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「たのしい」を真ん中に まちを考える。 ~塩尻大門から考える、たのしむための、まちとの関わり方~ イベントレポート

この町になぜ暮らしているのか聞かれたときに「だって楽しいんだよね」
そう言える暮らしができたら・・・。

「みんなの楽しい」が町中に溢れかえっている、そんな未来への入り口となるイベント
「たのしいを真ん中に まちを考える。」を2021年2月21日に開催しました。

時世に合わせてオンラインを併用し、ソーシャルディスタンスを保ちながらの開催です。

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第一部は、株式会社グランドレベル代表取締役社長/喫茶ランドリーオーナーである田中元子(たなかもとこ)さんをゲストにお呼びして「喫茶ランドリーから 学ぶまちづくり」についてご講演いただきました。

田中さんは「1階づくりはまちづくり」をモットーに、ひとびとが能動性を発揮する環境を、まちの1階につくるプロフェッショナル。1階が起こすインパクトや、賑わいだけではなく、人々がプレイヤーに転換してしまうような日常の場となる、マイパブリックの創造について伺いました。

第二部は、株式会社コトト代表取締役/ミリグラム株式会社取締役である瀧内貫(たきうちとおる)さんをゲストにお呼びし、塩尻や大門について「こうなったら楽しい」という未来構想を出し合い、未来への関わり方を探るワークショップを行いました。

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◆第一部:日常に活気がある町は、グランドレベルに居場所がある

第一部ゲストの田中さんからは、運営する「喫茶ランドリー」に設置されているランドリー前から、オンラインでお話をいただきました。田中さんのパワーが、オンラインでも、ひしひしと伝わってきます!


まず問題提起されたのは、「ひと・まち・日常」を変える方法。どうやったら賑わう日常をつくることができるのでしょうか。

「人生の質が詰まっているのは公園や商店街、空き地」と田中さん。これらの、ごくごく日常の風景でも、人がいなければ寂しさを感じさせます。活気を生み出すために町が目指すべきことは、人口の多さだけではなく、人が行きかう日常の風景をつくることです。

「日常の風景に人の対流を生み出すためには、町にある建物の1階=”グランドレベル”に、あまねく人々の居場所がある必要があります」と田中さんは話します。

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〇あまねく人々の居場所、マイパブリック

田中さんがいらっしゃる「喫茶ランドリー」は、まさにあまねく人々の居場所をつくるために開かれた、グランドレベルにある”マイパブリック”。老若男女問わず関係を築ける、かつ使いこなせる、みんなの居場所です。
「心の中にあるものが、うっかり表に現れ出てしまうような、そしてお客さんの能動性が、うっかり発露してしまうような場として、豊かなふるまいを誘発する私設公民館を目指しました。」と田中さん。

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喫茶ランドリーでは、これまでさまざまなイベントが行われてきましたが、田中さん主導ではなく、お客さんが能動的に起こすイベントだったとのことです。

田中さんは「喫茶ランドリーは、いろんな人に、やりたい、使ってみたいと思わせる環境。ここでやったら楽しそう、ここでならやらせてもらえそう、と思ってもらえたんだと思います。そして、皆さんの持つコンテンツを見いだせるような、補助線となりたいと思っています。」と話します。

〇最初に踊りだす1人がいれば、みんな踊り出す

質問コーナーでは、大門商店街の建物2階にある、シェアハウスのオーナーが手を挙げました。2階は、入店の偶然性を得るには不利。どうやったら町とのかかわりを作っていけるのか問いました。

田中さんからは「1階のエリアに情報を出したり、使い方を教えられるイベントを行ったりして、一歩入り込めるように心理的な壁を取り払ってあげることが大事」とアドバイスをいただきました。

こちらに対しては、例えば2階から長しそうめんをしても楽しそう、という声があがりました。夏がとっても楽しみになる企画です。また、大門マルシェが手を組むことができそう。シェアハウスをマルシェ会場にして、イベントを開催するのです。

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さらに、大門マルシェのような、日常的に足を踏み入る場所を持っていないイベントは、今後何を目指していくべきかも質問しました。

「関係性が交差するような機会を提供するといい。例えばマジシャンが手品を教えるような、観客が演者にも変化するようなイベントね。、」と田中さん。観客が能動的になる、反応をもらう人生となる種をまき、日常の時間に繋げてもらうのです。

大門マルシェは、あまねく人が「たのしい」を持ち寄って、自身のショップを展開できる場所。その能動性のある「たのしい」を連鎖させていくことで、今はお客さんである方も、マルシェの出店に至るかもしれません。

あるいは「出店」という形だけでなく、もう一段ゆるい概念でいられる「パーソナル屋台」を取り入れるのもいいかもしれません。「パーソナル屋台」とは、道ゆく人に無料で何かを振る舞う、移動式屋台のこと。屋台主と道ゆく人との間に、コミュニケーションを生むことで、もっと多くの人を受け入れる可能性があります。

「例えばダンスフロアで最初に踊りだす1人目はドキドキして恥ずかしいけど、最終的には、みんなが踊りだすもの」と田中さん。何かを始めたいと思っている人に、「一緒に踊ろうか!」や「どう進めていこうか!」と大切に声をかける、”そそのかし役”も必要なのかもしれません。

主催の大門マルシェ実行委員長の草野は今の自分の心境と重なり、思わず泣いてしまいそうだったとのこと。「大門マルシェが、最終的にみんなが踊り出す未来に繋がると信じて、よりがんばっていきたい!」と決意を新たにしているようです。

