君たちはどう英文解釈をやるのか ②成長のステップ・参考書選び編


前回の記事はこちら https://note.com/daikatsumata_54/n/n21ea8d4d5bff?sub_rt=share_pw

どういう段階を踏んで成績が伸びるか

 構文解釈の習熟がどういう段階を経るものなのかを紹介していきます。
まずは、全て理詰めで構文を取っていく段階です。「これが名詞だとするこれはOになる。Oになるとすると、こうなってここで辻褄が合わなくなる。ではこれは形容詞だろうか。形容詞だとするとこうなって、、」のように順を踏んで考えて、さまざまな可能性から、正しい解釈を絞っていきます(英語はだいたい理詰めで可能性をしぼっていけます。理詰めでは絞りきれないときもあり、そのときは意味・内容をヒントに構文を確定させていくのですが、必要なとき以外はそのような読み方を我慢できるようにすることが大事です)。イメージとしては、プログラミングをする、フローチャートを作る感じです。無駄なく合理的な過程で構文を確定させるプログラムを書いていきます。そして、毎回自分の頭がそのプラグラム通りに動作するようにしていきます。
 このプラグラムやフローチャートができあがってきてその通りに考えることが習慣化してくると、無意識で構文を取れるようになってきます。無意識でできるけど、理屈の裏付けはあるという状態です。適当に雰囲気で日本語の感覚で訳すのと、似ているようで全然違います。「このthatは関係代名詞だな。え?なんで関係代名詞かって?関係代名詞だとするとこうなるはずで実際にそうなっていて、もし接続詞だとすると、ここが辻褄が合わなくて、、」と言った感じで、意識はしていないけど、思考過程を説明しろって言われたらスラスラ説明できるという状態になります。
 こうなってくると、わざわざ訳さなくても意味が取れるようになります。SVOOは「SVOOっぽい感じ」で意味が取れるようになってきます。「こんな意味だな。それに合う日本語を考えるならこれになるかな」といった思考になってきます。
 これらの過程は、簡単な文から徐々に移行していくものです。例えば、「共通テストレベルの英語なら無意識で構文が取れるけど、難関私大の入試問題はまだしっかり構文を書き込まないと構文が取れない」といった段階があります。だから、構文解釈の問題集は、やや簡単に感じるものから志望校の入試問題のレベルまで徐々にレベルを上げて3冊くらいやりたいです。
 そして、無意識で構文が取れて、日本語訳もいらなくなってくると、自然と読むスピードも上がってきます。「自然に」速くなるというところがポイントです。速く読む練習をして速くなってもそれは実力にはならないです。

 もっと実力がついてくると、内容や使われている単語から構文がだいたい分かるようになってきます。「話の流れからしてこれは強調構文かな」というような予測が立つようになってきてそれが当たるようになってきます。よくあるパターンのストックが増えてきているので、これはこの構文っぽいという推測ができるようになってくるのです。理詰めで読んだ英文がたくさんあると、徐々にこうなっていきます。
 また、段々と構文よりも内容に意識が向かうようになってきます。構文解釈を始めた頃はSVOCを取るのに必死になって、「で、何の話だっけ?」というようなことも起こります。人間が意識的に思考できることは限られているので、意識的思考が構文に向かうと内容に意識が向かわなくなるからです。この段階ではそれでOKです。構文解釈に熟練してくると、意識的思考をほとんど使わずに構文を取ることができるようになってきます。そうなると、意識的思考を内容の方に向けることが可能になってきます。こういう段階になるとディスコースマーカーとかパラグラフリーディングのありがたみが理解できるようになってきます。
 熟練するほど理詰めの割合が減ってきます。知っている表現が増えるからです。また、例外的な文法事項は理屈で処理しにくいので、例外的な事項をたくさん覚えるほど理詰めではなくなってきます。こういう段階に達してれば、受験生なら間違いなく英語を得点源にできるようになっているはずです。

