レビーな彼女の事件録①~カラン・カランカラン事件~

あるある?レビーな彼女、救急車に乗る(3回目)


ちょっと待って、冷静になろう・・・
やっぱり、これ、オカシイ、変、フツーじゃない・・・・・・・・よな?
ということが、実際に目の前で起こる。
 「あれ?もしかして私がどうにかしちゃってる?」
と、混乱し、一旦、確認したくなる。
こういう状況は、介護に少しでも携わったことのある方は、多分、絶対に、一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。

もしも。
穏やかな認知症生活、穏やかな介護が成り立っていたとしても、
 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ!マジっ?」
 「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ!ヤバっ!」
は、必ずある…はずです。
そして、日常生活で、ハプニングは、重なる。
「さて、時系列に並べて、今までの経緯を書き記そう!」
・・・と思っていた矢先、

 レビーな彼女、救急車に乗る(3回目)

そして、

 大腿骨頸部骨折 (;一_一)

・・・・・イヤだ~! (/ω\)
手術をし、入院。

そもそも、施設内での夜明け前の怪我。母にとって、とても可哀想な事故。……色々な要因が複雑に絡んだ末の事故。腹立たしくもあり。
そういう時に限ってあれこれと身近な事件(必要なものが壊れるとか…)が重なるもの。

ええい!もう、時系列で整理するとか関係なしに、覚えている限りの事件簿を思いつくままに記すことにしよう!

 ということで、
今回は、キャッチ―なタイトル「カラン・カランカラン事件」


レビーな彼女は時計ウサギ

レビー小体型認知症は、いわゆる「そこそこ健康で普通な凡人」には見えないものが見えたり聞こえないものが聞こえたりする。(幻視・幻聴・幻覚)レビーな彼女とつき合っていると、彼女は、凡人の私のすぐ横にいながらにして「不思議の国のアリス」の世界にいるようなもの…だと私は推測しています。
そして、彼女は「アリス」というよりも、いつも何かに駆られている「時計ウサギ」のようです。タイヘンダ~タイヘンダ~。遅れちゃう!
家中徘徊時、彼女は、私が振り向いたときには姿を消し(ワープ、もしくは瞬間移動)押し入れのどこからそれを探してきた?というモノを探し出してきたり。嗚呼、イリュージョン。
そう、アリス・イン・ワンダーランドの住人と推測される彼女は、時々特殊能力を目覚めさせる・・・のです。


夜中に鳴り響く、ポタン、ポタン、カラン、カラン

今回の母は・・・さて、どんな能力を使ったのか。真相は誰にも分かりません。

夜11時過ぎ。
父から「ちょっと二人(私たち夫婦)で一緒に来てくれないか?」と電話。
既に「後は寝るだけ状態」だったけれども、家近なので、夜道をささっと歩いて父宅へ。
母はそれまでウロウロと室内徘徊をしていたらしいが、この時は既に就寝中だったので、そーっと家の中へ。

「ちょっと・・・こっち来て見てくれ。」

連れていかれたのはお風呂場。

ポタン、ポタン・・・カラン・・・カランカランカラン・・・

ポタンポタンは水の音。
カランカランと音を立てて回るのは、シャワーの下の混合栓のカラン。

ちょっと旧タイプの透明な、右に回せばシャワー、左に回せば蛇口という、あのカランです。
その透明のカラン、恐らく内部が破損した状態で空回りして、シャワーが止まりきらずに水が滴っている状態。

「ジャージャー流れてるんじゃないけれど、ぽたぽたと水の音がして気がついたんや・・・」

冷静な夫が空回りするカランをグイングインと押し込みながらぎゅぎゅぎゅっとすると、シャワーの水は…止まった\(^o^)/

メデタシメデタシ・・・・

では、ない。

さて、どうやって、カランがカランカランになったのか。
3人各自が推理、そしてひとまず顔を見合わせて「てへへへへ~」っと笑うしかない。(3人オードリー。明るい我が家。)

この頃、何とか自立でお風呂に入ることができた母が最後にシャワーを使ったことは間違いない。
推測するに、見当識障害、実行機能障害、などなどの中核症状が絡み合い、その前の日まで使えていたシャワーのお湯を止める方法が分からなくなって、どうしてもお湯を止めたい!止めたいの!止めた~い!一心で・・・・

  1. カランを強烈なチカラで締め切った(締めすぎて折れた)

  2. カランを上からチョップした(へし折った)

  3. カランの上に足をかけて乗った(制限荷重を超えて割れた)

  4. カランを捻じ曲げた(ねじり切った)

  5. カランが突然寿命を迎え、止めきる直前でひび割れた(自然現象)

  6. カランに何らかの力が宿り、エナジーが爆発した(超常現象)

  7. その他

いずれにしても、何かしら摩訶不思議なチカラがかかったことに違いはないです。

「そういえば・・・」
と父。母が寝る前に、
「『バーン』って、すっごぉ~い音がして、怖かった~ああ、怖かった~スゴイ音がした~。」
と言っていたとのこと。カランが内部爆発した時の音のことを訴えていたようです。一体何が原因の「バーン!」だったのでしょう。超常現象でないことを願いたい。

超常現象と言って笑ってはいられない

カランは、次の日に母がデイサービスに行っている間に業者さんに修理をしてもらい、無事復活。しかし、実行機能障害が進んだ母には、混合栓温度調節操作やシャワーとカランの使い分けが、既に難しくなってきている様子。数日前には、温度調節の操作を間違い、冷水を頭からかぶったらしく、危険を伴うと判断して対策を講じました。

