コーチングを使ってティーチングする

知らない。経験がない。とは何か?


ティーチングとコーチングは違います。

コーチングは引き出すコミュニケーションです。クライアントの中に答えがある。そんな前提で相手と関わるわけです。

コーチングの良さは

「相手の中に答えがある」

という前提でコミュニケーションを取ることで、相手(クライアント)が自分で考えたり、自分なりの仮説をひねり出すなどが起きやすくなることです。

あなたは分かるはずだよ!という前提で関わってもらえたら、自分で考えるしかありませんもんね。

そうすることで、安易に「わかりません」「教えてください」とならずに自分で考えるようになるのです。

だからアドラー心理学でも「教えない」ことを重視するのです。

とはいえ、答えがないことは教える/教わるしかない。そう思いますよね。

それはその通りなんですけど、果たしてどこまで教わる必要があるのでしょうか

初ストライダー

うちの息子が2歳のときです。キャンプ場に遊びに行ったら、ストライダー(ペダルのない自転車のようなもの)が置いてありました。

彼はストライダーに乗ったことはありません。YouTubeかなにかで、見たことはあるかも知れませんが、熱心に見て研究しているということもありません。

だから、ほとんど何も知らないのです。

でも、ストライダーを見たら跨ります。サドルがついているからでしょうね。

そして車輪がついて動くことも分かるので、足を動かして移動しようとするのです。

そうするとハンドルが連動していることも分かるので、転ばないように、行きたい方向に行けるように工夫を始めるのです。

「知識がない、経験がない」はずですが、彼にはできることもあるし、やりながら成長することもできるのです。何より一度やり始めたら、自分でやりたいことがどんどん出てきます。

僕が手助けしたのは、最初にサドルの高さを調整してあげたのと、「遊んでみたら?」と声をかけたことだけ。

あとは彼が何をやってても「いーねー」「面白いねー」などと声をかけていました。

これは明らかにティーチングではありませんね。相手が何も知らなくても、勝手に学んでいけると信じて、コーチングスタイルで関わっているのです。

コーチング=やりながら学んでもらう

なのです。

もちろん、
・ハンドルをしっかり握って
・右足大きく上げて、サドルをまたいで
・サドルに座って、しっかり前をみる
・肩の力を抜いて
・足を蹴り出して、前に進んでみよう
・ハンドルは曲がらないようにまっすぐ前に向けて

などと逐一教えて上げる事もできますし、
うまくできてない部分を一個一個フィードバックしてあげることもできます。

そうしたら効率的にポイントを学べるし、転んだりしにくくなるかも知れませんが、その分自分で考えることや、体験から学べるようになることは起こりにくいわけです。

さらに、いちいち指示されることでつまらなくなる場合もありますし、次はどうしたらいいの?と指示待ちの姿勢になることもありそうです

であれば、相手の状態に合わせて

ティーチングの内容は最小限にして可能な限りコーチングをするという発想がうまれるわけです。


体験学習サイクルとティーチング


体験学習サイクルと質問

この図は、僕がアドラー心理学をベースにつくった体験学習サイクルというものです。

使い方の基本編は以下をどうぞ

応用編は以下をどうぞ。かなり大切なこと(確認の質問)を書いてます

さて、僕のおすすめはティーチングも体験学習サイクルと組み合わせて行うことです。そうすることでどんどんティーチングがコーチングになり、相手が主体的に学んでいくことになります

ティーチングをコーチングで

具体的にどういうことかと言うと

最初の行動は教えるけれど、その後はコーチングをしてみる

のです。

例えば息子のストライダーの例ですと

僕「またがってみて」
息子「うん」
僕「どうしたら良さそう?」
息子「わからない」
僕「じゃあ足で押して、前に進んでみてよ」(ティーチング 行動の提案)
息子「(キックしながら進もうとする)」
僕「どう?」(結果)
息子「前にすすむ」
僕「いいね。どうしたい?」(目的/行動)
息子「もっと向こうに行きたい」
僕「おー。どうしたらよいかな」(行動)
息子「もっとキックする」
僕「いいね。どんな風にすると良いかな」(5W1H)
息子「強くキックする」

どうでしょう。教えるだけでなく

・できるだけ考えてもらう
・行動の結果何が起こっているか感じてもらう

などをするだけで、相手が自分ごととして取り組んでいく感じが伝わるでしょうか。
教えるのは最小限に、あとはコーチング的な関わりをしていくのです。


可能な限り質問で関わる

次の例です。コーチングをしてみたいという相手に、ほぼ質問だけで関わっている例をお見せしましょう。確認の質問を多用していますので、ちょっと複雑に見えるかも知れませんが、体験学習サイクルの質問をベースに関わっています。