理解か暗記か

 英語の勉強において、理解暗記とどちらが大事かといった問題も、学力がどの段階にありどの段階を目指しているかによって変わってきます。
 まず、学力が低い段階では、まずは英語学習にも理屈のようなものがあると理解することが大事になると思います。僕も高校時代は英語が苦手で、当時は文法事項と単語をひたすら個別に暗記するものだと思っていました。それが、大学で英語を勉強しなおしたときに、理屈や体系のようなものが英語にもあると知って、一気に苦手が解消された記憶があります。僕は『一億人の英文法』でこの感覚を知りました(今読み返すと、その説明でいいのか?と疑問に思うところもありますが、ネイティブの気持ちを知ろう!という発想はとてもためになりました)。
 僕の教え方はというと「理解・理屈重視だけれど、最終的には暗記だよ」というスタンスです。さらに言えば、「受験勉強なら理解・理屈重視を徹底すれば、それだけでだいたいなんとかなるよ」というスタンスです。
 多くの(硬派な真っ当な)英語講師は暗記重視のスタンスです。僕が思うに、英語専門の講師の方たちは、当然高い英語力があるので、英語は暗記しないとどうにもならないということを強く感じているからです。あと、英語が好きな人たちなので、細かい文法事項を知ってテンションが上がる人が多いからです。僕は、苦手を克服したとは言え、社会ほど好きではないので、細かい文法事項にはテンションが上がりません。日本史だったらマニアックな知識でテンション上がるんですけどね。少し話が逸れますが、マニアとしての勉強の仕方と、受験勉強としてそれなりを目指す勉強の仕方は結構やり方が違うと思っています。僕は基本的に後者の勉強法だけを教えています。
 理解と暗記には鶏が先か卵が先かといったところがあります。例えば、「前置詞のatには点のイメージがある」という理解があるから個別のatの用法を覚えられるのか、個別のatの用法の知識が増えてくるからatの本質的イメージの理解が深まるのか、どっちが先なのかという問題です。僕は、先にそういう本質があるという情報をとりあえず知っておいて(この段階では深く理解することは不可能なので暫定的なものでOK)、個別の用法にたくさん触れる中でその理解を深めていくという順を踏むのがよいと思っています。
 さらに言えば、理解か暗記かといった問題は受験勉強に何を求めるかといった価値観の問題にもつながってくるかと思っています。英語を勉強するんだから英語そのものができるようになりたいと思うのなら暗記を避けては通れません。受験勉強を通して理詰めで考える力を伸ばしていきたい、理詰めで考えることで勉強全般が得意になりたいと思うなら、理解重視になってきます。僕は、後者の教え方です(英語そのものができるわけではないので前者の教え方はできません)。
参考になる記事はこちら(https://note.com/daikatsumata_54/n/ncbd7026a2191?sub_rt=share_pw

参考書の紹介

 さて、最後に参考書の紹介をしようかと思います。
 僕は、ここまで書いてきたように、どういう意識で勉強するかが何より大事だという考えなので、参考書の選択にはあまりこだわりがありません。また、英語参考書に詳しくないですし、文法的説明の是非について詳しく論じられるほどの英語力もありません。以下では、おすすめの参考書ではなく、僕が使ったことがある参考書を、僕がどのような点に特徴があると感じたかをレビューします。おすすめという意味ではないので誤解なきようにお願いします。どれがおすすめかよりも、どういう観点で参考書を見ているかを感じてみてください。

 「だいたい内容取れるけど、一つ一つの文を正確に理解しているかと言われると自信ないな」くらいのレベルの参考書を選ぶことが大切です。背伸びをしないこと!!志望校のレベルではなく、今の自分のレベルに合ったものを選ぶこと(東大志望であっても入試初期であれば「高校基礎レベル」などと書いてあるものを選ぶ)が大切です。

『英文解釈の技術』シリーズ

 僕が生徒に使わせることが多い参考書です。レベル別に複数冊出ていて、1問につき2ページという構成が一貫しているので、1日何問進めようという指示が出しやすいからです(毎年同じ教材の方が授業準備が楽だし、、)。『入門70』『基礎100』『英文解釈の技術100』の中から2、3冊取り組むことが多いです。5月から9月までの間で取り組むことが多いですかね。僕は授業で文法の説明を補足しながら進めていきます。

『世界一わかりやすい英文読解の特別講座』

 受験生が困っているポイントを熟知していて、どういう説明をすると喜ばれるかを熟知しているなあという印象です。そこがすごいです。ポイントは絞ってあるので、網羅的に勉強して演習を重ねるためには他の参考書にも取り組んだ方がいいでしょう。理屈重視の参考書ですね。僕は筆者よりは暗記重視なので、そこまで理屈をつけなくてもいいと思う箇所もありますが、基本的なスタンスは似ています。

『英文解釈教室』

 受験英語の世界のパイオニアによる有名な参考書ですね。分量が多くてレベルも高いので多くの受験生にはややオーバーワークかと思います。でも、楽しい。知性を感じます。

『ビジュアル英文解釈』

 英文解釈教室と同じ著者による、分かりやすい参考書です。こちらは分量も減って口語体なので読みやすいです。僕は説明がくどいと感じてしまい苦手でした。ですが、独学で分かったつもりに陥ることを防ぐためには、こういう丁寧な参考書の方がいいかもしれません。分かったつもりになって油断しがちな人や、理詰めは苦手だけれどゆっくり説明してもらってしっかり理解したいという人にいいのではないでしょうか。

『ポレポレ英文読解プロセス50』

 こちらは、英文の難易度は高めな割に解説が端的で短めです。端的な解説でもしっかり理解できる力がある人向けですね。自分で勉強する分にはこういう参考書が好きです。

『英文読解の透視図』

 受験生は倒置や強調構文などが苦手で、そういう分野で差がつきやすいです。そういう差がつきやすい分野に大きな割合を割いています。
では、なぜ受験生はそういう分野が苦手なのでしょうか?僕の考えでは、受験生では標準的な語順が崩れる単元を苦手としがちです。これは、標準的な語順の理解が足りないからだと考えています。なぜなら、標準的な語順を深く理解していないと「ここは普通の語順ではない」と気づくこともできないからです。そうでない人は「なんか読みにくい」としか思えません。「ここは普通の語順ではない」と気づくだけの力がついている人が取り組むといいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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