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津山女児殺害事件公判傍聴記・2021年11月10日(被告人・勝田州彦)

2021年11月10日
岡山地裁第一刑事部合議係
100号法廷
事件番号・平成30年(わ)第528号
罪名・殺人等(殺人、強制わいせつ致死、住居侵入)
被告人・勝田州彦
裁判長・倉成章

9時20分の時点で、10数人がすでに法廷前に来ており、カメラがスタンバイしていた。入廷は9時30分に許される。傍聴人は、最終的に20人ほどであった。
記者席は11席指定され、9人が座る。
書記官は、髪の短い青年で、白いマスクをつけている。
大量のファイルが運び込まれ、検察官のデスクの下に積み上げられる。しかし、被告人である勝田州彦は、先日の法廷で検察官の被告人質問に対し、「完全黙秘するつもりです」と述べていた。この大量のファイルは、役に立つのだろうか。
検察官は、これまで通り、眼鏡をかけた痩せた青年の市村、痩せた短髪の青年である佐川、眼鏡をかけたがっしりした中年男性の土方の三人である。全員、白いマスクをつけている。
その後ろに、被害者参加代理人の弁護士らしき人物が座る。髪の長い若い女性と、眼鏡をかけた中年男性である。両名とも白いマスクをつけている。
倉成裁判長は、白髪交じりの髪を真ん中で分けた初老の男性。裁判官は、髪を後ろで束ねた中年女性と、髪を七三分けにした青年である。全員白マスクをつけている。
そして、開廷前、二分間の撮影が行われた。
撮影後、弁護人が入廷する。賀川進太郎弁護士と、三浦弁護士である。賀川弁護士は、柔らかい髪に、浅黒い肌、がっしりした体格である。グレーのスーツ姿であり、法廷で唯一、黒いマスクを着けていた。三浦弁護士は、痩せており、眼鏡をかけた短髪の中年男性である。こちらは白いマスクをつけている。開廷前、二人で少し話をし、机の上に大量のファイルを積み上げていた。
被告人である勝田州彦は、下を向いて入廷した。頭は丸坊主にしており、毛の生えぎわはやや後退し、後頭部が少し薄くなっているようである。痩せており色白。大人しそうな風貌である。肩に白いラインが入った、紺色のジャージの上下を身に着けている。入廷し、縄が外される。そして、弁護人の隣の席へと座る。
そして、裁判員が入廷する。裁判員は六人であり、痩せた中年男性、ショートカットの中年女三名、セミロングの若い女性、がっしりした体格の中年男性。補充裁判員は、裁判員の後ろの席に四名座っていた。
こうして、勝田州彦の公判は、10時より開廷した。

裁判長『それでは開廷いたします。勝田さん、証言台の前へ』
被告人『はい』
被告人は促され、証言台の椅子に座る。
裁判長『前回の続き、弁護人から被告人質問追加ですることはありますか』
賀川弁護士『どうしようかな、ちょっと』
検察官の被告人質問の前に、弁護人の被告人質問が若干行われることとなった。賀川弁護士は、いつも通り大きな、訛りのある声で、質問を行った。被告人は、どこか鼻の詰まったような声で、それに答えた。

