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20世紀の音楽史において重要な作品の一つ、アルバン・ベルクのオペラ『ルル』

こんにちは、音楽評論家の和田大貴です。アルバン・ベルクのオペラ「ルル」は、20世紀の音楽史において重要な作品の一つです。このオペラは、ベルクが死の直前に完成させたもので、第三幕は彼の遺稿をもとにチェルハが補筆しました。チェルハ3幕完成版は、長年にわたって演奏禁止とされていましたが、1979年にようやく初演されました。それ以来、この版は多くの演奏家や聴衆に受け入れられ、話題を呼んでいます。

「ルル」の物語は、フランク・ヴェーデキントの戯曲「地霊」と「パンドラの箱」に基づいています。主人公のルルは、美しく魅力的な女性ですが、同時に無邪気で残酷な存在でもあります。彼女は、自分を愛したり利用したりした男たちを次々と破滅させていき、最後には、ロンドンの貧民街でジャック・ザ・リッパーに殺されるという悲惨な運命を辿ります。

「ルル」は、十二音技法と呼ばれる作曲法を用いたオペラです。十二音技法とは、12個の音階(クロマティックスケール)をすべて等価に扱うことで、従来の調性音楽から脱却しようとする方法です。この技法は、ベルクの師であるシェーンベルクが発明したものであるが、他にもハウエルやアイヴズなどが類似の技法を試みていました。

十二音技法は、20世紀の音楽に大きな影響を与え、多くの作曲家が採用しました。十二音技法を用いた作曲家としては、シェーンベルクやベルクのほかに、ウェーベルンやストラヴィンスキー、コプランドやセッションズ、クレネクやダッラピッコラ、ヘンツェやバビットなどが挙げられます。

ベームの『ルル』は、この作品の代表盤でしょう。歌手陣の充実はもとより、ベームとベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団の強靭でしかも豊穣な曲運びには感嘆させられます。

ベームの姿勢はあくまで峻厳で、根本姿勢に現代音楽への気負いは皆無、むしろ古典的、従来の調性オペラへのアプローチと変わることのない行き方を貫いている感があり、それゆえこの十二音オペラが、少しも十二音的でなく聴こえます。

もちろんベルク後期、調性と十二音列の融和への志向はとみに著しいのですが、かといってベームは甘美なロマンに微塵も溺れはせず、自然体の構築の中から、作品の複雑な楽曲構成を浮かび上がらせる演奏です。

ここで『ルル』は過去と決別した20世紀の異様なオペラではなく、伝統の上に立つ傑作として演奏されていますが、それがまた凄い!

ただし、ライヴ録音ゆえか、必ずしもベームとしては万全のものとは言えず、もっと時間をかけた丹念な演奏をスタジオ録音して欲しかったと惜しまれます。

とはいえ冷たく妖艶なリアーと、完璧なまでの語り口のF=ディースカウなどの歌手陣の熱演は、まさに壮観そのものです。

noteでは、「ルル」に関するさまざまな話題を取り上げていきたいと思います。オペラファンの皆さんのコメントやご意見をお待ちしています。お楽しみに!

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