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Vorfrühling

Hugo von Hofmannsthal “Vorfrühling”

Es läuft der Frühlingswind
Durch kahle Alleen,
Seltsame Dinge sind
In seinem Wehn.

Er hat sich gewiegt,
Wo Weinen war,
Und hat sich geschmiegt
In zerrüttetes Haar.

Er schüttelte nieder
Akazienblüten
Und kühlte die Glieder,
Die atmend glühten.

Lippen im Lachen
Hat er berührt,
Die weichen und wachen
Fluren durchspürt.

Er glitt durch die Flöte,
Als schluchzender Schrei,
An dämmernder Röte
Flog er vorbei.

Er flog mit Schweigen
Durch flüsternde Zimmer
Und löschte im Neigen
Der Ampel Schimmer.

Es läuft der Frühlingswind
Durch kahle Alleen,
Seltsame Dinge sind
In seinem Wehn.

Durch die glatten
Kahlen Alleen
Treibt sein Wehn
Blasse Schatten

Und den Duft,
Den er gebracht,
Von wo er gekommen
Seit gestern Nacht.


『早春』
 
春風は走りすぎる
葉のない並木道を、
風変りなものたちは
そのそよぎにひそんでいた。
 
ゆるやかに揺れ動く、
咽び泣く声の中で、
しなやかにまといつくのだ
そのみだれた髪のうちに。
 
はらはらと散らす
アカシアの花を
そして息づき燃える、
四肢の熱を鎮めた。
 
声あげて笑う
唇にかるく触れ、
やわらかく目ざめた
野のおもてを吹きめぐった。
 
横笛の管をくぐって
こみ上げる叫びとなり、
仄明るい赤さを
通り過ぎていった。
 
口をつぐんで通り抜けた
恋のささやきの部屋を
そっと身をこごめて消した
その吊りランプのきらめきを。
 
春風は走りすぎる
葉のない並木道を、
風変りなものたちは
そのそよぎにひそんでいた。
 
そのなめらかな
葉のない並木道に、
そよぎは追い立てる
青ざめた影を。
 
その追い立てられた香いは
運び込まれ、
吹き寄せる
昨日の夜の中に。


・フーゴ・ラウレンツ・アウグスト・ホーフマン・フォン・ホーフマンスタール(Hugo Laurenz August Hofmann von Hofmannsthal, 1874年2月1日 - 1929年7月15日)
オーストリアの詩人・作家・劇作家。代表作に『チャンドス卿の手紙(1902)』『薔薇の騎士(1911)』『イェーダーマン(1911)』がある。

・まだ寒く「葉のない並木道」を春風は通り過ぎていく。生命が溢れ出し、恋を象徴する季節が訪れる直前であるからか、「ひそむ」「息づく」「仄明るい」といった、まさにこれから春が始まらんとするさまを予感させるような表現が多用される。ここでの自然描写は、恋人たちの感情を暗喩している。至るところにひそんでいる恋の予感の間を、春風が駆け抜けてゆく。それらは春風のあたたかさによって芽吹くように、あるいはめくり上げられるように、そっと姿を現す。


無職を救って下さい。