コーチングのゴールと『12の物語』⑤【CBC】

コーチングカウンセリングの落とし所集『12の物語』。今日からカウンセリング編です

12の物語(2)

⑦もう一人の自分は◯◯を教えてくれる存在だった!

コーチングやカウンセリングをしていると、

もう一人の自分に手を焼いているクライアントによく出会います

「自分はなんで決めたのに動けないんだろう」
「どうしてこんなふうに考えてしまうんだろう」
「なんでいつもこんな風にイライラするんだ!」
「もっと機嫌良くいたいのに」
「私はどうしてNOと言えないんだろう」
「食べ過ぎをやめたいのに、やめられない」
「自己否定をやめたい」

などなど。

自分の感情、思考、行動パターンを持て余したり、手を焼いたしているのです。自分でもなんとかしたいと思っていけど、何ともならない。

コーチングだと、前回のセッションでコーチと決めた行動が取れなかった。それを「なんとかしたい」とか「なんとかしなきゃ」って思ったりする。みたいなこともありがちですね。

カウンセリングだと人生で繰り返し起こる「動けない」「やめられない」がテーマになることもよくありますね。

こんなときに、目指すと良いのが

⑦もう一人の自分は◯◯を教えてくれる存在だった!

というゴールなのです。僕はそこを目指してコーチングカウンセリングをしています。

グレムリン

まったく違う考え方もあります。

「変わることを邪魔をしている自分は乗り越えるべき存在である。だから、その自分を変える方法を見つけるのがよい」

もちろん、そんな考え方も成立すると思います。

僕がコーチングを学び始めたころ、グレムリンという概念を知りました。

グレムリン=自分の中にいる、自分の行動を妨げる存在。否定的な言葉を投げかけてきたり、動こうとしない部分。サボタージュと呼ばれたりもする

たしかにそんな自分が出てくるとかってありますのね。それに名前をつけて、意識化して、対応を考えるというのも良いと思います。

でも僕はグレムリンという名前は嫌だなと思ったんですよね。自分と敵対する存在であるかのようなニュアンス。サボタージュという呼び方もそうです。。。

そして、いったんグレムリンとかサボタージュと呼んでしまうと、仲良くなるとか、理解協力し合うより、どこかに追いやったり変えたりしたくなります。


僕は当時からアドラー心理学をベースにコーチングをしているので、

非建設的な行動にも、建設的な目的があるという前提で考えてみる

というスタンスを取りたいと思っているわけです。

で、グレムリンについて調べてみました。Wikipediaから引用してみますね

グレムリン(Gremlin)はイギリスに伝わる妖精の一種。機械に悪戯をする妖精とされ、ノームやゴブリンのと似た性質を持つ。かつては、ベンジャミン・フランクリンがライデン瓶実験を行う際に凧あげを手伝ったり、ヘクター・オクライドというスコットランドのグレムリンがジェームズ・ワットに対して、薬缶の蓋を蒸気で動かすことによって蒸気機関を発想させたりと、人間に発明の手がかりを与え、職人達の手引きをしていたが、人間が彼らに敬意や感謝をせずにないがしろにしたため、次第に人間を嫌って悪さをするようになった。

Wikipediaよりグレムリン

スッキリしました(笑)。グレムリンは善意の存在だったけれど、ないがしろにされていたため、嫌がらせをするようになったと。。。

これもありがちな話ですね。私たちが相手を悪者にすると、相手はますます反発してくる。。。

しかももう一人の自分は、嫌がらせをしているわけでもありません。ただ、何かを避けるために、もしくは何かを守るために「大丈夫?」と言っているだけの存在だと思うのです


変容の逆説的理論

コーチングの重要なルーツである人間性心理学には、変容の逆説的理論というものがあります。


変容の逆説的理論
=人は自分でない何者かになろうとする時ではなく、ありのままの自分を受け入れたときに変容する、という考え方

変えようとすると、変わらない。受け入れた時に変容が始まる。という観察事実が逆説的だったということですね

コーチングカウンセリングの格言に

変えようとするな、知ろうとせよ

カール・ロジャーズ

というものがあります。これも同じことを言ってますね。そして私たちコーチカウンセラーの相手を変えようとする姿勢を戒めてくれているのだと思います

脳科学的にも、相手を変えようとする態度は、扁桃体を警戒させることで、大脳新皮質をつかうことを妨げるのがわかっています。

闘争逃走反応などと言われますが、扁桃体が不安や恐怖を感じると、戦ったり逃げたりというシンプルな解決法を選択しがちになります

コーチの「相手を変えよう」という姿勢は、善意に基づくものであるとは言え、クライアントの脳には警戒心を起こして、抵抗や回避を起こしてしまうのです

自分とのコミュニケーション

これはクライアントの「自分とのコミュニケーション」においても同じです。変えようとされると人は抵抗するので、かえってそのエネルギーが強まり、そこに巻き込まれていくこともあります

