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常楽寺(栃木県鹿沼市)

今から10年前くらいのことだろうか。

 
私が当時勤めていた施設の某送迎ルートは、彼岸花がよく咲いていてキレイだった。

 
私はそのルートでは送迎補助として乗っていて
利用者さんを迎えに行くまでの道中
運転手であるAさんとよく話していた。

年齢は40歳くらい違ったが
Aさんとはよく日帰り旅行の話で盛り上がった。

 
私が滝や湖等水が好きなことや人がいない自然豊かな散歩道を探していることを伝えると
Aさんは私が好きそうな場所を教えてくれた。

私が今、県内の道の駅全てに行くことを密かな目標としているのは
Aさんが道の駅巡りにハマっていた話を当時よく聞いていた影響だ。

 
そんなAさんが、道中の彼岸花をキレイキレイと言う私に紹介してくれたのが鹿沼市の常楽寺だった。

Aさんが言うにはそばの白い花と赤い彼岸花のコントラストが見事らしいが
その年その年によって開花状況が変わるから
両方の花が見頃の時期を狙って行けるかは運もあるらしい。

また、見頃の時は激混みらしく
駐車場は30台分あるらしいが、満車の可能性もあるという。

 
平日休みではない私には不利に思えたが
Aさんは知人を紹介してくれ
常楽寺駐車場が満車の時は近隣の知人のところに停めればいいとさえ言ってくれた。
Aさん様々である。

 
そんな経緯で、私は初めて常楽寺に行ってみた。

のどかな道をひたすらにひたすらに進むと、常楽寺がある。
うちから行くとプチ旅行の気分だ。

なるほど確かに午前中に行ったが、常に車が出たり入ったりして大賑わいだった。
私は運良く停められてラッキーだった。

 
常楽寺は趣がある赤いお寺で、彼岸花やそばの花との調和が見事だった。
見とれたり、写真を撮ったりして私は大いに楽しんだ。

こんな素敵な場所を紹介してくれたAさんに感謝だ。

 
常楽寺が気に入った私は
それからも何回か行った。

一人で行くこともあれば、友達や恋人と行ったこともある。

 
青空と彼岸花やそばの花の開花状況に恵まれる年ばかりではなく
行くごとにドラマがあった。

 
Aさんはやがて退職し
退職後は会っていないが
私の祖母が亡くなった時に香典を包んでくれ
それがきっかけで久々に話した。

 
Aさんはあまりいい辞め方ではなかったが
退職後、元気で幸せそうでホッとした。

 
私はAさんと同じ事業部で働いていて
やがて私は私でAさんと似たような辞め方をし、悔しい思いをしたが
きっとAさんなら、私の気持ちを分かってくれるだろうと思った。

私は別の施設に転職し、もう二度とAさんと同じ送迎車に乗ることは叶わないが
彼岸花の時期になるとAさんを思い出す。

 
私はAさんの仕事ぶりやAさんの仕事への思いが好きだった。

車で二人きりで話すあの時間、仕事の夢や休みの日に行きたい場所を話すあの時間は私にはかけがえのないものだった。

 
転職先で今私は頑張っている。
あの頃をときどき思い出しながら。












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