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これでいいのだろうか

かつて、医者の方と付き合っていた時に
「このままメスを持つことがないことに医師として危機感を感じる。」と言われたことがある。

 
元彼は精神科医志望で医大に入り
研修医を経て志望通り精神科医になったわけだが
周りの医者を見たり
もう二度とメスを持たないことに関して
これでいいのだろうかと感じたようだ。

 
研修医時代、外科とか救命救急とか様々な科で働いていた時

「外科は天才しかいない…。」だとか

「救命救急は判断ミスしたら終わり。研修医っていっても、患者さんや家族から見たら医者でしかないし、でも経験値も技術も知識も足りない…。」だとか

「プライベートで出掛けた先で具合悪い人がいなければいいって思う。治療できる自信ない。」だとか

色々言っていた。

 
「ともかは自分の仕事に信念を持っていてかっこいい。福祉の仕事はもっと評価されるべきだ。」とも。

 
当時の私は、望み通り精神科医になったわけだし
研修医時代メスを使う科に対してひぃーひぃー言っていたわけだし
そんなに、危機感を感じなくてもいいのではないか、と感じていた。
他の科の医師になりたいならまだしも、精神科医として生きるならば、このままでいいのではないかと。

実際私は当時その類の危機感は感じていなかった。
やりたい仕事をやれる幸せさを噛みしめていた。

 
 
転職してしばらく経ち
私は元彼の言葉が時々浮かぶようになった。

 
今の職場はリフト対応車がない。
かつては様々な会社の様々なリフト対応車に乗り、リフト操作をしていたのに
私はもう4年、リフト対応車を扱っていないのだ。

 
更に、入浴介助もしていない。
今の職場が入浴サービスをしていないからだ。

 
確かに今の職場で働く分にはできなくても支障はないし
未経験なわけでもないし
リフト対応車はその車ごとの注意点があり
入浴介助もその人その人で対応ポイントがあるし
いざ、やる気になればそれなりにはできると思うが
今ここにいる限りはしばらくはやることはない業務なのである。

それに私は密かな焦りを感じていた。
福祉職員なのに、と。

 
他施設の福祉職員全てがリフト対応車に乗り、入浴介助をするわけでは決してないが
代表的な業務であるそれらをやらないことで
福祉職員として大事な何かがなまっていくような、錆びていくような感覚がある。

今の職場では使わないスキルなのに。

 
元彼が言っていた危機感とは、こんなニュアンスのことだったのかもしれない。

 
 
今の職場は福祉のスキルももちろんだが、手芸のスキルを求められる。
私は手芸の業務よりも、より福祉に関する仕事をやりたいというのが本音だ。

入職して想像以上に手芸が好きではないと厳しい職場だと知った。
そして私はそこまで手芸が得意ではないと痛感した。
嫌いではないが、求められる手芸比率が大きすぎるのだ。

 
もしも今度転職するならば、理由の一つは漠然とした危機感かもしれない。


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