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漫画「gift 上・中・下」 *20/8/25

読書記録:
漫画「gift」
 gift (上) 白い獣の、聞こえぬ声の、見えない温度の、
 gift (中) 赤い桎梏の、約束の場所の、望んだ十字架の、
 gift (下) 薄紅めく空の、潤びる螺旋の、光る岸辺の、

あらすじ:
宥は美しく獰猛な青年・勁をボクサーの道へと誘うが、性的指向を知られ奇妙な共犯関係に陥る……。邂逅と宿命の物語、上巻!!

以前電子書籍フェアで購入したものの、3冊一気に読みたくて機を伺っているうちにタイミングを逃し続けていました。
なかなか、この長く詩的なタイトルと、ボクシングジムが舞台ということで食指が動かずにいましたが、評判通り、いい意味で重厚感があって、良い大作でした。

懐かしさを感じる重厚感のあるストーリー

なんだか10年くらい前までは、これぐらい重たくて読み応えのある作品はよくあった気がしますが、久しぶりにこんなに重厚感があって骨太な作品を読んだなと思いました。
勁も宥も、家族との関係の描写が数多くあります。そして、ジムに通う人々や、そのあと出てくる新興宗教の人たちなど、それぞれのキャラクターがしっかりしていて、一本の重厚な長い映画を見終わったような気分になりました。軽い気持ちで読み始めると、止まらなくなって、なかなか世界観から帰ってこれなくなります。

もともと2015年に上巻が発行されていて、下巻は2018年末。最初は上下巻の予定が、途中から上中下の全3巻になったようです。1巻ずつ買っていた方はじれじれして堪らなかっただろうなと思います。

ボクシングジムが舞台のお話で、中盤から新興宗教も絡んでくるので、最近のBLではなかなか見ない暴力や流血などバイオレンスな痛いシーンも多くあります。
根深い傷を追ったキャラクター二人のため、また、ボクシングがテーマだからか、かなり強烈なパワーでキャラクターたちが(精神的にも)殴りあいをしているような…圧倒的な骨太感です。
なかなか初心者にはすすめにくい展開の物語ですが、青年漫画がお好きだったり、かつて2000年代にこういった作品をよく読んでいた!という方には是非ともおすすめです。

繊細で独特な心理描写

人間的な感情を感じられない勁は、台詞や行動では表現ができておらず、そのかわり勁のなかでの心理描写が事細かに描写されます。描き方も、漫画の中に意味をなさない記号をトーンのように使用したり、他ではなかなか見ない表現をされています。とても痛々しいですが……。
最終話では、勁の心理描写にぐっと泣きそうになってしまいました。

読んでいて「魚住くんシリーズ」を思い出しました。苦悩と再生の物語なので、ああいった心理描写が好きな方にはおすすめしたい作品です。

同人誌での続編

今年になって、同人誌掲載分が電子書籍になっていたようです。


下巻でも、だいぶ最後まで話を書き切ってくれていましたが、ラブラブな二人はあまり描かれていなかったので、このあと読むのが楽しみです。


なかなか気軽に読み返したりはできない作品ですが、最近では珍しく、非常に記憶に残る作品となりました。もっと評価されてもいい作品だと思います。
骨太で長い作品を見たい!という方は、他にそういったBL作品は最近少ないので、これを一番におすすめします。

いままで某ジャンルの似たような髪色のカップリングの二次創作しか読んだことがない一ノ瀬さんでしたが、他の作品も読んでみようと思います。

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