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セクシャルマイノリティ~LGBT(QA)~

私は女として生まれ、恋愛対象は男性だった。

それに疑いを持ったことは全くなかったし
幼い頃、男性と女性しか世界にはいないと思っていた。
男性は男性で自分を男と疑わず、女性が好きなことが当たり前だとも思っていた。

 
小学四年生の時に友達同士で手を繋いで帰った時
レズだと周りからからかわれた。
友達が泣いて、友達の親が学校に連絡して
クラス全体が指導された時
私はレズについて改めて考えた。

その頃には女性が好きな女性をレズと言い
男性が好きな男性をホモと言うことを知っていた。

 
だから、所謂男らしくない行為をしたら
ホモとかオカマとか蔑まれ
女らしくない行為をしたら
男っぽいとかレズとか蔑まれることが分かっていた。

この頃には、大人の男性が女性の格好をする人もいると知っていたが
性嗜好までは考えが及ばなかった。

 
 
女として生まれ、女として育った私は
制服のスカートや赤やピンクの服や小物に抵抗は全くなく
むしろ好んでいたし
初恋は小学生の頃で、気になる人はみんな当たり前に男性だった。

 
 
そんな私が高校生になった頃
女友達から、「私には彼女がいる。」と打ち明けられた。
驚きはしたが、「へぇ~そうなんだ。」と返した。
後に、別の友達からは、「私はバイなんだ。」と打ち明けられた。
やはり多少驚いたが、「へぇ~そうなんだ。」と返した。

私は二人が羨ましかった。

私はまだ高校生になっても恋人がいなかった。
恋人がほしくてたまらなくて、友達に男友達を紹介してもらったり、ネットで出会いを求めていたが
恋人はできないままだった。

恋人がいるなんて羨ましい。
しかも二人とも、めちゃくちゃかわいい彼女がいやがる。

  
「引かないの?」と、打ち明けた友達は言った。
打ち明ける前、友達は緊張し、言葉が出るまでに時間がかかっていたし
二人とも、私と二人きりの時に話した。
だから、高校時代、他の友達は彼女らがバイだということを知らない(彼女がいる、と打ち明けた子は、後に彼氏もできたので、バイだったのである)。

 
私「最初、驚きはしたけど、引きはしないなぁ。人を好きになるのは素晴らしいじゃん。両思いでかわいい彼女がいるなんて、本当羨ましい。」

 
友達「ともかちゃんらしいわ。だから、打ち明けたんだけどね。」

 
彼女らは各々、そんなことを言っていた。
私が内心むしろ驚いたのは、彼女らが私と同じグループではなかったことだ。
同じグループの子に打ち明けずに、他グループの私に打ち明けたのは
ポジティブに考えれば私を信頼してくれたからだし
現実的に考えれば、同じグループの子に引かれるのが怖かったのかもしれない。

 
女子校はなんとなく、レズビアンの方が一定数いるのかな?と思ったが
共学でも案外同性を好きな方がいるもんだな。

 
私は高校時代にそう思った。
後に、別の友達からレズビアンであることも打ち明けられた。
私が知らないだけで、他にもセクシャルマイノリティの方もいたのだろう。

 
 
私が高校生の頃、性同一性障害が話題になった。

ちょうどそのタイミングに合わせたように
3年B組金八先生で、主人公の鶴本直(上戸彩)が性同一性障害だった。FtM役である。
FtMとは、生まれた時の体の性は女だが、心の性は男……の方を指す。
鶴本直がカミングアウトする前…初回放送から
私は鶴本直が性同一性障害ではないか、と思っていた。

鶴本直といったら、上戸彩だし
上戸彩といったら、鶴本直だった。

上戸彩が爆発的に有名になったのは金八先生で
ショートカットでクールな一匹狼役を熱演した上戸彩は
最初、そのイメージからの脱却が大変だったようだ。

最初は髪を伸ばして女性らしい上戸彩を見れば見るほど違和感を感じたほど
鶴本直役は上戸彩にハマり役だった。

 
 
