よくわかる(?)ヨーロッパでのコーチングライセンス。 スペイン編。

みなさんこんにちは、”だいきーと”と申します。まだ現地通貨が『ユーロ』ではなく『ペセタ』だった1999年、15歳からスペイン、しかも日本ではかなり無名の地方都市在住です。そしてバルセロナでもなくマドリーでもないクソ地方都市でUEFA-Proコーチングライセンス取得したそんな自分がコーチングライセンスについてお話しします。

① ヨーロッパのライセンス事情。

② スペインは?

③ UEFAライセンスって?

④ 自分が取得したライセンス

⑤ まとめ

① ヨーロッパのライセンス事情。

恐らくライセンスについては日本では様々な情報があると思います。でも一番気になる / 知りたいのは「UEFAライセンスってなんなんだろう?」なのではないでしょうか。その前にコーチングライセンスについてお話しします。基本的にスペインでの話、さらに州レベルでの話になります。

コーチングライセンスは一応ひとつのクラブのチームで監督として登録するために必須です。ライセンスを所持していないと監督として登録が出来ません。つまりスペインの自分がいる州では監督として活動するためには、それぞれのカテゴリー / ディビジョンに必要なコーチングライセンスを所持していないと監督として登録出来ず、それが意味するのは監督として登録していないと基本的には試合中にベンチの前で立って選手たちに指示を出すことが認められていないということです。

コーチングライセンスは、自分は自動車の『運転免許』のようなものだと考えています。試験をパスすることで車を運転する一定の技量があるとされ、運転する許可を得ます。しかしペーパードライバーもいますし、長年運転していても下手な人もいます。さらに新しい規則が出てくることもあります。コーチングライセンスも取得しても現場に全く立っていない人間もいますし、言い方は悪いですが無能な人もいます。

ヨーロッパの全ての国を知っているわけではないので、実は『ヨーロッパのライセンス事情』なんて大袈裟なことは言えないんですが、基本的に各国のサッカー協会が主催するライセンスコースで勉強して取得するのが普通だと思います。

② スペインは?

スペインはかなり早めからライセンス、というかコーチングというものを学問として捉えてきたみたいです。うろ憶えですが1980年代後半にスペイン文部省が運動を科学する体育学部にサッカー専門学部を作って、それからスペインでサッカー専門学部を卒業した人にはサッカー中級・上級学位を与えるようになった、それがスペインでのコーチングライセンスの始まりだったとか。

スペインでは現在2種類のライセンスが存在しています。ひとつはスペインサッカー協会が主催する監督養成学校で取得できるライセンス。スペインサッカー協会の属する欧州サッカー連盟、通称UEFAが承認しているライセンスで、2015年のUEFAコーチングコンベンションでUEFA傘下の各国協会のライセンスが自動的にUEFAライセンスとの相互性を持つことが決まりました。スペインサッカー協会はスペイン各州のサッカー協会に監督養成学校開催の権限を与えています。ピラミッド型で、縦の関係はUEFA→スペインサッカー協会→各州サッカー協会となっています。日本でのアジアサッカー連盟→日本サッカー協会→各地域サッカー協会→47都道府県サッカー協会の縦関係と同じです。

もうひとつはスペイン文部省が主催する監督養成学校=専門学校で取得する学位ライセンス。こちらはスペイン政府が主催しており、スペインの職業学校、日本風に言うと専門学校だと考えてもらっても支障がないんじゃないかなと思います。

このふたつのライセンスは3段階(3つのレベル)があり、それぞれの段階(レベル)で18歳以上のチームで監督を務めることが出来るディビジョンは変わりません。

*下育成年代カテゴリーになると少し変わります。

レベル1では都市レベル(日本風に言えば県リーグレベルのディビジョンまで)。

レベル2では州レベル(日本だと関東、関西などの地域レベルのディビジョン)。

レベル3では全国レベル(1部を含む全てのディビジョン)。

しかしこのふたつのライセンスは名称が違います。

スペインサッカー協会のライセンスは下から

1. ベーシック - UEFA-B

2. アドバンスト - UEFA-A

3. プロフェショナル - UEFA-Pro

*わかりやすいようにスペイン語から英語風に訳してあります。

スペイン文部省のライセンスは下から

1. サッカー専門家中級ベーシック学位

2. サッカー専門家中級アドバンスト学位

3. サッカー専門家上級学位

サッカー専門家上級学位を取得すれば、サッカー以外のスポーツクラブ・チームのフィジカルコーチとして活動の他、スポーツに関する学部の大学進学への資格が与えられますし、スペインで、ジムでインストラクターとしての資格も付いてきます。そしてスポーツ関連の機関への就職にも、さらに公務員試験にも有利になります。

