駒場にある日本近代文学館の館報『日本近代文学館』(公益財団法人日本近代文学館)の昨年発行分(N0.311〜316)を頂戴しました。どの号も興味を惹かれる寄稿が多く、編集者のセンスを感じさせる内容です。なかでも「わたしの蔵書から」というリレー連載は、文学研究者や作家のみなさんの本との付き合い方を知ることができて、かなり面白いものになっています。
ここではまず小説家・澤田瞳子さんの「本と、記憶と、思い出と」から少し引いてみます。本を手放せない性分で蔵書がどんどん増えて困っているという話から入ります。
まあ、このくらいは本好きなら誰でも通る道でしょう。本を使う人は整理に時間をかけます。
結局、その三冊はもらって帰り、現在も書庫に納まっているそうです。
もう一人、国文学の渡辺憲司氏の古本譚「六十年前への謝辞二冊」を紹介しておきたいと思います。昭和41年3月、法学部から文学部へ転じることが決まったとき、ロック座の照明係のアルバイトで稼いだお金で高い本を買おうと思ったそうです。
この後、大学の研究室へ行くと、同じコピー製本の『色道大鏡』がありましたが、それはかなりの値段だったことが分かり、氏はいい買い物をしたと嬉しくなります。そして後年には、その本が研究者にも手の届かない高額な本になってしまったため、八木書店の協力を得て新版を刊行することができました。
おまけにもらった『色里三十七所息子順礼』も『江戸の岡場所ー隠売女の世界』(星海社新書)を執筆するときにそのテコとなりました。
そんなはず・・・でも、いいお話です。