性同一性障害…特にFtMは鶴本直の印象が強かった頃
私は大学で、FtMの人と出会った。

打ち明けられる前から、違和感はあった。
女性の体だし、戸籍は女性なのだろうが
その方を女性として扱うのは、初めから違和感があった。

FtMだと打ち明けたのは、私が初めてだという。

 
私は「う~む…。」と唸った。

高校時代にバイだと打ち明けた方々も、生まれて初めてカミングアウトしたのは私だというが
みんななんでまた最初に私にカミングアウトするのだろうか。

もし信頼された上でのカミングアウトなら、ありがたいし、それに応えたい。

 
 
私はとりあえず大学の図書館に行き、虎井まさ衛さんの本を片っ端から借りて読んだ。

虎井まさ衛さんはFtMの方で、本をたくさん出版し、講演も行っていた。
鶴本直のモデルにもなっているという。
なるほど、本を読むと、鶴本直がとった言動を虎井さんも行っていた。

 
芥川龍之介の「奉教人の死」も読んだ。
性同一性障害を扱った作品と聞いたからだ。

 
 
私は虎井さんの本を読んでいくうちに、知識だけは増えていった。

MtF(生まれた時の体の性は男だが、心の性は女)とか

トランスジェンダー(生まれた時の性と自分が思う性(性自認)が合わない人)とか

セクシャルマイノリティ(何らかの意味合いで性の違和感を感じていたりと、多数派の人達と異なる性、性意識、性自認、性嗜好を持つ少数派の人達の総称)とか

単語だけは増えていった。

 
 
だけど私は、肝心な友達の心を理解し、寄り添えていたかというと、傷つけてばかりだった。

いつも男性らしい格好…というか、中性的な格好………女性らしからぬ格好をしているFtMの友達が、ある日いきなり、ガーリーな服を着てきた。
周りの友達は「かわいい!」と褒めたたえていた。
私は頭の中が混乱した。

 
正直、違和感があった。
全然、似合っていなかった。
女装しているとしか思えなかった。

 
だけど、私はそれを言えなかった。
真意が分からなかった。
何を言っても傷つけそうで怖かった。

のちに、「ヤケクソで女装した。女になれるか試した。」と言っていた。 

 
スカートをはいて、誘われるままに男性とデートしたりもしていた。
「無理はやめときなよ…。」と言ったし、思ったが
「“女”を求められて吐き気がする。」と、デートした後に友達は荒れて私に八つ当たりした。

 
 
私は友達に聞いて知ったが
性別というのは、100パーセントではないらしい。

人によっては、今日は男性寄りの性だな、とか、今日は女性寄りの性だな、とか、中性の日だな、とか日によって揺れ動くらしいのだ。

私には未知の世界だった。

 
私は男は男、女は女で
FtMの人は心が男で
MtFの人は心が女で
揺るぎないものだと思っていた。

 
 
だからセクシャルマイノリティの人によっては、自分の性や性自認が日替わりや期間で揺れるなんて
考えたこともなかった。

 
「アンケートなんかの性別の欄にさ、男・女のどちらかに○をつけるってあるじゃん?私は真ん中の・に○をつけたい。
性別欄にその他があればいいのに。世の中は男と女の二種類だけじゃないのに。」

 
「トイレが不快だ。男と女にトイレを分けたがる。多目的トイレはいい。誰が使ってもいいトイレだから。もし空いていたらそこを使う。」

 
「FtMみんなが性適合手術をしたり、戸籍や名前を変えたいわけじゃない。リスクもあるしね。
ただ、女として見られたり、女役割が嫌だし、生理になると女だって思い知らされるようで死にたくなる。」

 
友達はそんなことを言っていた。

 
私は困惑した。

 
私は今まで、男は男と、女は女としか思わずに生きてきたし、接してきた。

だけど、FtMの人を男として扱う……のが正しいか分からなかった。
生まれつき男性の体を持ち、心を持った人と
生まれつき女性の体を持ち、心は男性の人を
同一にはできなかった。