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◆第二部:みんなの「たのしい」を知りたい

続いて第二部は、塩尻や大門について「こうなったら楽しい」を未来構想するワークショップ。2グループに分かれて、どこで、なにがあったら楽しいか妄想し合い、それに対して自分がどんな貢献をできるのか考えます。最後は、実現を目指して企画を立てるところまで膨らませました。

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まずは、自分のなかにある「あったらたのしい」と、それを社会的につなげる「どこで」について妄想しあい、ホワイトボードと付箋に書き出していきます。

「どこで」として挙げられたのは、えんぱーくや公園、スナバ、商店街、カフェ、映画館、道端、駐車場、参加者の自宅など。すでにパブリックである場所から、プライベートの場所まで、ざっくばらんに書き出されます。

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そして、自分のなかにある「あったらたのしい」は、「どこで」と、どのように繋がるか考えながら、付箋を貼っていきます。

例えば、「商店街」に貼られたのは、ピクニックや、シャッターシアター、ドローンレース、ビアガーデン、ドラクエゲームなど。どれもワクワクさせる”あったらたのしい”コンテンツです。

ほかにも「えんぱーく」に貼られたのは、ギャラリー、菜園、動物園、AR海、水族館、人口ビーチなど。塩尻は、海から塩を運ぶ「塩の道」の終わりの場所だったと言われます。遠い海に、恋焦がれる方が多いようですね。

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〇実現に向けて、貢献と企画を書き出そう

次は、書き出された「あったらたのしい」に対する、自分が貢献できそうな「何ができる?」を、青い付箋に書いていきました。

「職業を生かすだけではなく、周囲に応援してもらえそうなことでも構わない。」と瀧内さん。

「こんなことできるよ!」な得意なことでも、「参加したい、挑戦したい、好き、私やるよ!」などの気持ちでも、自分の”あったらたのしい”に反応があると嬉しいものです。

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その後は「企画を妄想しよう」。実行できそうなものを、もうひとつのホワイトボードに移していきます。まとまったものから、企画タイトルをつけていきました。


〇企画発表の時間

最後に、お互いに発表の時間をとりました。


1グループ目は、3つの案にまとめられました。

「1つ目は海です。
海へのあこがれが強い我々は、海に関するイベントへの付箋が多く貼られました。塩尻は、海から遠く離れた場所なので、海を欲しているのかもしれません。海の日に、海を感じられる企画をやったらみんな楽しいし、端から見ても不思議がられて楽しいのではないでしょうか。例えば『海っぽい写真コンテスト』を行ったり、『人工ビーチ』を作ってしまいます。

2つ目は、今ある商店街を知れる企画。
商店街でドラクエをしちゃいます。ドラクエの中身は『商店街ガチャをひいて、そこでランチしてください』と設定されたり、ストーリーを組んで連れていかれたりします。そういったことで今は閉まっている店舗に対しても『かつてここは何屋さんだったのか?』と興味をかきたてるかもしれません。また、手書きマップをつくることで、町への理解が広まる機会になります。 

3つ目は、新しい商店街をつくる企画。
シャッター店の軒先で、シャッターシアターや、スタンディングワインバーがあったら面白くなるのではないでしょうか。」

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2グループ目は、4つの案にまとめられました。

「1つ目は、商店街で行われるようこそピクニック。
食べる物は、商店街の中で調達します。テイクアウトしたり燻製などの調理をしたりしたら楽しいのではないでしょうか。そのなかで町歩きイベントや、商店街のハンモックやイスで寛げる空間をつくるのもいいのかもしれません。

2つ目は、じゃり駐夜会。
砂利の駐車場で夜会をしよう、というイベントです。あるお店の定休日である水曜日に行われます。自分でイスなどを持参するチェアリングを採用して、食べる物や飲み物は、周囲の店舗からテイクアウトをします。

3つ目は、コンポストファーム。
スナバの裏に畑があるので、コンポストファームをやったことがある人に協力いただければ、小さくなら、すぐに実現できるかもしれません。

4つ目は、湯上りテラス。
銭湯から出た後に、たむろできるスペースをつくります。お酒を飲んだり、アイスを食べたり、牛乳を飲めたりできるスペースがあったらいいよね、と。人が集まってくる予感がする企画です。」

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お互いのグループの発表に対して「それいいね!」だったり「海の音が鳴る楽器を鳴らそう」だったりと、ワイワイ言い合いながら、楽しく「たのしい」を考えた第2部が終了しました。

正直「全然なにも意見が出なかったらどうしよう…」と事前は不安がいっぱいでしたが、ひとりひとりの中に、たのしいこと、好きなこと、アイデアは溢れていると実感できました。自分が出したアイディアに「私も!」「私も!」とみんなが付箋を重ねていけば、「あ、これもう実際できるじゃん」と思えて、とってもワクワク。このような経緯で企画が立ち上がることは、とても健全だと感じられました。1日のイベントだけではなく、日常的に話す機会を設けていくことが、大事なのかもしれませんね。

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こうして「たのしいを真ん中に まちを考える。」をお送りいたしました。
まちづくりは正しいことだけではなく、「たのしい」こととの掛け合わせです。みんなの「たのしい」を形にして企画をまとめていくことができれば、大門や、塩尻が面白くなっていくことでしょう。

ゲストの田中さん、瀧内さん、そしてご参加いただいた皆さん、いっしょに「たのしい」時間を過ごしていただきまして、ありがとうございました。

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