サッカー協会のほうは完全にサッカーのみであり、サッカークラブ、サッカーチームのみでの監督やコーチなどの活動になります。

ふたつのライセンスの1、2、3は同じランクで、どちらも監督として活動できるカテゴリーは同じです。そしてスペイン文部省のサッカー専門家学位はスペインサッカー協会から認められているので、スペインサッカー界で監督として登録することに問題はありません。

ついでにスペインでは今のところこの1、2、3のことを二ベル(スペイン語でレベル)1、二ベル2、二ベル3やテリトリアル、ナシオナルと呼んで詳しく区別はしていません。

③ そもそもUEFAライセンスって?

欧州サッカー連盟が発行しているライセンスです。頂点にFIFAがあってその下にピラミッド型に各大陸のサッカー協会があります。その欧州サッカー連盟が各国サッカー協会の監督育成学校にコーチングコースの組織・運営を任せているんですね。だからスペインサッカー協会のライセンスに『UEFAライセンス』の名前が付くのです。

日本の属するのはアジアサッカー連盟、通称?AFCってやつです。そしてアジアサッカー連盟にも『AFCライセンス』が存在しています。定期的にライセンス取得講習会を行っているようなので、英語ができる人は『AFCライセンス』を取るのを視野に入れてもいいんじゃないかなと思います。

④ 自分が取得したライセンス

自分はスペインサッカー協会の傘下の州サッカー協会の監督養成学校でプロフェッショナル/UEFA-Proライセンスを取得しました。スペイン文部省のライセンス/学位取得は最初から視野に入れていませんでした。確かにスペイン文部省のライセンスのほうがサッカー以外でさまざまな恩恵が受けられるんですが、基本的にスペイン国内だけで、スペイン国外(EU圏内ではEUの法により通用します)だと全く意味を持たないので、最初からサッカー協会のUEFAライセンスのほうを選択しました。

以前、2010年くらいまでは文部省のライセンス/学位を取得してもUEFAライセンスを申請出来たのですが、2015年くらいに行われたUEFAコーチングコンベンションで曖昧だったサッカー協会と文部省の違いが明確にされて、さらに自分が入学する前の説明でも州サッカー協会の監督養成学校の校長から「スペイン国外で監督をしたいと考えてるならサッカー協会のライセンスを取るべき。文部省の学校に入学して卒業しても国際的に通用するUEFAライセンスはサッカー協会での監督養成学校でしか取得出来ないから、しっかり考えて自分にとって有益なほうを選びなさい」との言葉もありました。

ちなみにサッカー協会の監督養成学校と文部省の監督養成学校の相互性はありません。自分はサッカー協会の『プロフェショナル - UEFA-Pro』レベルを取得しましたが、スペイン文部省のライセンスでは一番下の『サッカー専門家中級ベーシック学位』から始めることになります。

そして自分が受講したのは短期集中コースなので、これらの教科合計400時間を約5週間で授業・テストを行います。授業時間は1日10時間の計算です。授業によっては眠気との戦いでした(笑)でも超短期間でほぼ1日中同じ目標を持って頑張っている人間が集まるので、みんなで協力しあってかなり仲のいいグループができるのがいいところです。

通常は10ヶ月の間、1週間に2時間半から3時間の授業が2日あります。

ところでプロフェッショナル / UEFA-Proって何を学ぶの?

