日本の食品添加物の認可数は世界一

こんにちは!
野嶋3年ゼミのファクトチェックチームの(早田、橋本、李)です。
今回は「日本の食品添加物の認可数は世界一」というX(旧ツイッター)の投稿についてファクトチェックを行いました。

なぜこのテーマを選んだのか

 日本の食品添加物の認可数だけ記載されている国に比べはるかに高く、疑問に感じました。これがもし本当ならば、私たちが口にしている食品の添加物についても理解を深めなければならないと思ったためです。


検証対象

BULLETというアカウント​からのポストです。

Xからの引用(https://twitter.com/nbe222/status/1722499616695017516)

日本の食品添加物がほかの国に比べてはるかに多いと受けとれる内容​

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このポストに対する反応として「狂ってるとしかおもえない!!毎日口にするものですよ。作っている人達、罪の意識はないのですか!私は外国食品購入しています。」「スーパーに行って、まともな食品を探すのに苦労します。コンビニ、外食産業も危険ですね。国民全体がなんとなく不健康。」など



レーティング

出典:FIJのレーティング基準
https://fij.info/introduction/rating

今回の検証対象をファクトチェックした結果、ポストに記載されている数値は、誤りまたは根拠不明と判断され正確な情報が存在していないため、レーティングは「誤り」としました。

検証過程

①食品添加物の定義は国によって基準が異なる

②イギリスの食品添加物の認可数

③フランス、ドイツの食品添加物の認可数

④アメリカの食品添加物の認可数

⑤日本の食品添加物の認可数

という流れで、食品添加物の定義や認可基準、各国の認可数などについて調べました。

①食品添加物の定義は国によって基準が異なる

出典:日本食品添加物協会『日本と海外の食品添加物規制の違い』
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/soumu/attach/pdf/bunkakai-153.pdf

日本食品添加物協会によると、世界各国の食品添加物に関する認可基準は異なると述べられています。提供された画像に示されている通り、日本では一般的な添加物や香辛料、酵素など、食品の一部を除いて、ほぼすべての対象品が添加物に含まれているとされています。

一方で、国際的にはアメリカやヨーロッパなどで、一般的な添加物以外の添加物はほぼ規制されていると見られます。このため、各国の認可基準が異なることから、今回の検証ではそれらを混同して強いて比較することは難しく、日本の添加物認可数が世界一であると言えるかどうかは明言できません。

②イギリスの食品添加物の認可数

出典:農林水産省 令和2年度輸出環境整備推進委託事業 (食品規格等調査) 調査報告書
1. 食品添加物Food Additives
extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/shokuhin-kikaku/attach/pdf/europe-24.pdf

イギリスに関する食品規格の調査報告書によると、食品添加物に関する規則にて26種類のカテゴリーが定義されていると述べています。括弧の内容を見ていくと、甘味料や着色料、保存料など書いてあるため、ポストの画像に示した21種類という数は添加物ではなく、カテゴリーのことではないかと思いました。

また、イギリスの食品基準庁のホームページを確認すると、下の画像のように、食品添加物がすべて公開されていることが確認できました。

出典:イギリス行政機関・食品基準庁のホームページ
https://www.food.gov.uk/business-guidance/approved-additives-and-e-numbers#revision-log

チェックすると、提供された画像に示されるように、個別のカテゴリに、防腐剤が34種類、抗酸化物質が16種類、甘味料が19種類など細かく分類されており、カテゴリーとしては合計26のカテゴリーに分類されるということがわかりました。

個別のカテゴリーに食品添加物の種類の一部抜き書き

したがって、21という数は添加物の総数ではなく個別のカテゴリーだと考えられます。また、細かく分類された添加物の数を計算すると325種類の添加物が存在することが明らかになりました。ということは、前述に判断したことは間違いなく、この数は他の国々特に日本と比較する際の総数ではなく、各々の添加物の個別な数ではなくカテゴリーを示しているということがわかりました。

③フランス、ドイツの食品添加物の認可数

出典:農林水産省 令和2年度輸出環境整備推進委託事業 (食品規格等調査) 調査報告書
7.規制及びリスク評価機関

次に、フランスとドイツの食品添加物について調べました。
まず前提として、2020年にイギリスが既にEUを離脱しました。
しかし、フランスとドイツはまだEU加盟国のため、現在の食品添加物に関する規制は、「7.規制及びリスク評価機関」によって欧州委員会と欧州食品安全機関が担当しているということがわかりました。

出典:欧州委員会による食品添加物のデータベースから検索した結果
https://ec.europa.eu/food/food-feed-portal/screen/food-additives/search

前述したように、フランスとドイツの認可数は同じとなっているため、欧州委員会による食品添加物のデータベースから検索した結果、認められている食品添加物の検索結果は現時点410種類を表示しています。いずれにしても、ポストの画像に示したフランスの32種類およびドイツの64種類という数が大きく違うということがわかりました。

④アメリカの食品添加物の認可数

出典:添加物規制に関する国際比較https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001008754.pdf

厚生労働省のホームページに掲載されている資料によると、アメリカの食品添加物の認定数は約1600種類であるとわかりました。

出典:米国における食品添加物および関連法令
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000046927.pdf

しかしアメリカの場合、食塩・砂糖などの食品もGRAS物質という分類で食品添加物としてカウントされています。そのため、食品添加物の認定数が大きくなっている点は、ファクトチェックする際に考慮する必要があります。
それも、踏まえて調査を行った結果、検証対象の133という数は根拠不明と判断しました。

⑤日本の食品添加物の認可数

出典:厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html

厚生労働省ホームページによると、日本の食品添加物の認定数は831種類ということがわかりました。よって、検証対象の1500という数字は誤っていたと言えます。

まとめ

以上の検証過程により、

  • 食品添加物の認可基準は国や規制によって違うこと

  • ポストした画像の発信源が明記されていないこと

  • ポストに示されている各国のデータが根拠不明・誤っていること

結論として、ポストした内容から特に食品添加物の認可数が「世界一の日本」という点によって、今回のレーティングは誤りとなりました。
また、このポストには、画像の出典元や発信源、説明などの根拠が示されていないため、信頼できる情報かどうかを見抜く力は必要と言えるでしょう。

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