<賀川弁護士の被告人質問>
弁護人『弁護人から』
被告人『はい』
弁護人『よろしいですか』
被告人『はい』
弁護人『弁護人から聞きますが、よろしいですかね』
被告人『はい』
弁護人『一昨日と先週聞きましたが』
被告人『はい』
弁護人『よく解らない部分があったので、もう一度聞く』
被告人『はい』
弁護人『9月27日ね』
被告人『はい』
弁護人『平成29年、大阪刑務所に』
被告人『はい、はい』
弁護人『岡山県警来た時』
被告人『はい』
弁護人『津山事件以外の』
被告人『はい』
弁護人『本件以外の事を喋ったじゃないですか』
被告人『はい、しゃべりました』
弁護人『あのことについて』
被告人『はい』
弁護人『何で喋ったのか』
被告人『はい』
弁護人『お土産の意味は』
被告人『はい、あえて自分から不利益なことを言うと、私は正直者だと思われて、信じてくれると思ったからです』
弁護人『そういうこと』
被告人『はい』
弁護人『10月26日に』
被告人『はい』
弁護人『今度はブラウスとったこと言った』
被告人『はい』
弁護人『ここについては』
被告人『はい』
弁護人『供述では』
被告人『はい』
弁護人『お土産と言っているが』
被告人『はい』
弁護人『これの意味は』
被告人『これも、私が、あえて不利益なことを言うことで、私が正直者だということを解ってもらって、津山事件の事は無関係だと思ってくれると思ったからです』
弁護人『11月に』
被告人『はい』
弁護人『貴方の方から、首絞めたけど殺していない、真犯人がいると手紙を出した』
被告人『はい』
弁護人『これは、お土産と関係』
被告人『はい、あります』
弁護人『どのように』
被告人『一度調書にサインした以上・・・』
弁護人『それとは別』
被告人『はい』
弁護人『切り替えてね』
被告人『はい』
弁護人『捜査段階の話だけど』
被告人『はい』
弁護人『お母さんに手紙送った』
被告人『はい』
弁護人『首絞めたけど殺してないと』
被告人『はい』
弁護人『秋田とクマシロへの話したと』
被告人『はい』
弁護人『ここの話。ちょっと頭が混乱している、整理して』
被告人『はい』
弁護人『そのときね』
被告人『はい』
弁護人『首絞めたけど殺してない、真犯人が』
被告人『はい』
弁護人『別にいると言っている』
被告人『はい』
弁護人『関係は』
被告人『関係あります』
弁護人『どういう関係ですか』
被告人『あえて不利益なことを言えば、正直者だと思われるからです』
弁護人『そうですね』
被告人『はい』
弁護人『9月になると、一昨日の質問で』
被告人『はい』
弁護人『事件についてネット検索をしたと』
被告人『はい』
弁護人『今回の事件について』
被告人『はい』
弁護人『あったじゃないですか』
被告人『はい』
弁護人『あれは、いつまでやっていたか覚えていますか』
被告人『はい、加古川刑務所に入るまでは、毎年9月ごろになったら、やっていたと思います』
弁護人『入る前に、逮捕されているね』
被告人『はい』
弁護人『入るころというのは』
被告人『はい』
弁護人『捕まる前までしていた』
被告人『はい、そうです』
弁護人『捕まったら、当然、ネット出来ないね』
被告人『はい、できません』
弁護人『捕まるまではしていたと、そういう記憶ですか』
被告人『はい』
弁護人『そのサイトですけど』
被告人『はい』
弁護人『どんなサイト見た』
被告人『はい、グーグルなどで匿名掲示板を見ていました』
弁護人『グーグルなどで何を見ていた』
被告人『匿名掲示板です』
弁護人『匿名掲示板』
被告人『はい』
弁護人『誰が書いているか解らない』
被告人『はい』
弁護人『何が書かれていた』
被告人『津山事件でAさんが殺されたことが書いてありました』
弁護人『それが書いていた』
被告人『はい』
弁護人『犯人が捕まったか』
被告人『はい』
弁護人『書かれていた』
被告人『そこまではちょっと覚えていません』
弁護人『TVのチカラの話』
被告人『はい』
弁護人『TVのチカラでAさんの役二人いた』
被告人『はい』
弁護人『覚えていますか』
被告人『はい、覚えています』
弁護人『白い半そでシャツ、黒っぽいスカート』
被告人『はい、はい』
弁護人『もう一人、モデルいた』
被告人『はい、覚えています』
弁護人『そっちの人、白い半そでと、黒のスカート?』
被告人『違いました』
弁護人『なぜ、白の半袖の人を被害者に選んだ?』
被告人『はい、被害者役の女の子がかわいくて、印象に残ったから覚えていました』
弁護人『そういうことね』
被告人『はい』
弁護人『家の前にね』
被告人『はい』
弁護人『駐車場があって』
被告人『はい、はい』
弁護人『貴方、車止まってたと言っていたが』
被告人『は、ちょっと覚えていません』
弁護人『そんなことも言っているんですけど』
被告人『はい』
弁護人『何の記憶』
被告人『これはTVのチカラによる記憶です』
弁護人『TVのチカラでは、車はとまっていたんですね』
被告人『はい、とまっていました』
弁護人『すみません、終わります』