次の教科があります。

英語
普通の英語とサッカーで使う英語を勉強します。先生がスペイン1部プロクラブの通訳さんだったんですが、友人の友人とかいう世界の狭さを痛感しました。悪いことはできないなー。
筆記テストなどはなく、出席すればOKでした。

栄養学・身体学
体の科学・化学・動きのメカニズム、栄養やカロリーを勉強します。
筆記テストがあったんですが、学校側が間違って違う年のテストを印刷しちゃったから、なんとテストの点数関係なしに全員合格しました。

帝王学
グループをまとめるための『リーダーシップ』ってやつを勉強します。
筆記テストあります。

心理学
スポーツ心理を勉強します。ちなみに先生が話を長びかせるタイプで、非常に辛かったです。
これも筆記テストあります。

クラブ管理
契約、移籍期間、移籍方法、クラブ内部やサッカー協会との関係を勉強します。最近流行りの『スポーツ賭博』についても勉強します。
筆記テストあります。


競技ルール
みんなが知っているようで知らないサッカーの競技ルールを勉強します。VARのことも学びます。ちなみに先生はなんとスペイン1部で主審を務めている人です。
筆記テストあります。ちなみにテストでPKの距離を間違えるという初心者レベルの恥ずかしい回答をしました。

技術
説明不要ですが、この教科は一番下のレベルから内容がほとんど変わっていません。さらにこの『プロフェッショナル』のレベルでは監督をするチームの選手たちは身につけておいて当然なものなので、授業時間自体もめちゃくちゃ少なくて、復習的な教科です。
ちなみに実習テストだけで筆記テストは無し。でも教科の実習のテストを受けるためには自分で好きな技術アクションを選んでトレーニングを3つ提出して、その中のひとつを先生の前で見せるってやり方でした。

GK技術
これも技術と一緒で一番下のレベルから内容が一緒です。ちなみに前のレベルまで技術の中に組み込まれてて、このレベルから単独の教科となりました。実習のクラスではプロのGKと先生がプロのGKコーチで、すごい楽しかったです。
筆記テストも実習テストもなくて、ただGK用のトレーニングを5つ提出するだけでした。

戦術
これもUEFA-Aライセンスで全て学んでおり、プレーモデルを1から作る、そしてある条件を持つ相手に対してどう対応する/どんな解決策を見出すかというかなり実践的な内容です。この教科は実際にグラウンドで行う実習授業があります。そして授業時間も相当取られてました。グループに分かれてあーだこーだ言い合うのは楽しかったし、たまたまプレミアリーグのコーチがいて勉強になりました。そいつプレシーズンが始まって離脱したけどね。
筆記テストと実習テストあります。もうテスト自体はテキスト暗記してもほとんど意味をなさず、その知識をフルに活用。正直どうやって点数つけるんだよ!むしろ満点の解答ってなんだんだよ!って本気で叫びたかった教科です。

トレーニングメソッド
これはフィジカルのトレーニングを勉強する教科です。この教科も実際にグラウンドで行う実習授業があります。
筆記テストと、自分でフィジカルコンディションを鍛えるためのプランを作って提出しないといけませんでした。

選手オリエンテーション
ちょっと上の教科と被ってる部分もあって、フィジカルコンディションを良くさせるとか、維持するとか、リカバリーをどうするかとかそんなのを勉強します。
筆記テストあります。

ピリオダイゼーション
計画・プランニングを勉強します。でもほぼUEFA-Aまでに学んでいるので、戦術的ピリオダイゼーションを重点的に学びます。
筆記テストありで、筆記テストの最後の部分は試合のビデオ映像を数分見せられて、それぞれそのビデオ映像内でプレーしてるチームを振り分けられて、その数分間でプレースタイルを抜き出してそれに沿って1週間のセッションとそのトレーニング内容を書くとかいう、いやいやテスト時間足らねーよって感じでした。

スポーツ道徳
そのまんまです。筆記テストあります。

ニューテクノロジー
ビデオ分析やGPSデータ、ビッグデータの読み方・使い方を勉強します。GPSの使用はトレーニングメソッドの教科の中で、実際にグラウンドで実践して学びます。

筆記テストあります。そして試合分析映像と報告書も提出しないとテスト受けさせてもらえません。

すべての教科で合格して、さらに卒論的な最低でも75ページくらいの論文を書いて、それのプレゼンしてやっと『プロフェショナル - UEFA-Pro』ライセンス取得となります。ちなみに僕は論文書いてその中から自分で重要だと思う部分だけ抜き出してプレゼンしないといけないっていうのを理解していませんでした。そうだったのが自分たったひとりなら「いやほら、外国人でスペイン語うまく理解できなかったんだよー」なんて言って同情を買うことも可能だったんですが、なにぶんスペイン人でも理解してないやつらがいて約3割くらいがそんな感じだったみたいなので、見事にごり押しは通用しませんでした。