だから第3世代認知行動療法の一つACT(アクセプタンスコミットメントセラピー)では、感情や思考に巻き込まれないように(フュージョンしないように)しようと提案しています。

自分の中にある、声(思考)や身体の反応(感情など)に巻き込まれないようにしようというのです。それらを変えようとすると、かえって抵抗されるようになるからです。

なので、
Acceptance 自分の感情や思考をそのまま認め、操作しようとしない
Commitment 価値観に基づいた行動に専心する

を推奨するのです。

GROWで言えば、ゴールは価値観に基づいているはずなので、そこに向かう行動を取ることは、ここでいうcommitmentに相当します。

そのとき、これを邪魔する声(思考)や身体反応(感情)などを変えようとする代わりに、単にその思考や感情があることを受け入れて、そのままにさせておく。

比喩で言えば、泣いている子どもを受け止め、でも変えようとせずに、そのとなりで粛々と仕事をするみたいなイメージですね。

これは、自分の感情や思考を変えようとしない、でも深く知ろうともしない、ただ受け入れてそこに置いておくだけ。そして目標に向かって行動をとることを支援するというやり方ですね。

認知行動療法は、エビデンスを重視していますから、変えようとしないことには、一定の効果があると言ってよいと思います。ですからこのようなやり方を採用するのも良いと思います。

もう一人の自分の目的を知ろうとする理由

では、なぜに僕たちは、もう一人の自分の目的を知りたいと思うのでしょうか?

それは、一見、邪魔者やブレーキに見えるもう一人の自分が、実は重要なメッセージを持っていることもあるからです。

「もっと仕事をバリバリやりたい。でも動けない自分がいる」などのケースで、動かない自分の目的を探っていくと

・身体を壊すことをさけている
・家族との時間を大切にしようとしている
・自分らしさやペースを守ろうとしている
・本当にやりたい◯◯をやれなくならないようにしている

などのことに気づくことがあります

本人が「もっとやるべき」にとらわれていると、悪者に見えることもありますが、実は大切なメッセージをもっているかもしれないのです。

もちろん

・きずつきたくない
・失敗したくない
・ばかにされたくない
・怖い思いをしたくない

というような目的で止めている場合も多々あります。その場合でも、過去の体験で嫌な思い、怖い思いをした自分が「大丈夫?」って確認してくれているに過ぎません。

だから、そのことを受け止め、感謝し、その「もう一人の自分」に安心してもらえるような関わりをしたほうがよいと思うのです。

また例え話で考えてみましょう。

あなたが二人チームで仕事をしているとしましょう。あなたの相方は「やめたほうがいいよ」「そんなの意味ないよ」が口癖だとします。その場合、無理やり黙らせよう、いうことをきかせようとしてうまくいくでしょうか?

相手に「過去に何があったからそう思うのか?」「避けたいことは何か?」「守りたいものは何か?」「今回は、過去とは何が違いそうか?」「どんなやり方なら協力してくれるか?」などをきいてわかり合おうとしたら何が起こると思いますか?

僕たちはこのように関わることが、相手に対して敬意をもって関わることだとかんがえています。そしてもしそうだとしたら、自分の内側にいる自分に対しても、そのように接してみたらどうだろうと思うのです。

もう一人の自分を大切な存在と見做し、その意見をきき、協力し合える方法を探す。そのことが自分を大切にしながら生きていくことにつながると思います。

具体的には何をする?

もう一人の自分とポジションチェンジをするのがわかりやすくておすすめです。

実際のケースを見たかったら、以下の記事のものなどがオススメです

このようなセッションを実施していく上で、最大のポイントは「平等な肩入れ」をすることです。平等な肩入れというのは、家族療法家の人たちの重要な指針です。

クライアントの中に二人の自分がいる場合に

どちらかの自分に肩入れするのではなく、
単に中立に関わるのでもなく、

二人ともにしっかり肩入れをするのです。二人それぞれが大切な存在で、重要な目的をもっていると考えるのです。そしてそれを知りたいと思って関わるわけです。

僕たちがそうやってクライアントの二側面それぞれを大切にするからこそ、クライアントも自分の二側面を大切にするようになります。だから双方の理解が深まり、これまでとは違う形で、動いていけるように変化変容していくわけです。

受け入れられ、理解されたからこそ、変容する。

変容の逆説的理論ですね。

このように関わっていくと、自分に邪魔をされなくなるどころか、大切なことを教えてくれ、自分が幸せに生きていくために助けてくれる味方になってくれるのです。

グレムリンが本来の姿にもどっていく。そう言ってもいいかも知れません。

ということで、今回はクライアントが内的葛藤で苦しんでいるときのゴールである

⑦もう一人の自分は◯◯を教えてくれる存在だった!

のご紹介でした。何をゴールにするかでコーチングカウンセリングは変わっていきますので、この考え方がいいなと思った方は、ぜひこのゴールに向かってコーチングをすすめてみてください。

つづく

僕たちと人生を変えるコーチングを探求したい方は↓








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