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コンペイ党宣言

岡本太郎の本『私の現代芸術』に「コンペイ党宣言」という章がある。
丸くなるな。金平糖のように尖り続けろ。そんな彼の人生論が綴られている。

人は誰でも大人になるにつれて物事の要領を掴み始める。
日常生活の動作一つにしても、職場の人との会話にしても、なんとなくうまい具合の返しだったり、アクションを学ぶ。岡本太郎ほどの奇才であってしても、彼の本業である絵画においてその要領の良さは出てしまうらしい。筆の使い方、絵の具のノリ具合。それらを学ぶうちにどことなく上手な絵が描けてしまうようになる。人はそれを成長と呼ぶが、彼にしてみればそれは角が落ちて丸くなってしまっている、ある意味退化もしくは停滞しているだけなのだ。

丸くなるな。角を立てろ。そう自分に戒めんばかりに、彼は自分の目に止まりやすい場所に金平糖の写真をおいて自分の純粋さと不器用さを律しているのだ。

これを読んで不思議だと痛感する。
最近子供と関わる機会が多いが、彼らは他者との共存だったり協調性の確保に多くのエネルギーと時間を使う。自分勝手なことを悪気なく言ってしまったり、何かに熱中してしまって周りの動きを全く見れなかったり。それに接する度に、大人はその問題点を彼らのためを思って治そうとする。そして子供らは、嫌だ嫌だと駄々をこねながら、それを必死に正そうとするのだ。
それが大人になってみてはどうだろうか。子供とは逆に、自分の意見を貫き通す、周りに嫌われてでもいいから何かを行うことに異常なほどの体力を使う。まさに削られてしまった凹凸を無理やり呼び覚ますかの如く、自分の心を奮起させねばならないのだ。

人間、金平糖のように凸凹しているべきなのはわかっている。でもなかなか難しい。そんなに尖っていたら摩擦が起きすぎて周りに迷惑が…なんて考えてしまうから。嗚呼、いつからそんなことを考えてしまうようになったのか。でも考えてしまうのだ。

岡本太郎は章の中でこんなことを書いている。

人間は、満員電車でヤスリにかけられて、その後会社で上司に怒られヤスリにかけられて、少しの酒で凹凸を持った気を取り戻す。

要領なんか全部捨てて、わからないことに対して真正面から必死にもがくことができれば、もう少しは人間らしくなれるんじゃないかなんて岡本さんに教えてもらった。

もっと角を持って、もっと不器用に、もっと素直に。
そう生きるのは反吐が出るほど難しい。

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