大田区戸籍偽造事件公判傍聴記・2024年5月8日(被告人:岩田樹亞ことY・C)

2024年5月8日

東京地裁17刑事部B係

710号法廷

事件番号:令和5年刑(わ)3005号等

罪名:有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記載・同行使、詐欺、行政手続きにおける個人を識別するための番号の利用等に関する法律違反、免状不実記載

被告人:岩田樹亞ことY・C

裁判長:薄井真由子

書記官:小林幸



本件は、Y・C被告人が、岩田樹亞という25歳年下の架空の妹の戸籍を偽造し、同人になりすましていた事件である。

大々的に報道されたが、執行猶予の可能性が高く、微罪だと考えるため、匿名とした。

9時48分には、法廷前に七人が並んでいた。うち二人は記者らしき人だった。

また、記者たちが7人ほど、別に壁際に列を作って並んでいた。

10時近くになり、ようやく傍聴人の入廷が許可される。

記者席は七席指定されていた。ほぼ満席となる。

弁護人は、癖のある短い髪の中年男性。

検察官は、ショートボブの若い女性。

裁判長は、一人だけであった。セミロングの髪の3~40代の女性である。

被告人は、痩せているが、かくしゃくとした印象の老女であった。70代とのことだが、それより若く見える。ウェーブがかった茶髪をポニーテールにしている。やや褐色の肌。黒いマスク、黒い長袖の服、黒い長ズボン、と黒づくめの恰好であった。ブーツを履いている。被告席に前を向いて座っていた。刑務官はついていない。

10時より、岩田樹亞ことY・C被告人の、第三回公判は開始された。


裁判長『それでは開廷します。3月28日付の審理から始めます。被告人は、前に出て、証言台の前に立ってください』

被告人は、証言台の前に立つ。

裁判長『3月28日付追起訴状、受け取っていますか』

被告人『はい』

裁判長『それではどうぞ』


<公訴事実>

被告人は、別人である岩田樹亞になりすまし、同人名義の運転免許証を不正に入手しようと企て、令和5年7月26日、東京都府中市1番地の1、運転免許証試験会場において、行使の目的で、東京都公安委員あての運転免許申請書に被告人の写真を貼付し、答案用紙と申請書にそれぞれ各氏名欄に岩田樹亞と記載し、持って岩田樹亞名義の運転免許証申請用紙一通、および答案用紙一通を偽造したうえ、前記岩田樹亞になりすまし、運転免許証申請書一通、学科試験答案用紙一通を、真性に成立したように装い提出し、虚偽の申し立てをして運転免許証交付を申請し、運転免許証に被告人の顔写真を出させ、氏名欄に岩田樹亞などの虚偽の記載をさせ、もって公務員に対し虚偽の申し立てをして、運転免許証に不実記載をさせたものである。

罪名および罰条:有印私文書偽造、免状不実記載

以上


裁判長『黙秘権ある。間違いは』

被告人『いえ、ありません』

裁判長『弁護人は』

弁護人『はい、弁護人としても公訴事実は争いません』

裁判長『では、元の席に戻ってください』

被告席に戻る。


<冒頭陳述>

検察官が証拠により証明しようとする事実は、以下のとおりです。

第一・犯行に至る経緯及び犯行状況等。

被告人は、令和5年付公訴事実、令和6年付公訴事実の犯行に及び、岩田樹亞名義の住民票およびマイナンバーカードを入手した。被告人は、令和4年ころ、岩田を名乗っており、原動機付自転車を運転していたが、岩田名義の運転免許証を所持していませんでした。警察に運転免許の提示を求められた際、自身の本名であるY・C名義の運転免許所を提示すれば、警察に発覚すると考え、岩田名義の運転免許証を入手しようと決意しました。被告人は、同年10月12日に、岩田になりすまし、運転免許証を入手しようとしたが、運転免許試験場に勤務していた警察官にY・Cであることを看破され、運転免許証の交付を受けることはできませんでした。令和5年7月26日に、再度岩田名義の運転免許証を入手しようとして、公訴事実の犯行に及びました。

その他、情状について。

以上の事実を立証するため、証拠カードに記載の関係各証拠を請求します。


被告人は、冒頭陳述を、手を組んで、座って聞いていた。

弁護人は、提出した証拠意見書のとおり。53~55同意、60不同意、61~62同意。62は被っているとのこと。63以降の証拠物は異議なし。乙号証はいずれも同意。同意書証と証拠物は採用される。


<要旨の告知>

甲53、54号証、運転免許証試験場の職員の調書。運転免許証の取得方法について。保健所、マイナンバーカードが必要。学科試験の前に職員に、住民票とともに提出する。受験番号、氏名、年齢を記載する。運転免許証用の写真を貼れば、運転免許証交付できる。

甲55,56号証、学科試験の複写。いずれも岩田樹亞と記載。

甲57号証は、岩田樹亞名義の運転免許証の写真撮影報告書。

甲58号証、岩田樹亞名義の運転免許証撮影。

甲59号証、防犯カメラ解析結果。

甲61号証、令和4年10月11日にも、岩田樹亞になりすまして、警官に発覚した。

甲62号証、被告人方捜索差押。岩田樹亞名義の銀行口座等のキャッシュカードを発見。

甲63~68号証、被告人が偽造した書類。

乙12~14号証、被告人がマイナンバーカードを偽造したことについての自白調書。

乙15号証、被告人の自白調書。岩田名義で警備会社で働いていた。氏名偽っているの発覚すると考え、運転免許必要と考えた。

乙16号証、上申書。妹である岩田樹亞になりすまし、運転免許証を取得しようとしていた。

以上


裁判長『立って』

被告人は、証言台の前に立ち、マスクを外す。

検察官『甲63号証を示します。就籍届一式』

被告人に渡す。

検察官『貴方が書いた』

被告人『はい』

検察官『いらない』

被告人『はい』

弁護人も近くによって見ている。

検察官『甲64号証を示します。受験記録一式になっていますので、該当箇所の審判申立書示します』

被告人に見せる。

被告人『はい』

検察官『弁護士にお願いして作る』

被告人『そうですね、はい』

検察官『甲65号証示します。住民異動届』

被告人『はい』

検察官『書いた』

被告人『はい』

検察官『いらない』

被告人『はい』

検察官『甲66号証示します、健康保険証の交付申請』

被告人『はい』

検察官『貴方が書いた』

被告人『はい』

検察官『いらない』

被告人『はい』

検察官『甲67号証示します』

被告人『はい』

検察官『貴方が書いた』

被告人『はい』

検察官『いらない』

被告人『はい』

検察官『甲68号証を示します』

被告人『はい、そうです』

検察官『貴方書いた』

被告人『はい』

検察官『いらない』

被告人『はい』

検察官『以上』

被告人は、被告席に戻る。

裁判長『不同意証拠、被告人質問後、どうするか考える』

検察官『はい』

裁判長『弁護人立証は』

弁護人『被告人質問を』

裁判長『被告人質問、被告人、前へ』

被告人は、証言台の椅子に座る。

裁判長『じゃあ、弁護人からどうぞ』

被告人質問が始まる。被告人の声は、小さめであり、やや早口。しかし、多弁であった。口調は、さばさばとした印象だった。

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