続いて、検察官の被告人質問となる。がっしりした体格の中年男性である、土方検察官が被告人質問を行うため、立ち上がる。

<土方検察官の被告人質問>
検察官『土方の方から質問します、いいですか』
被告人『・・・』
検察官『平成30年6月5日の検察官の取り調べで、検察官から黙秘はなぜかと聞かれ、貴方は、「これ以上証拠を残したくないからです」と答えている。貴方は、喋ること自体が証拠になると、解っていたのではないですか?』
被告人『・・・』
検察官『次に、13年も前の事件なのに、事件発生時マークⅡに乗っていることまで覚えているの、貴方が実際に体験しているからではないですか?』
被告人『・・・』
検察官『平成16年9月ごろ、事故の影響で長距離運転できないと母がしっていると言っている。なぜ、手紙で母に、事故で津山に行けないと伝えない?』
被告人『・・・』
検察官『次、TVのチカラ最後に見たの、平成17年ごろ。やってもいない事件なのに、平成29年や平成30年になっても覚えていたのですか?』
被告人『・・・』
検察官『ドアノブやトイレの間取りなど、TVのチカラ見て記憶していると話している。しかし、なぜ、両手で首を絞めたと記憶している?TVのチカラと違う。これはなぜですか?』
被告人『・・・』

裁判長『勝田さん、発言されないことが続いていますけど』
被告人『はい』
裁判長『黙秘されるということですか』
被告人『はい』
裁判長『検察官、質問続くかもしれないが』
被告人『はい』
裁判長『一切答えない』
被告人『ありません、はい』
裁判長『どんな質問されても』
被告人『答える気はありません』
裁判長『ないですか』
被告人『はい』
裁判長『検察官、質問はどうされますか』
検察官『続けます』
裁判長『弁護人はご意見は』
賀川弁護人『異議!質問に答えないとしている。これ以上質問に晒すのは、黙秘権の侵害。やめてほしい』
裁判長『検察官、ご意見は』
検察官『黙秘の自由、確保されている。異議は失当』
裁判長『裁判所としては、弁護人の異議自体に理由はないものとして、棄却します。しかし、これ以上の質問重ねることは、必要性がないと考えます。裁判所としては、訴訟指揮として、これ以上、検察官の方で質問重ねることは相当ではないので、許さない』
検察官『異議。供述の信用性争点となっている。質問の必要性は高い。検察官がしたのは、ごくわずかな質問である。一定の質問をして、反応を見て、判断すべき。現段階で、質問制限は相当性を欠いている。裁判所の訴訟指揮は、法令違反のため、異議』
裁判長『弁護人』
賀川弁護人『異議には理由ない。付け加えると、被告人質問を続けることで、検察官の問題意識を裁判所に明らかにする効果、副次的に出てきてしまう』
裁判長『検察官の異議は理由ないものとして、棄却します』
検察官『被告人質問を許さないと』
裁判長『はい』
こうして、検察官の質問は、あっけなく終了させられた。裁判所からの質問へと移る。
裁判長『今日、補充質問するか、裁判員も含めて10分ほど協議して決めたい』
賀川弁護人『行うなら時間は』
裁判長『解らない。すぐに始まることはない』

10時15分から10時25分にかけて、休廷となる。
休廷中、弁護人二人は、何か話をしていた。賀川が三浦に記録を見せていた。
被告人は、休廷中はいったん下がってもらうこととなり、縄をかけられ、退廷させられる。
検察官は、検察官同士、あるいは参加代理人と何かを話していた。
被告人、下を向いて入廷し、直に証言台の椅子の方に案内され、座る。縄と手錠が外され、裁判員ら入廷する。

裁判長『再開する。今後の予定。今日の期日はこれで終わり。補充質問、明日行う。特に予定されているうちで、異存ないね』
賀川弁護人『はい』
私は、非常に異存があった。これだけ時間が空いているのだから、今日ですべて行ってしまえば良いではないか。
裁判長『明日は10時30分開廷。いいね』
賀川弁護人『はい、終わりは5時』
裁判長『はい、どれぐらい聞くか、弁護人や検察官の質問どうするか』
裁判長『勝田さん』
被告人『はい』
裁判長『終わります』
被告人『はい』
裁判長『裁判所から話を聞かせてもらう』
被告人『はい』
裁判長『終わります』
10時30分、裁判所からの被告人質問がなかったため、たったの30分間で閉廷した。予定では、17時までとなっていた。
被告人は、弁護人に何か話しかけられ、「はい!」と答えて、退廷した。


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