オール5とマリアージュ

給食の牛乳が大嫌いだった
少しでも背を伸ばしたいらしい
ひょうきん者でチビの松尾くんが
いつも代わりに飲んでくれたから
持ちつ持たれつってやつだ
ご飯メニューの時も添えられてくるなんて
マリアージュって言葉を知らないのか
学年一位の頭脳を持った私の
唯一の弱点であった
先生からの信頼も絶大でオール5の成績を叩き出しても
ちっとも気取ったりしなかったから
同じ年のはずの同級生たちから
姉さん姉さんと慕われていた
高校に上がっても大人になってもモテるのに変わりはなかったが
あの頃にもらったラブレターや精一杯の告白の言葉を
忘れることはないだろう
牛乳さえなければ完璧な中学時代であった
松尾くんの背は伸びただろうか
必死でボールに喰らい付くバスケ姿は
チビなりにかっこよかったけど
思い返せばみんなと友達で
友達は一人もいなかった
それが学年一位の孤独だった
そんな風に悟ってたから
誰とも心を許し合えなかったのかもしれない
一人放課後に音楽室でピアノを弾くのが癒しだった
だがそこにギャラリーの恋する男子がわんさと隠れていたと
知って大笑いしたのはずっと後の同窓会でのお話

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