相手「コーチングをしてみたいです」
僕「いいね。コーチングしたいっていうのは?」(確認の質問 具体化)
相手「まだよくわからないんですけど」
僕「うん。とはいえ分かっていることは?」(確認の質問 リソース)
相手「教えるのではなくて、相手に考えてもらうってことです」
僕「いいですね。相手に考えてもらいたい?」(確認)
相手「はい」
僕「それでどうなることを望んでるの?」(目的)
相手「積極的になってもらいたい」
僕「誰に?」(5W1H)
相手「チームメンバーに」
僕「チームメンバーに積極的になってもらいたい?」(確認)
相手「はい」
僕「積極的っていうのはどういうこと?」(確認の質問 具体化)
相手「提案をどんどんしてきてもらいたいです」
僕「例えば?」(確認の質問 具体化)
相手「来年度やりたいことなどを言ってきてくれると良いです」
僕「いいですね。ではそのためにはどうしたら良いと思いますか?」(行動)
相手「うーん。。。。」
僕「どんなアイデアでもいいですよ」
相手「あんまり言ってくれるのをイメージできなくて」
僕「ではストレートに『来年度やりたいことは何?』ときいてみたらどうですか」(ティーチング 行動の提案)
相手「ストレートにか。。。」
僕「きいたら、どうなると思いますか?」(予測)
相手「何か答えてくれるかも知れないけど」
僕「けど?」(確認の質問 逆接)
相手「答えてくれない人もいるかな」
僕「その人にはどうしたら良さそうですか」(行動)
相手「なんでもいいよ、って言ってみるとか」
僕「いいですね!他には」(確認の質問 網羅)
相手「うーん。例えばって言いながら、例を出してあげるとか」
僕「いいですね!あとは」(確認の質問 網羅)
相手「。。。。来週までに考えてきてって言う」
僕「どういうことですか?」(確認の質問 具体化)
相手「すぐ答えられなかったら、余裕をもって考えてもらう」
僕「いいですね。改めてどうすると良さそうですか?」(行動)
相手「気軽な感じで、何してみたいってきいてみるところから始めます」

というように、途中でティーチング(この場合はアイデア提供に近いですが)をしても、すぐに質問をしていくことで、自ら考えて結論を出してもらうわけです。


ティーチングをコーチングで

ということで、相手がよく分かってない領域の場合は教えてあげてからコーチングを始めましょう

最後に目的を教えるパターンと、行動を教えるパターン、それぞれの例をつけておきます

目的を教えるパターン
僕「コーチングの目的は、自らが望むゴールに向かって主体的に行動してもらうことです。だとしたら何から始めたら良さそうですか?」(行動)
相手「どんなゴールを望んでいるか確認することですか」
僕「ゴールを確認したら何が起こりそうですか?」(予測)
相手「ゴールを教えてくれます」
僕「そうしたら次はどうしますか」(行動)
相手「自分でできることを考えてもらいます」
僕「具体的には?」(確認の質問 具体化)
相手「何ができると思うかと問いかけます」

行動を教えるパターン
僕「まず相手に『どんな未来を望んでいますか』と質問してください」
相手「はい」
僕「何の役に立ちそうですか」(目的)
相手「相手が何を望んでいるか確認するためです」
僕「いいですね!他には?」(確認の質問 網羅)
相手「モチベーションをあげるため?」
僕「たしかに!あとは?」(確認の質問 網羅)
相手「うーん。主体的になってもらうため」
僕「いいですね。ではどのように質問すると良さそうですか」(5W1H)
相手「明るい感じですかね」
僕「どういうことですか?」
相手「明るい空気で、肯定的な感じできく良いと思います」
僕「そうしたらどうなりそうですか」(予測)
相手「前向きな感じで答えてくれると思います」
僕「いいですね。そうしたらその後は何をしてみたいですか?」(行動)
相手「どうやったら実現しそうかきいてみたいですね」
僕「なるほど!他のアイデアもありますか?」(確認の質問 網羅)
相手「実現可能性をきいてみるとか、かな」
僕「それをきくとどうなりそうですか」(予測)
相手「実現可能性が高くないとモチベーションが下がりそう」
僕「ではどうしたらいいでしょう」(行動)
相手「うーん。結果を出している人はどうやっていそうかきいてみる」
僕「面白いですね」

どうでしょうか。このように最初は教えるところから始めても、体験学習サイクルの質問や確認の質問を組み合わせることで、相手は自分から考えられるようになるのです。

教えた行動をしてもらったあとで
「やってみたらどうだった?」「それをしたら何が起こった?」など結果の質問をするのもいいですし、

「なにがポイントだと思った」「どう応用できそう」「やってみてどうだった」など学習の質問をするのもよいですね。

5W1Hの質問も便利です。どんな行動をしたらよいか教えたあとで

・いつ(どのタイミングで)したらよいと思う?
・どこでしたらよいと思う?
・誰としたらいいと思う?
・何に関してするといいと思う?
・どのようにしたらいいと思う?
・どうしてそうするのがいいと思う?(目的)

など質問することで相手にも考えてもらえますね。

ぜひ、部分的にでも相手に考えてもらうことで、主体的に取り組んでもらえるようにサポートしましょう。

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