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「テレビも視聴者も、どっちもどっち」

2019年10月12日 大胆に失敗ができる生き物

おはようございます。
出演する度に私服と陰毛が減る『ゴッドタン』という地獄番組に、再来週ぐらいに出演するキングコング西野です。

さて。
今日は「サラリーマンって最高だよ」という話をしたいと思います。

お仕事をしていると、『KPI』という言葉によく出くわします。
KPIとは「キー・パフォーマンス・何ちゃら」の略で、言ってしまえば『目標の達成度』ですね。
「新規顧客獲得数」や「新規受注獲得数」や「視聴率」や「売り上げ部数」のことだと思います(知らねーけど)。

最終的な結果だけではなくて、制作過程でもKPIは設けられていて、制作過程のKPIは「稼働率」や「生産効率」などを指します(知らねーけど)。

『目標』というと前向きな響きですが、その実態は『ノルマ』のようになっていて、そこをクリアしないと首が飛ぶわけですから、仕事をする人達は「KPIの奴隷」として生きることになります。

ただ、戦後日本を振り返ると、KPIのスーパー奴隷として生きた日本は、盛りに盛り上がって、たしかな豊かさを手にすることができました。 
ところがここにきてKPIを追い続けてきた人達が軒並み失速しています。

このサロンでも何度も話題になっていますが、正解の出し方がコピーしやすくなり、誰でも正解を出せるようになり、「正解に価値が無くなる」という不思議な時代が到来し、問題を解く『名探偵コナン』みたいな人よりも、解きたくなるような問題を生む『怪盗キッド』みたいな人の価値がグーンと上がっちゃったんですね。

厄介なことに、KPIというのは『正解の出し方』に行く為の乗り物であって、『問題の出し方』に行く為の乗り物ではないんですね。

問題を出す為に必要なのは、「信用」や「物語」といった極めて数値化しにくい部分で(※信用の数値化は始まっていますが)、残念ながら、これはKPIとは真逆の世界観です。

特に「物語度」なんてのは、失敗すること(不正解を出すこと)で上がったりもします。
むしろ、定期的に失敗が挟まっていないと、物語は面白くありません。

物語度を上げる為には、KPIなんてのは一番邪魔なんですね。

とはいえ、現実問題、失敗が続くと死にます。
起業家なんかは、成果が出ないと刻一刻と資金が減っていき、ゼロになればゲームオーバーなので、KPIを無視することはなかなか難しくて…つまるところ、“物語を作りにくい立場”にあります。

前々から言っていますが、「起業家」と「オンラインサロン」の相性があまり良くないのは、そこですね。

そんな中、大胆に失敗ができる生き物がいます。
「サラリーマン」です。
「月~金」で働いて稼いだお金を「土日」にブチ込んで大ゴケしても、生活を続けることができて、また「土日」に大胆な賭けをすることが可能です。

起業家と違って、失敗しても挑戦を止めずにすむんですね。
ここからの時代で確実に重宝される「物語度」を上げる為には、失敗しても挑戦を止めずにすむ環境を作っておくことがとってもとっても大切で、その環境が作れているのが、西野や箕輪さんやサラリーマンだと思います。と思ったら、箕輪さんはサラリーマンでした。

このサロンにもサラリーマンの方がたくさんいらっしゃると思いますので、最後に、その方々にメッセージを贈ります。

今、メチャクチャいいポジション(物語を作りやすいポジション)についているので、その環境を利用して、土日でドンドン挑戦した方がいいと思います。

起業家やタレントや尾崎豊にはできない戦い方ができるのがサラリーマンです。
挑んでみてくださーい。
現場からは以上でーす。



2019年10月13日 「テレビを長時間観ている人の知識の量と選択肢の数の少なさ」はハンパねぇです。

おはようございます。
名古屋→岡山→大阪→フランスという桃鉄のような毎日をお届けしているキングコング西野です。

さて。
今日は「情報は常に最適化されている」というテーマで、(うまく言語化できるか分かりませんが)お話ししたいと思います。

先週、『手取り14万。日本終わってますよね?』が少しバズりました。

多くの人が賛同する中、「お前が終わってんだよ」と“自己責任論”を展開し、大炎上をしたホリエモン。
さすが、ホリエモンは今日もホリエモンです。好きです。

この件について僕の見解を少しだけお話しすると…
(極端な例ですが…)たとえば僕たち『芸人』は朝から晩まで頭を悩ませてネタを作って、稽古をして、劇場でネタを披露して、一ヶ月の手取りが1000円を切る場合があります。
…はい、そうです。1000円以下は、銀行でおろせません。

芸人は、こんな貧乏生活が10年続いたりすることもザラにあるわけですが、だからといって「日本終わってる」とは1ミリも思いません。

その生き方を自分で選んだからです。

僕ら芸人には、頑張って良い大学に行って、頑張って大企業に入って、安定した収入をもらえる…という“選択肢”がありましたが、その道を選ばず、吉本興業の門を叩きました。