FtMはFtM…と、私は受け入れていた。

だが、個人差がある。
性の波がある。
男性寄りの日と女性寄りの日と中性の日があるとなると
どう接したらいいかが分からなかった。

 
その人をその人らしく受け入れるのが前提なのだろうが
ヤケクソでやっているのか
本心でやっているのかが
イマイチ私には掴めず
行動や言葉が線に繋がらず、点がばらけている感じで
分かるようで、分からなかった。

 
多分それは本人さえも分からず
様々な試しをして、自分とは何者かを確かめていたので
横にいる私は更にこんがらがったのだろう。

 
友「私はFtMじゃなくて、Xジェンダーかもしれないな。」 

私「Xジェンダー?」

 
Xジェンダーとは、男女どちらの性にも当てはまらない方らしい。
両性であったり、無性であったり、中性であったりするらしい。
性同一性障害と比べたら、知名度はまだまだ低い。

 
なるほど、確かにどちらかというと、私もそれがしっくり来た。
おそらく友達はFtMではなく、Xジェンダーなのだと思った。

 
 
実際、性同一性障害はこういったケースもあるため、精神科医に診断を受けることが大変大切である。

幼少期の体験(家庭環境)から、性役割の押しつけが嫌で男や女役割が嫌なだけの方もいるし
性嗜好(恋愛対象)が同性だから性同一性障害と思い込む方もいたし
思春期故の様々な思いから、異性への強い憧れがあり、自身を性同一性障害と思い込む……
といったこともあるようだ。

診断を受けるまでは性同一性障害と思っていたが
実は違う、というケースも多いらしかった。

 
だからホルモン注射をする前に、診断や診察は丁寧に行うらしいし
年齢制限もある。
肉体面でもそうだが、気持ちの定まりを見届ける意味合いもあるようだ。

ホルモン注射の影響はとても大きい。

 
友達が言ったように、性同一性障害の人も色々で
戸籍を変える方もいれば
性適合手術をする方もいれば
ホルモン注射だけする方もいれば
それらをやらない選択をする方もいる。
診断を受けていない人もいる。

戸籍変更や手術をしない自分は性同一性障害ではないのじゃないか…
と思う方もいるし
逆に、そう思う戸籍変更や手術を済ませた方もいるらしいが
あくまで、その人がどう思い、どう生きるかは自由だ。

 
「多分、私はAセクシャルでもある。」

と、友達は打ち明けた。 
私はまたしても知らない用語だった。

 
Aセクシャルとは、他者に恋愛感情や性的欲求を感じない、もしくはほぼ感じない人のことを言うらしい。

 
「性と性自認と性嗜好は別だからな。混合するなよ。」

 
私は友達にそう言われたことがある。
肝に銘じておこう、と思った。

男性が女性を、女性が男性を愛するとは限らないように 
性同一性障害の方も、性嗜好(恋愛対象)は同性も異性もありえる。
Xジェンダーの方もいるかもしれない。

 
そして、世の中にはAセクシャルの方もいる。

もしかしたら今、未婚の方の中には
そういった方も多いのかもしれない。

 
私の友達も、半分が既婚で半分が未婚者だが
もしかしたら年齢=恋人がいない人はAセクシャルなのかもしれない。

まぁあえて私から聞くことはない。
打ち明けられたら聞くが、あえて聞くことはない。
友達は友達で変わらない。
 
 
もしも私が大学時代に友達に会わなかったら、ここまで性について考えたり、学ぼうとはしなかっただろう。
縁とは不思議だ。

後に、新井祥さんという半陰陽の漫画家さんがエッセイ漫画を出版し
今度は半陰陽について私は関心を持ち、少しずつ知ることになる。

 
性は多様だ。
性嗜好も。性自認も。

 
 
男だとか女だとか、私はかつて世界はそれだけだと思っていた。

そんな風に、世界を男と女でしか考えない世の中であればあるほど
セクシャルマイノリティの人々は自分の本音を隠し
ヒッソリとバレないように生きているのだろう。
場合によってはその生きにくさに苦しみ
自傷行為や自殺に至るのだろう。

