横顔 : 物語の種 #01


「あ、当たった!」

隣で口いっぱいに頬張っていた彼女が嬉しそうに言った。僕は、落ちた欠けらを横目で見ながら聞こえないふりをする。いじわるをしたわけでも、夏の日差しにやられたわけでもない。

帰りのバスを待つ間に、駄菓子屋に寄ったのが失敗だったかと思ったけど、いつものおばさんがおまけしてくれたので実質プラマイゼロだ。

彼女はクシャッと丸めたその当たりをビニール袋に入れ、何事もなかったようにスマホを取り出す。

投げ出した足を小さく揺らしながら思う。グッバイ 僕のコーンポタージュ。バスはまだ来ない。





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