『プロフェショナル - UEFA-Pro』ライセンスというレベルは1部や2部、つまりプロチームの監督を務めることができるというわけで、実際にグラウンドで行う実習授業ではプロチームを想定して『指揮』します。特に戦術の授業ではプレシーズンにプロチームに就任したとの想定で、全く知らないチーム、25人の選手に対してそこから自分のプレーモデルを作り上げていく、そのためのピリオダイゼーションや指導法などを適応させていくという内容になっています。

UEFAとスペインサッカー協会からのガイドラインをもとにスペイン各州サッカー協会の監督養成学校がコースの内容を作成するので、スペインの地域により教科や内容が変わるみたいです。戦術教科のカタルーニャ地方からの圧力がすごいらしくて、戦術の先生は嘘か本当か「最初ラス・ロサス(スペインサッカー協会本部)から送られてきた内容が偏りすぎてたので、こんなの教えられねえな!Aしか教えるなって言うなら俺やんない!AからZまで全部教えるのが義務だぜ!ってことで、内容をある程度こっちで調整させてもらったよー」って言ってましたし、マドリー州サッカー協会でアドバンスト / UEFA-Aまで取ってこちらで一緒に勉強してたやつが、「マドリーとは良い意味で全然違って、かなり驚いてる」って言ってたんで、おそらくそれぞれの州で変わってくるんだと思います。

そして文部省の方のライセンスの方も、教科などを見る感じ少し違ってくると思いますが、おそらく細かいところの管轄が地方自治州の文部省でしょうからあんまり変わらないんじゃないかなと思います。

じゃあスペインでライセンスを取るならどちらを選べばいいの?

実は普通の日本人がスペインでライセンスを取ろうと思うと、サッカー協会のほうはスペイン国籍を擁していない人間はスペインでの永住権が必要になります(もちろん『読む・書く・話す』の語学能力の証明も最低の学歴の証明も必要です)。文部省の方のライセンス / 学位は日本の高校卒業証明をこちらの正式な書類にする手続きなど様々な書類を揃える必要がありそこで時間を使いますが、永住権の縛りがなく、留学生の1年更新の長期学生ビザでも就労ビザでもスペインでの滞在が合法であれば問題なく入学できます。

ヨーロッパでコーチングライセンス取得を検討しているなら、イギリスやアイルランドでは外国籍の人間でも滞在のビザに関係なくサッカー協会のライセンス=UEFAライセンスのコースを受講できるようなので、英語という日本人にとっても馴染みのある言語という利点もあり、イギリス・アイルランドという可能性も視野に入れてみてもいいんじゃないでしょうか。イギリスは日本のように上のレベルを受講するためにはコネが必要になるみたいですが…

⑥ まとめ

スペインは少し特殊なので理解するのに苦労するかもしれません。実際にスペイン人も当初は理解に苦労して混乱していたくらいです。

ヨーロッパでの『UEFAライセンス』と呼ばれるコーチングライセンスは、スペインでは全て欧州サッカー連盟(UEFA)傘下のサッカー協会であるスペインサッカー協会の監督養成学校で学び卒業しなければならず、おそらく欧州サッカー連盟に属している国は事情が全く一緒だと思います。

ちなみに『ヨーロッパのライセンス事情』と言いながらドイツやフランス、イタリアの事情は詳しくわかりません(笑)

参照

http://www.futgal.es/pnfg/NPortada?CodPortada=1000266
http://www.ce-rfef.es/
http://www.rfef.es/noticias/finaliza-curso-entrenador-diploma-licencia-uefa-b
https://www.mecd.gob.es/educacion-mecd/areas-educacion/estudiantes/ensenanzas-deportivas/grado-medio/especialidades/tecnico-deportivo-futbol/primer-nivel.html
https://www.educaweb.com/estudio/titulacion-tecnico-deporte-futbol/


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だいきーと@サッカー監督

将来有望の現在ヘッポコ監督と代理人。一応ベテランリーグでプレーしてた元スペインリーガーです。2018-19シーズンも2クラブでU8とユースカテゴリーの監督します。あとスペイン語と日本語の先生です。スペイン滞在は15歳から現在21年目(1999年から)。

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