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出禁になった背景

休みの日、利用者Aさんはとあるお店に一人で出掛けていたらしい。

そのお店に買い物に行くのではなく
どうやらお気に入りの店員さん目当てで遊びに行き
その店員さんにとって嫌なことをしたらしく
出禁の通知を渡されたらしい。

その通知書を部屋で見つけた保護者はお店と警察に行ったらしい。
警察にも通達したと書いてあったからだ。

Aさんには知的障害と聴覚障害がある。
親しみを感じる異性には笑顔で何度も手を振ったり、追いかけたり、体を一部触ったりする。
施設内でもそうだし、外出先でもそんな姿を見掛けた。

色々なお店にお気に入りの店員さんがいると聞いていたし
Aさんを知っている側からしたら驚くようなことではない。

おそらく、不快な思いをした店員及び注意した店員は
「やめてください。」とか口頭で注意したのだろう。
だけど、聴覚障害故に聞き取れなかった。

通知書はどうせ漢字がたくさん使われていたのだろう。
Aさんは漢字が読めないから通知書を理解できなかった。
おそらく、保護者に怒られるから通知書を見せなかったのではなく
通知書を理解できなかった。

普段ならヘルプマークをカバンにつけているから
その利用者に障害があることや保護者の連絡先が分かったろうが
休日に一人で出掛けていたのでカバンをあえて持っていかなかったのだろう。

スマホを持っていない人だ。
お店側も困っただろう。
重度の利用者なら職員か保護者が近くにいるはずなのにいないから
単独では変な人扱いされただろう。

ウィンドーショッピングの予定だったからサイフを持っていかなかったか
もしくは、お金の使いすぎを予防するために保護者がサイフを渡さなかったのかもしれない。

それがお店側からは冷やかしに見えたのだろう。

場合によっては警察に連れて行かれたかもしれない。
まだ通知書くらいだったのはラッキーだっただろう。

好意的な異性に笑顔で手を振ったり、関わりたくなるのは至って普通のことなのに
普通の欲求なのに
禁止にしたり、制限がかかる。

保護者はAさんにそのお店に行くことを禁じた。

それは仕方のないことだ。
店側や店員さん側からしたらかなり困惑したのだろう。
一回や二回の出来事じゃなかったはずだ。
私が逆の立場でも、仕事上の関わりでは無碍にできないし、やはり困惑したに違いない。

どちら側の気持ちも立場も分かる。
悪気があるないの問題ではない。

仕方ない。
だが、切ない。

こういうことはよくある。

以前前の職場でこんな事例があった。

利用者Bさんは休日に一人で公園に行くのが好きだった。

その公園ではよくBさんに話しかけてくれる見知らぬ方がいて
休日は話したりしていたらしい。

本人からの話で知っているだけで保護者もその方に会ったことがなかったらしい。

利用者Cさんはとあるお店に好意を抱いた店員さんがいて
その人の出勤日にお店に行っては
その人のレジに並んだらしい。

Cさんは好きな人へ話す時や好きなことを話す時、苦情時や主張時に一方的にまくしたてるように話をしがちだ。

おそらく店員さんにも、好意から話しかけたり、レジに並び続けたのだろう。

だが、しばらくすると店長から出禁を言い渡されたらしい。

悪気がないどころか
好意から善意で話しかけたCさんにとってはその出来事はトラウマになるほどショックだった。

何年経っても引きずり
フラッシュバックしては叫んだり、職員にひたすらに訴えた。なんてひどいことだと。

だが、施設内でも女性職員への接し方には一部課題があり、内心困惑していたり、かなり気を使っていたくらいだったので
店員さんや店長さんの対応は分からないでもなかった。

世の中には出禁になる人がいる。

もしかしたらその人は近くに職員や保護者がいなくても
何らかのこだわりを持つ障害者で
配慮がないと、出禁や迷惑行為の真意は理解できないかもしれない。
配慮があっても、理解できないかもしれない。

その一方でBさんのように
見ず知らずの方があたたかく見守ってくれるケースもある。

実際Aさんも他店のお気に入りの店員さんの中には障害を理解し
話しかけたり、優しく接してくれる人もいるという。

世の中には色々な人がいる。
難しい問題だ。

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