見出し画像

Hymnen an die Nacht

Novalis “Hymnen an die Nacht”

Getrost, das Leben schreitet
Zum ew'gen Leben hin;
Von innrer Glut geweitet
Verklärt sich unser Sinn.
Die Sternwelt wird zerfließen
Zum goldnen Lebenswein,
Wir werden sie genießen
Und lichte Sterne sein.

Die Lieb' ist freigegeben,
Und keine Trennung mehr.
Es wogt das volle Leben
Wie ein unendlich Meer.
Nur eine Nacht der Wonne —
Ein ewiges Gedicht —
Und unser aller Sonne
Ist Gottes Angesicht.


『夜の讃歌』

心配することは無い、命はゆっくりと歩む
永遠の命の方へ、
内なるほのおに広げられ
われわれの感受性は明るく輝く。
星の世は滲み
黄金の命のぶどう酒となるだろう、
われわれはそれを口にし
またたく星となるだろう。
 
愛は惜しみなく与えられ、
これ以上離れることは無い。
命は横溢する
まるで果てしない海のように。
ただひとつ、この上無い喜びの夜がある──
ひとつの永遠の詩がある──
そしてわれわれすべての者の太陽は
神の顔をしている。


・原文は3つの哲学的な散文詩のあと、2つの讃歌の中で韻文詩へと移行する、という変わった形式の連作詩。上の訳は最後の韻文詩から抜粋(全文はこちらで読めます。な、なげー)。散文詩の部分も哲学的でありながら美しい詩情を感じられるので、ぜひ全文読んで頂きたい。

・ノヴァーリス(Novalis, 1772-1801)
ゲオルク・フィリップ・フリードリヒ・フォン・ハルデンベルク (Georg Philipp Friedrich von Hardenberg)。「ノヴァーリス」はラテン語で新開墾地を意味する。
彼は非常に敬虔なキリスト者で、恋人の死の訪れを通し、少年時代の愛の喪失を体験する。それ以来、すべての思想は死と永遠の生命へと向けられ、“Hymne an die Nacht”もそれらのイメージから生まれた。昼の間は命と思慮深い思想を意味し、夜は死と絶対の奇跡を意味する。初めに死を通して、果てしない詩の上に本当の現実を切り拓く。
「Poesie」はギリシア語の原語では「poiesis」であり、「創造的な活動」という意味がある(フィヒテの哲学用語「事行(意識の中には事実よりも根源的なものがある、というドイツ観念論の思想の一つ)」と相関関係にある)。すべての詩を変えることになるロマン主義芸術は、かえってそれにより本当の真実へと導いてゆく。芸術、哲学、宗教、愛、そして死はノヴァーリスにとって心から繋がっている。それらは永遠の命への門なのである。それはしかし、果てしない海のようである。すべての固まって硬直した姿は黄金の生命のぶどう酒のうちに、ただひとつの愛の夜、ただ一つの詩のうちに溶けてゆく。
 
・“Hymne an die Nacht”(1800)
1793年、ノヴァーリス22歳の頃に12歳の少女ゾフィー・フォン・キューン(Christiane Wilhelmine Sophie von Kühn)と出会う。彼女は幼いながらも聡明で、ノヴァーリスに詩的インスピレーションを多数与えた。しかし、1797年に肺結核により15歳の若さでこの世を去る。以降、ノヴァーリスは彼女を神聖視するようになり、これを「ゾフィー体験」と呼ぶことがある。
本作で用いられる「星」「海」「太陽」などの自然描写は、神秘的なもの、特に「永遠の命」の象徴である。「永遠の命」をうたいながら、詩全体は死後の世界を描いているようでもある。死を生命の終わりとしてでは無く、途切れること無く永遠に続く現象として捉え、恋人・ゾフィーの命を永遠のものとして描こうと試みたのではないだろうか。


無職を救って下さい。