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庭の花を活ける

湯河原に住み始めた頃は真冬で、締め切った部屋の中でも古いサッシのすきま風が入り込んで、吐く息は白かった。買ったばかりのアラジンストーブが頼りだったけど、酔っぱらって寝過ごし火事になるのがこわかったから、深夜の帰宅時にはつけず、お風呂のお湯がたまるのをじっと待っていた冬の3カ月間。

それでも庭には花が咲いていた。寒くても花は咲くのだな、と。

今日は紫陽花を摘んできた。湯河原に住んだ理由は庭に咲いている花を活ける…そんな日常が欲しかったのかもしれない。花は買うものではなく、庭から摘んでくる。憧れていた日常とはこういうことだったのか、と半年経って改めて気が付く。

「湯河原から通ってます」と都内の会社内外で話すと「よく決めたね。」「思い切ったねー。」と言われるが、私自身腑に落ちず。「はい、思い切りました!」という気分には程遠い。私はただ東京に住まいを借りるのお金を出せなくなった、どちらかといえばそのお金がもったいないと思い始めたのが正直な気持ちで、思い切ったのは、この湯河原の家を購入するために退職金はたいたあの2年前の春だ。でもあの頃は「東京に住むなんてもったいなー」なんて思ってなかったし。でも、こころの何処かでは庭の花を活けるとかしたかったんだろうか…。

往復4時間、都内へ遠距離通勤をする自由な50歳。庭の花を活けるためだったのか…、温泉のある自宅に住みたかったのか…、はたまた古き家具に囲まれたかったのか…、いやそれよりも、鳥の声で目覚めたかったのか…、やっぱり自家菜園が満喫したかったのか…、犬を飼いたいのか(あ、これは間違いない。)。明確な目的があった訳ではく必然的に脱東京生活を始めてしまった私。色々思いつめたり、東海道線の椅子の硬さで腰痛めたりしてますが、やっぱり湯河原の家が好きなんだな、と思ったので、色々書き残してみようと、今日から始めます。


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