当然、この世界に飛び込んだ以上、安定した収入が得られないのは承知の上です。
仕事柄、いろんな国に行かせてもらっていますが、たとえば、フィリピンの『ハッピーランド』などは“選択肢”がなく、本当の意味での貧困の連鎖が続いています。


他方、日本は選択肢に溢れていて、僕もあなたも自分が選んだ生き方で生きています。

学生時代に努力をしないことを選んだのも自分だし、一人育てあげるまでに2000~3000万円かかるの分かっているのに子供を生むことを選んだのも自分です。

大前提として、『選択肢がある以上は自己責任』で、少なくとも(選択肢に溢れた)今の日本で生きる以上は自己責任だと思っています。

ただ、ここで「自己責任だから」と切り捨てたくはないので、一旦、『手取り14万円。日本終わってますよね?』と言う人達に寄り添って考えてみたところ、こんな答えが出てきました。
『彼らには選択肢が無かった』

今、生活の手助けをしてくれるサービスなんて山ほどあって、キチンと設計すれば、手取り14万円で十分すぎるほど生きていくことが可能です(※そもそも僕の生活費は月に8万円ぐらいです)。

転職したければ『キャリオク』に登録しとけばいいし、+αで稼ごうと思えば、隙間時間を利用して、クラウドソーシングで仕事を請ければいい。

ここでの疑問は、「そもそも『手取り14万円。日本終わってますよね?』という人達は、生活の手助けをしてくれる様々なサービスや、キャリオクや、クラウドソーシングのことを知っているのか?」という点です。


僕やホリエモンは“知っている”ので、「選択肢があるじゃん!自己責任だよ」となるのですが、きっと彼らは“知らない”ので、彼らからすると選択肢が無いんですね。

そんな中、「自己責任だよ!」と言われても、まったく入ってこない。
ここにズレがあるのだと思いました。

となってきたら、「なぜ彼らは知らないのか?」を掘り下げる必要があって、彼らのメインの情報源を突き止める必要があります。
おそらく、「テレビ」ですね。

これに関しては、僕もその現場に何度も立ち会っているので分かるのですが、たとえば2015年5月に、「クラウドファンディングでお金を集めて、クラウドソーシングでスタッフを集めて、絵本『えんとつ町のプペル』を分業制で作ります」と掲げた時に、テレビで扱ってもらったのですが、僕の扱われ方が「炎上芸人」で、「奇をてらっている人」で、「クラウド何チャラという怪しい詐欺サービスで、金集めをしているヤツ」だったんですね。

「クラウド? は? 何言ってんのオマエ。ケケケww」と言った調子です。

次の時代の僕らの重要な選択肢の話をしているのに、それをテレビが臭して終わらせたのには理由があって、『手取り14万円。日本終わってますよね?』と言っちゃうような人達に、番組内容を“最適化”しているんですね。

人類を前に進めることよりも、視聴率を稼ぐことを選んだわけです。

筆が走っているので、正直に言わせていただくと、「テレビを長時間観ている人の知識の量と選択肢の数の少なさ」はハンパねぇです。
結構、絶望的です。

ただ、これをテレビの責任にしてほしくなくて、そもそもテレビは「視聴者の鏡」で、ワイドショーがタレントのクソ不倫話に何時間も割いているのは、視聴者がそこにチャンネルを合わせているからです。

自分よりも不幸な人の情報を求めているからです。
「テレビも視聴者も、どっちもどっち」と言ったところでしょうか。

非常に危険だなぁと思うのは、タレントの不倫を面白がる視聴者の知識レベルに最適化するようにテレビを作っているうちに、テレビマンの知識レベルもそこに寄っていってしまって、「選択肢を知らない人が、選択肢を知らない人に、情報を発信する」という地獄モードに突入し、『手取り14万円。日本終わってますよね?』に着地します。


ただ、これは他人事ではなくて…
僕の元に入ってきている情報も、僕に最適化された情報で、僕のところに辿り着くまでに情報が厳選され、選択肢が絞られています。

そして、もう一つ。
SNSの『いいね』は非常に大きな問題だと思っていて、少しでも気を抜くと、僕らは「『いいね』が貰えるような投稿」をしてしまいます。

発信内容を、フォロワーさんに最適化してしまうわけですね。

これは作り手の知識レベルが視聴者の知識レベルに寄っていってしまうテレビとまったく同じ構造です。
これを続けると、最終的には自分じゃなくなるんですね。
(※だから、このサロンでは『いいね』の締切を設けています)

僕らが踏まえておかなくちゃいけないことは、「自分のところに入ってくる情報は自分に最適化されている」ということでしょうか。

このことを受けて、情報を入れ換えて、選択肢を増やそうと思うのなら、「インターネット」ではなかなか難しくて、たぶん、物理的に移動して、目や耳や口に入る情報を一新する必要がありそうです。

東京に住んでいても、入ってくる情報のルートが固まってきたので、そろそろ引っ越します。
現場からは以上でーす。



「映画 えんとつ町のプペル」



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