コーチングのゴールと『12の物語』⑦【CBC】
12の物語も残り4つになりました。
今回は復習からスタートしましょう。⑦⑧⑨は関連する物語です。
クライアントの話をきいていると、自分を批判する自分が出てくることがあります。
「自分には無理だ」「やらないほうがいい」「私には価値がない」「どうせできないに決まってる」「そんなことしても意味がない」
みたいな声ですね。
その場合、まずは
この自分は何を教えてくれてるんだろう?
とかんがえてみるわけです。
これは⑦もう一人の自分は◯◯を教えてくれる存在だった!という結論に続く道ですね。
いろんなやり方がありますが、簡単なのは目的を知ろうとしてみることです。
新しい仕事にチャレンジしようとしたときに、自分の中で「自分には無理だ」と声高に主張する自分がいるとしたら、それを言う目的は何だろう?と考えてみるのです。目的は「〜を手にいれるため」「〜を避けるため」のどちらかですから
・誰かに助けてもらうため
・安心な状況で生きるため
・失敗して傷つかないため
・できない自分に気づいて落ち込まないため
・やりすぎで体調が悪くなるのを避けるため
・家族の時間がなくなるのを防ぐため
などの目的が出てくるわけです。目的が出てきたら
・誰かに助けてもらうため→「誰かに助けてもらわなくて大丈夫?」と教えてくれてる
・安心な状況で生きるため→「どうやったら新しい状況でも安全にやれるか考えてね」と教えてくれてる
・失敗して傷つかないため→「傷つかないやり方を考えてね」と教えてくれてる
・できない自分に気づいて落ち込まないため→「うまくいかなくても落ち込まないように気をつけてね」と教えてくれてる
・やりすぎで体調が悪くなるのを避けるため→「体調に配慮して、無理し過ぎないでね」と教えてくれてる
・家族の時間がなくなるのを防ぐため→「家族との時間も大切だよ」と教えてくれてる
などと考えてみるわけです。そして教えには2種類あります
・今まさに必要な教え
・過去は大切だった教え
例えば「家族の時間も大切」とか「無理しすぎるな」いう教えはクライアントにとって今まさに必要な教えだったり、「傷つかないやり方を考えよう」という教えは、過去は大切だった教えだったりするわけです
脳は過去に体験した苦痛を回避するようにプログラムされているわけです。だから「子ども時代に新しいことにチャレンジしてうまくいかず、親から情けないやつだと言われて傷ついた」みたいな出来事があると「チャレンジ→失敗→バカにされる→傷つく→避けるべき」というプログラムを作ってしまうのです。
そしてこの「チャレンジ→避けるべき」というプログラムを大人になっても使い続け、避けるために「自分には無理」とかの言葉を使っているというわけです。
でもそのことに気づいてみると、確かに昔はそういうことあったかもしれないけど、今の仕事では予定通りの結果がでなくても「バカにされる→傷つく」ということは起こらない。だからそこは気にしなくてもいい。と考えられるみたいなことが起こったりします。
それが過去は大切だった教え(でも今は大丈夫)というものです。無意識は過去に体験した苦痛をさけるために動くなかで、今現在は考慮しなくてもいい教えを出してくることがあるのです。
それに気づいたら「そっか。あの時みたいにならないように教えてくれてたんだね。ありがとう。でも大丈夫だよ。だって今のチームにはバカにしてくるような人はいないから」みたいに自分とコミュニケーションをとればいいのです。
過去の出来事の意味づけを見直す
上のようなこんな感じで済めばいいのですが、クライアントの「私には無理」とか「やらない方がいい」がとても強い場合は、過去の出来事に遡って再解釈するというパターンがでてきます
⑧あの時なりによくやっていた。今は別のこともできる!というゴールへの道ですね
アドラー心理学では「非建設的行動にも建設的な目的がある」と前提します。NLPでは「人間は基本的に善意の存在だ」とか「人はその時々の最善に向けて動いている」などと前提します。
僕は2005年にコーチングと出会った時、同時にアドラー心理学やNLPとも出会っているので、そのような考え方を採用しています。
人は何か失敗をしたり、それで人を傷つけたり落胆させたりすることがあります。
そうすると、それを避けるために、自分は無能であるから行動しないようにしようと決断してしまうことがあるのです。
例えて言うなら、車で事故を起こしたら、「もう二度と車に乗らない」と決断するようなものですね。車に乗らないでも幸せに生きられるなら良いですが、それが難しいなら「しっかりと安全に配慮して車にのる」と決断を改めればいいのです。決断を改めることを、再決断と呼ぶこともあります。
再決断にもいろいろなパターンがあるのですが、その中でもシンプル簡単でおすすめなのが、「私には無理」などの思い込みができた最初の出来事に戻って、その出来事を再解釈するというやり方です。そしてそのとき⑧あの時なりによくやっていた。今は別のこともできる!と再解釈する方向にむかって進めばいいということなのです。
事例は前回の記事でご確認ください
やっぱり過去の自分を許せない
⑧あの時なりによくやっていた。今は別のこともできる!の方向で再解釈できないか検討したけど、やっぱりあのときの自分は許せない、ダメだ。となってしまうケースもあります。
そうなったら次の落とし所は
⑨してしまったことは受け入れ、未来に活かすしかない!
