子守歌を歌ってくれ

寝間着に着替えて
睡眠薬を口に放り込んで
さあ寝るぞという前に
煙草を一本吸うのが日課になっている
ぼんやりと何も考えずに
ただ今日あったことを振り返る5分間
あの人にああ言ったのまずかったかな
明日缶コーヒー買ってこう
でもよく生きた
それで100点じゃないか
煙草の灰を落としながら
段々短くなってくカウントダウン
途中で目が醒めませんように
真夜中の孤独は強烈だ
過去の闇に引きずり戻される
それも全部抱えて生きてんだよ
邪魔をするなこの脆いサバイバーの
戦ってない人間などいない
だからこそ眠りに夢を託すのだ
母親のおなかの中で
世界の全てから守られていた頃に
束の間のプレイバック
いつからだろうな
甘えられなくなってしまったのは
甘えたり甘えられたりする存在に
長らくお目にかかってないせいかな
大人になるっていい
自分ひとり食わせていければ
誰にも文句は言われないのだから
だけどその代償として
ひとりの夜に耐えなければならない
誰かの香典を包む度
おおよそ正しくない自分の人生を思い知る
それでも生きて行くしかない
最後の一口を吸い終わって
煙草をもみ消した
何だか寝る気がしないのは
足りないもののせいだろう
誰か子守歌を歌ってくれよ
俺が眠るまでずっと傍で
ふっと笑って頭を振った
来るはずのない天使を待ってみようか
あと一本煙草を吸い終える5分間だけ
睡眠薬でとろりとした心に
誰かがそっと触れた気がした

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