 
 
私が大学時代よりも
LGBT(QA)という言葉は浸透し
世の中は少しずつ変わってきた。

以前は性適合手術といったら海外だったが
国内でも手術ができる場所が増えてきた。 


制服が選べる学校があったり
性同一性障害の方が女子大に通えるようになったり
同性婚も認められる場所が増えてきた。

 
それでもまだまだ足りないだろうし
都心部が動き出しただけで
地方はまだまだ差別的な動きや対応は多いだろう。

世界は少しずつ少しずつ
セクシャルマイノリティの方にも生きやすい世の中に変わりつつあるが
本当に一歩、また一歩と少しずつ動いている現状だ。
 
  
 
 
私が大学で臨床心理学を専攻していたことも関係しているのだろうが
周りにLGBT(QA)の方はたくさんいた。

同性の恋人と同棲している人もいるし
戸籍変更や性適合手術をした人もいる。

 
大学時代に、FtMかな?と内心思っていた方複数が
やがてお金を貯めて手術し、戸籍変更をした。

その人達は家族にも恋人にも会社にもカミングアウトし
今は男性として生活している。

 
大学卒業後に再会した時、その人達は男性になっていたが
友情は特に変わらなかった。
そんなもんである。

 
 
 
 
 
今から、5年前くらいだろうか。

「初めての彼女がポリアモリーだった。」と友達から打ち明けられた。

 
ポリアモリー??

 
私はまたしても知らない用語に遭遇し、調べてみた。

ポリアモリーとは、恋人同意の元、複数人の恋人を同時に同様に愛したり、複数人の人を同時に愛せる人を指すらしい。

 
私「一夫多妻制みたいなもの?」

 
友達「違う違う。一夫多妻制は、本妻と本妻以外で地位や扱いが違うし、妻側は旦那さん以外と関係を持つのはタブーでしょ?」

 
私「あ、そっか。前提の、【恋人同意の元】【同時に同様に】が成り立たないか。

じゃあポリアモリー同士で付き合うと…」

 
友達「お互いに合意の元、複数人の恋人がそれぞれいる形になる。」

 
私「でも、あなたはポリアモリーではなかったんでしょ?そうなると…」

 
友達「俺公認で、彼女には他にも彼氏がいた。」

 
私「辛くなかったの?初カノでしょ?」

 
友達「初カノがポリアモリーだと、逆にそれが基準でもあったからね。」

  
 
……世界は広いな、と思った。

性は色々だし
関係も色々だし
価値観も色々だ。

 
 
 
私の別の友達は女性で、恋愛感情を男性に抱くが、同性から告白されたこともあり、かつて相談を受けた。
その友達から、別の恋バナをされた。

友達「実はさ……この前、告白されて。」

 
私「ほう。どんな人?」

 
友達「その人、自分はポリアモリーだって言うんだけど、ポリアモリーって…知ってる?ともか、性に詳しいじゃん。」

 
私「ちょうど三ヶ月前くらいに、友達から聞いて知った。調べてみたから、多少は知ってるよ。」

 
友達「さすがだ。知ってるんだね。」

 
私「いや~知ったばかりだし、ご本人には会ったことがないがね。」

 
 
世の中には知らないことがたくさんある。
知れば世界が変わることもたくさんある。
知っていれば、手を差し伸べられることもたくさんある。

 
私はまだまだ無知であり、勉強中の身だし
不躾な質問や失礼極まりない発言も当事者やその関係者にしてしまっていることもあると思う。

それでもまだまだ、諦めたくない。

これからも多様な性について学んでいきたいし
知ることをやめたくない。

 
知識を得ることや感情を分かち合うことで
私は友達に寄り添えるだろう。

友達や身近な人を思いやることは
やがて第三者を思いやることにも繋がっていくと思う。

 
そういった繋がりがどんどん増えて

 
みんなにとって暮らしやすい世の中になっていったら
それが一番いいと思う。

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