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『ぼけについて』YouTube動画の台本も兼ねて

——写真を初めて10年ほどになるのですが、ぼけというのは、なんなのか、いまだにわからないというお話し——

佐久間大進《城ヶ島》2023

 写真はとても難しいので、わからないものはぼけ以外にもたくさんあります。例えば『ヌケ』とは、『影』とは、『色』とは、『生っぽさ』とはなどなど、いろいろなわからないことはありますし、いい画角とか構図とか、結局のところ、上達すればするほどわからなくなってゆくものであります。
 構図とかに関しては、もちろんセンスとかハズしみたいなこともあると言えばあるのですが、しかしそれにも経験や計算が可能な気もするし、むしろ必要な気もして——少なくともただランダムに適当に撮ればいいというわけではないことはほぼ確かに思います。その中で、一つぼけという問題についても、最初、訳わからないまま、面白く写真を撮っている中で、少し知識をつけて、セオリーとか常識を守れるようになってきて、その中で自分の『表現』もできるようになるみたいなことが一般的に言われたりします。例えば具体的に言えば、何もわからずに写真を撮りまくる段階→被写体だけピントを合わせて周りをボケるように撮るのが楽しい段階→前ボケを使ったりイルミネーションをぼかしたりする段階→しっかり絞って撮る段階→絞るけれど、少し緩さも残す段階などなど。けれど、さらにその先に進んでゆくと、こういうのはだめだよって最初の段階で教えられてきたこと(例えば背景を単焦点の長めのレンズで大胆にぼかしてゆくことなど)が実は割と重要なことだと思うようになったり、いろんなぶり返しみたいなものが起こります。
 少し抽象度の高いお話だったので、より具体的にすると、例えばピントは点ではなく距離で合います! 面で合います! と、初心者から中級者に上達する際に学ぶと思います。そういうふうにして習った人も多いと思いますし、もしそうでない場合は阪貞良さんの動画を見てください。とまで突き放すつもりはありませんので安心してください。一応、必要な程度説明させていただきます。
 最近はオートフォーカスが発達したこともあって、フォーカスを合わせるときには画面の中に四角い箱が出てきて、それを画面の中を動かして、ピントを合わせたいところを平面の中で決めてゆくという方も多いと思います。人の目に合わせたいと思ったら、人の目にフォーカスの点や箱を持って行って、シャッターボタンを半押ししたりすると思うのですが、それを脳死でやってしまっていたら初心者から中級者にはなれないということで、多くの写真講師は中級者を目指す受講者に向けて、先ほど言ったような『ピントは点ではなく距離で合います! 面で合います!』ということを言うことが多いのだと思います。

佐久間大進《彩色写真『一九と、それからいくつか』のための白黒写真》2023

 人の目にピントを合わせる例で話を続けると、実際には、もしあなたが『人の目』に小さな四角を重ねていても、光学的な処理としては、センサー面から(例えば)『1メートル先』の平面にピントが合ったり合わなかったりするのであって——ということは合わせようと思ったもの=『目』のみならず、実際には同じ距離にある全てのものが、はっきりと写っているのです。また、カメラさんの気持ちになって考えれば、カメラさんはただ距離に応じてレンズを調整しているだけで、それが『目』だとか、画面のどの辺りに位置しているかなんてことはどうでもいいわけですね。
 しかし、これに『ぶり返し』があるというのが今回の文章の趣旨であります。『距離で合う』と言うのは確かにレンズやセンサーの平面性や光学設計に基づいることですし、写真が技術である以上、大事なことだとは思うのですが、しかし、その上で、写真のプリントは平面なので、プリントの平面で言えば、ピントは点とか線とか有限の面積としての範囲で合うのです。私が『さようなら、そして、はじめまして写真』という個展に出展しているお花の作品もその最たる例だと思います。

佐久間大進《Daydream》2024

 こちらを説明させていただくと、ピントが画面上の二つの部分(ピンク色の花びらの手前側と緑の茎の途中の一部)に合っていて、それらはプリントにおいて平面的に離れている。そのプリントにおいて平面的に距離のある範囲=『ピントの合った部分』というのもは、もはや平面において構成要素として再解釈されている。つまりピンク、緑の広がりやそれぞれの色彩や明暗の広がり、形態と同じように、『ピントの合っている部分』というのは一定の面積を持った形態として平面において扱われ、平面的に配されているということです。
 ここではもはや花や茎のピントの合った部分がセンサー面から一定の距離にあるということは深い次元で意味を失っているのです。つまり、私は技術的にセンサーから一定の距離のものにピントがあっているということを十分に意識したり理解し、さらにはそれを利用してイメージをコントロールすることができることを鑑賞者に表明しながらも、さらに、それを踏まえて、ピントを二つの点や二つの形態として画面上で再解釈して取り扱っているのです。自分の作品についてこんなことを言ってるとかなり自惚れたように聞こえますが、他人の作例でこんなことを言うのは、特にnoteでは難しいので、著作権や倫理的になんの問題もない自分の作品でさせていただいていると言う次第でございます。
 このように、写真における初心者が『ダメ絶対』として教えられることのなかには、実は一周回って重要になってくるものもあったりするんじゃないかという直感を、ボケという一例を挙げてお話しした次第です。他にもこういうことは色々と感じることが多いのですが、この文章は長くなりすぎそうなので、一旦ここで終わりにしたいと思います。

P.S.

 こちらで紹介いたしましたお花の写真もふくめた十数作が、明日と明後日の2日間、続きます個展で発表されているので、もしよければそちらもよろしくお願いいたします。詳細はプロフィール欄やインスタグラムからご確認ください!

さようなら、そして、はじめまして写真

目黒駅東口徒歩5分『Mini Gallery Coconeil』
1月26日(金)〜2月4日(日)|12時~19時 (※最終日18時閉廊)

〒141-0021 東京都品川区上大崎2-10-32 フラワープラザビル3F



それでは!


写真と写真機が好き