公共交通機関のみ。

そのためベビーカーは最軽量のものと
安全性重視の2本立てで考え
どれにするかは、すぐに決まった。

一方で、抱っこ紐は何にするか
迷いに迷って、なかなか決められなかった。

肩や腰の負担が少ないだとか
通気性が良いだとか
装着がしやすいだとか

生まれて来る前の試着は限られているし
実際に赤ちゃんを入れたらどうなるか
あれこれシュミレーションしてみるものの
どれもピンとこなかった。

そんな中、友人が抱っこ紐を贈るから
どれがいいか選んでと言われた中にあった
ピースリング。

他のもっさりとしたベビースリングとは違い
1枚の長い幅広の布を幾重かに畳み
リングで止めただけの様な
シンプルなスリングに目が止まる。

使っている姿が、何しろ美しかった。
長いストールの中に赤ちゃんがいるような
そんなシルエットに惹かれた。

他にも180cmの旦那と
155cmの私とで共有が楽だったことや
子どもの体重が15〜16キロまで使えること
横抱き・縦抱きも、そのまま出来ることと
機能面でも充分に満足できるので
「これが欲しい!」とお願いした。

友人がチョイスしてくれた
薄いサンドベージュの麻布は
季節を問わずに活躍してくれて
子どもが3歳過ぎるくらいまでは
旦那と私で、代わる代わる使い続けた。

出来れば、子どもは3人欲しい
そう思っていたけれど
結局、私と縁を繋いでくれた
物好きの子どもは、1人だけだったので
我が家のピースリングはこの3年で
残念ながら、お役御免となる。



もともと人の膝が好きだったラルゴは
体調を崩してからも変わらず抱っこをねだり
しかも膝上で眠ることが増えたので
用があって立ち上がるのに難儀した。

犬用のベッドに降ろすと
不安気に視線を揺らして
鼻を鳴らされる。

それだけで、何か悪いことをしたような
罪悪感が湧いてきてしまうので
お互いのために何とかならないか。
思案している中で、ふと思い出したのが
ピースリングだった。

どこに置いたか記憶を辿り
しまい込んでいたものを引っ張り出す。
懐かしい上品な麻布は虫喰いもなく
仕舞った当時のままでホッとする。

布の中に、大人しく入ってくれるか
それだけが心配だったけれども
1日の大半を抱っこ紐で過ごすほど 
ラルゴは気に入ってくれた。

ピースリングは余計な装着ベルトがないから
ラルゴの痩せて骨が浮き出した体に
固いものが当たることもなく
好きな姿勢を取って寛げたらしい。

首を立てるのが出来ないほどに弱ってからは
布団を離れなくなったけれども
意識があるときには外にも出たがったので
ピースリングは本当に重宝した。

残暑も厳しく、徹夜状態でドロドロの自分が
ラルゴを抱いて移動ができたのも
身だしなみに気を配る余裕のない中で
最低限の格好がついたのも
美しい抱っこ紐のお陰だったと思う。



ラルゴの足が引っ掛かるうちに
薄い麻布の一部は裂けてしまった。

これを機会に、いっそ処分しようか
そう考えもしたが、出来なかった。

贈られたものというだけでなく
子どもと犬がお世話になり
捨てるには、思い出が詰まりすぎている。

洗ったあとに、繕ってから
また目に付かない場所に仕舞おう。
次に使う機会があるかないかは
分からないけれども。



子どもに使ったものが
犬の世話や介護に役立つことが
意外とある。

ビニールプールは徘徊が始まった小型犬に 
とても有効な囲いになるというし
赤ちゃん用のクッションや
お漏らし対策の防水シーツ
抱っこ紐

紙オムツも少し工夫をすれば
犬用より経済的で、余程使えるらしい。

もし今、育児と並行して
愛犬との暮らしをしている方がいたら
赤ちゃんに使っていたものを取っておくと
役立つ物があるだろうと思う。

処分を考えているものは
1度調べることをお勧めする。

もし購入に迷っているものがあるのなら
シンプルなものを選んだほうが
長く役立ってくれるはずだ。

様々な機能が付いたものは
その時の流行や風潮に沿ったものが多い。
管理や手入れが面倒なものが少なくないし 
見た目もイマイチな物が多い。

シンプルなものには
物足りなさを感じることがあるかもしれない、
けれども余分なものを伴わない潔さには
ブレずに役割を果たす力強さと
機能美が備わっていることが多い。

そして直感的に惹かれたものは
恐らく育児に疲れた自分を
感覚的に慰めてくれるアイテムになる。

慰めてくれるのが、色なのか質感なのか
それは分からないけれども
あっ!と強く惹かれた感覚は信頼に足る。

シンプルで美しいものは長く役に立ち
色々な思いを積み上げて
役割以上の働きをしてくれるだろう。

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