対策1
温度調節の部分(お湯は赤、水は青のレバー)は、父が黒い防水テープでぐるぐる巻きにして、難しい表示部分を消した。

対策2
洗身などの入浴介助は基本的に今は必要がないが、シャワーのON/OFFは、温度調整も含めて父が必ず見守る、出来ないときには父が操作することにした。

いずれも、「できる事を奪ってしまう」ことよりも、「お風呂で起こりうる事故防止」を優先しました。考え方次第ではありますが、季節によっては突然水のシャワーを浴びてしまったりすると、危険極まりないし、介助している父が頭から水をかぶったりするのも危険が伴うからです。

その後、洗身や洗髪でどのボトルの石鹸をどうやって使ったらよいか分からなくなった頃には、父がスポンジにボティ―ソープをのせたものを渡す、などの介助をすることになっていきます。そうすると、機嫌よくスポンジで洗身できるので、お姫様体質の彼女にとって精神衛生上もストレスが軽減してイイ感じだったようです。
もちろん、そんな調子ですから、洗顔フォームで歯を磨こうとしたり、また、その逆もあったりもしました。歯磨き粉で洗顔したらスースーするわ・・・ぐらいであれば「そりゃ毛穴が引き締まったねぇ」ぐらいの軽口で済みますが、危険誤飲等につながる可能性もあるので、それらの介助見守りも父がする(時々私)ことになっていきます。
最初は「こんなこともできなくなってきたのか・・・」と邪魔くさがったり、ショックを受けて落ち込んだりしだった父も、母の「今ココ」の状態に合わせた対応をする方が上手くいくし、時間も短縮するし、何より

平和だ!\(^o^)/

ということに気づき、日課の如く、石鹸係をしてくれていました。

在宅介護は「心身健康」「家内安全」「無病息災」をめざす

母ができる事を奪ってしまうのでは・・・という思いもよぎりますが、家庭内の介護は、やっぱり「安全最優先」だと思います。そのためにも「安心」が必要。介護者の「心の安寧」も大切です。「巻き込まれ事故」もなるべく避けたい。
どれだけ手を尽くしても、「家内安全」が脅かされることが多くなってきたとき・・・それが在宅介護の限界判断の境界線なのではないか、と思います。その判断のレベルは個人、家庭によって違って当たり前です。「お隣はもっと頑張ってるから」ではなく、各家庭の「境界線」を見逃さないようにすべきだと思います。 

このカランカラン事件を機に気づいたことが。実家の浴室の窓は大きく、湯船の洗い場側の反対は少し足をかけて昇ればすぐに大きな窓、という構造。ふつうでは考え難いことですが、お風呂に入っている途中に見当識障害で出口を見失ったら・・・その窓から出ようとする可能性は大いにある。「それはないやろ・・・」とは、もう誰も思わない程、見当識障害を受け入れていたので、次の日に取った対策が、

対策3
余程高い場所にある窓、開いてすぐに地面がある窓以外は、扉と間違えて外に落ちないように、ロックを取り付ける。

これで、お風呂から庭の給湯器の上に落ちて転落することは無い!
安全対策は、赤ちゃんよりも厳重にしておくべきです。

対策は、子育てと似てます

ついでに。
お風呂関係でもう一つの見当識障害。

「お父さん、お風呂にどうしても入れな~い!」

と訴える声がするので、見に行くと・・・
お風呂の向かいにある洗濯機の中に必死に入ろうと、もがく彼女の姿が!

 「面白いねん、必死に、入れへん、入れへん、って言いながら洗濯機の中に入ろうとしてるけど、それは無理やなぁ~」

と冷静に笑いながら私に説明する父。

「おい、風呂はこっちや!」
「あぁ、こっちか~」

 まあ、それで済むならば、平和です。

なんでこんなことも分からないの!と、悲しさを苛立ちに変えてしまうよりも。
できないことがあってもいい、万が一、特殊能力を発揮(!)して、洗濯機の中に入り『寒い寒い』と言っている場面に遭遇したら・・・
まず、あらびっくり!と驚いて、笑おう。
「そりゃ寒いわ・・・どうやって入ったの?うはははは。」と。
不思議を不思議と受け止め、びっくり仰天の光景に遭遇したら、素直にビックリする。そこにコントのように非日常の風景があって、遊び心をくすぐられたら、笑う。そう、コントを観て笑うのと同じように、非日常な風景が面白い!と思ったら、笑ったっていい。本人と一緒に笑ったらいい。決して本人をバカにして笑うのではない。起こっていることの非日常的光景を一緒に笑うことに罪はないし、その方がみんなの人生が明るく楽しくなる。ああ、楽しい日常だ。

(おまけ)キーパーソンというカッコいい名前の役割

 ちなみに、「キーパーソン」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。

介護におけるキーパーソンとは、

医師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの窓口となる人で、家族や親戚の意見をとりまとめ、介護の方針を決める際に大きな役割を果たす。

人間のこと。
介護の要でもあり、あちらこちら連絡を取り、あーだこーだ説明し、言い分を聞き、まとめ、考え、判断し、伝える、などのマネジメント業務。何よりもトータルで当事者のためになることが実現するように動く・・・これが結構なボリュームになります。今回の大腿骨骨折の怪我も、キーパーソンとして事実解明、諸手配などなど、様々なことに取り組むことになります。重大インシデントと施設側が言い切った出来事の為、こういうことが起こるとどうなるのか、ひとつのケースとして、後日ひと段落着いた時点で伝えられる範囲を記録を残しておこうと思います。(いつの日かです。)