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滋味溢れるミニマリズム映画【パーフェクトデイズ】♯102




パーフェクト・デイズ    2023年/ドイツ、日本



【ストーリー】

東京でひとり暮らしをしている中年のヒラヤマは
公共トイレの清掃員をしている。
決まったルーティーンで穏やかに過ごす日々。
色んな人と関わり、東京という大都会を背景に
ヒラヤマの日常を淡々と追う。




【解説というか、レヴューというか、】

世界を見ても、日本ほど清潔な国はないって話しを
よく耳にする。
特に日本のトイレは外国人から見ると、
かなり清潔なのだとか。

そこには丁寧で細やかな、職人のような精神で
役目を務め上げる清掃員がいる。
ヒラヤマという男だ。
決して目立つことのない彼は、影のような存在。
私たちが気持ちよくピカピカに光ったトイレを
使用できるのは影のお陰なのだ。

そんな影に徹するヒラヤマの日常を追う
とても面白い視点でがこの作品。
特段キレイな映像を見せている訳ではないのに
観客には綺麗な気分にさせてくれる。
作中に出てくる古本の店主が言っていたように、
こういう人ってもっと評価されていい。

SNSを使わずとも人と繋がるヒラヤマ



ヒラヤマという人間を作りだすのは大都市トーキョー。
この映画は東京の姿も映し出す。
決まったルーティンの中で全く違う毎日を生きる
おじさんの背景には、人生を彩るトーキョーがある。
ヒラヤマの目に映る東京という街や人々は、
風景の一部に見えているんだろう。
ヒラヤマはいつもどこかを眺める。
写真が趣味の彼だが他にも音楽、読書の趣味がある。
時に音楽の一部になるし、本の世界にも浸る。
実際、東京にはこのようなカルチャーを楽しむ
おじさんがたくさんいるんだろう。
1日の終わりには、その日の出来事を象徴するような
モノクロの夢を見て締めくくる。
そして朝を迎える。新しい1日の始まりだ。

無口で孤独に見えるけど、
人とはしっかりと関わっていて、
たまには喜びたまには怒りもする。
そして失恋気分に浸ることだってある。

恋敵のおじさんとの会話でふと気が付く。
浅く関わっている人達と東京によって彩られた毎日。
その一瞬一瞬を日々味わえるなんて
なんて人生は素晴らしいのだ、
これ以上望むものは何もない。
満足だ。

完璧な人生に感情が昂るラストシーンに
こちらも胸がいっぱい。

深い味わいのある楽曲が流れ、何処となく懐かしい気分。
年末という寂しい時期に心が満たされる
暖かい映画だった。


役所さんの暖かい演技


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