です。
具体的な事例では以下のものがこのパターンですね
人は過去の自分の行動に罪悪感を感じ、そこから「自分は何もしてはいけない」「こんな私は幸せになってはいけない」などと決めてしまうことがあります。
反省するだけならいいと思いますが、罪悪感によって、自分を過度に制限し続けることや罰し続けることに果たして意味があるのでしょうか。
上の事例のクライアントはカウンセラーになりたいと思っていましたが、子どもの頃に自分がペットを叩いてしまったことを思い出し、自分は許されるべきでない存在だと悩んでいました。
このケースではその頃のクライアント自身が虐待を受けており、その辛さから、近づいてくる愛犬に、少し離れていて欲しくて、軽く叩いてしまったに過ぎませんでした。だから罪悪感など感じる必要はないように僕は思いました。けれどクライアントはその罪悪感を手放しませんでした。
だから僕は問いかけました
「あなたが罪悪感を持ち続けたら、ワンちゃんに幸せは訪れますか?ワンちゃんを叩いてしまったあの時の子どもが救われますか?」
もちろん答えはNOです。そこで僕は提案しました。
「では、罪悪感を見るかわりに罪を見ましょう。そして今後はもうそんなことが起こらないように、少しでも自分にできることを考えませんか?」
相手の目をしっかりと見据えて、それなりに強い調子で問いかけたと思います。
漠然と罪悪感を持つことでは誰も幸せにならないのです。だからもしそこに罪があるなら、それと向き合い、原状回復や再発防止のための行動をしたほうが良いのです。そして可能なら被害者と話し合い、受け入れてもらって前に進んで欲しいと思うのです。
彼女は決断しました
「児童養護施設のボランティアに行く」
と。苦しい思いをしている子どもたちに寄り添いたい。そうしたら不幸の連鎖「子供が虐待される→(ペットなどを)虐待してしまう」を少しでも断ち切ることができるかもしれないから、と。
繰り返しになりますが、僕個人としてはそこまでする必要はないと思っていました。でも本人がそれを選択したので、その選択を尊重しました。
罪悪感を持ち続けて、何も行動ができないよりも、子どもたちに寄り添いながら、未来の幸せに向けて関わるほうが、子どもたちはもちろん、クライアント本人にとっても良いからです。
そして、一定の時がすぎたときに、もう一度一緒に考えてみたら、そのときにはクライアントの考えが変わっていることもあるわけです。
大変な状態の子どもたちに触れていると「自分も大変だったんだな」と思うわけですし、子どものピュアさに触れたら「自分にもこんなピュアな部分もあるな」と思うわけです。そして子どもたちと親しくなり、その子たちの幸せを強く願うなら、かつて同じような状況だった子どもの自分の幸せを許すようになるかもしれないのです。そして何よりも子どもたちは、彼女の幸せな人生を願ってくれるでしょう
時間が癒してくれる時間薬
人との触れ合いが癒しをくれる人薬
というものかもしれません。人生一発アウトでは厳し過ぎます。その厳しさが癒されて、再び自他の幸せのために生きていけるとよいと思います。
アドラー心理学に「3つの勇気」という教えがあります
・不完全である勇気
・失敗する勇気
・過ちを認める勇気
人生を生きるためにはこの3つの勇気が必要だと言うのです。
・不完全である勇気
人は不完全な存在です。だからそれを受け入れて生きていく勇気が必要です。人は不完全だからこそ助け合えるのです。
・失敗する勇気
失敗こそが最良の教師です。失敗しないのは想定の範囲内にいるからです。学ぼう成長しようと思えば、私たちは失敗から学ぶしかないのです。そのことに勇気を持ちたいわけです
・過ちを認める勇気
失敗によって、問題を起こした時や人に迷惑をかけた時には、過ちを認める勇気が必要です。過ちを認めて①原状回復②再発防止③謝罪をします。そうして次に進むのです
彼女が養護施設に通ったのは、彼女なりの「再発防止策」でもあったわけですね。
ということで、今回は
⑦もう一人の自分は◯◯を教えてくれる存在だった!
⑧あの時なりによくやっていた。今は別のこともできる!
⑨してしまったことは受け入れ、未来に活かすしかない!
の3つの物語の解説でした。⑦や⑧で止まらず⑨にいく場合はクライアントと一緒に再発防止のための行動を見つけて、その行動をとることを勇気づけることになります。
その場合も一生にわたって罪を償いためだけに生きる必要はないはずなので、クライアント自身がOKを出せるタイミングや、被害者がいるなら被害者が受け入れてくれたり許してくれるタイミングを見計らって、次のステージに進むことも検討してください。
次回は、対人関係の問題編です。
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