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[Diamond League Paris] Men 2miles Preview

【Jakob Ingebrigtsenの挑戦】

DL ParisのニュースにてJakob Ingebrigtsen(NOR)の2miles WR(7'58"61,Daniel Komen,1997)への挑戦がリリースされた。

Jakobの3000m


実はJ.Ingebrigtsenは2mileの自己記録はない。
3000mは[7'27"05,2020]で現世界歴代13位がパーソナルベスト。[2020DL Roma]でマークしたものになる。

同レースにはKiplimo(UGA)とMcsweyn(AUS)が出場し、7'26"64(現世界歴代11位)/7'28"02(現世界歴代22位)の記録になっている。

2020 DL Rome Men 3000m

レース展開は、アイルランドのTobinが1800mまでペースメイク。その後2500mまではMcsweynが牽き、KiplimoJakobが続いた。ラスト400mを57”で捲るスパート。Kiplimoがラスト50mで差し切った。

(個人的にMike Foppen(NED)の7'39"75(National Record)には驚いた。

彼は[1500m]3'35"67・[5000m]13'13"06・[10000m]27'59"10とかなりのロングレンジで好記録を収めている。5000mでも国内歴代1位タイとオランダ中長距離界のスターと言える。彼のシーズン調整次第だが、1500m~10000mまでのオランダ記録を保持するのはそう遠くないかもしれない)

話を戻して、Jakobはフラッシュインタビューで以下のように話した。

「今日は、7'30"の壁を破ることが目標だった。記録にはとても満足している。もう1年この距離のトレーニングを積めば、3000mをさらに速く走ることができると思う。全体的に見れば、今日のレースはいい経験になった。いくつかの良いレースがあったとはいえ、非常に平凡な(不本意な?)シーズンとなっているし、振り返ってみればひどい1年だったが、昨シーズンと比べ進歩もしているし、自己記録も伸びているいいシーズンになったので、来年もさらに進歩していきたい。(これからが)本当に楽しみだ」

int_lt (sportresult.com)
(自己流による訳・原文は上記リンクから)

その翌年、[DL Lausanne 3000m]に出場。
7'33"06のSBで一着。6着までがSUB7'40"の接戦を制した。

2021 DL Lausanne Men 3000m

Sowinski(USA)が1200mまで2'30"/km、Kibet(KEN)が2000mまで5'02"で牽いた。以降は前年の再現でもするかのように、McsweynがJakobの前で、後方にはRosaサポートのAregawi(ETH)の並び。ラスト400mまでMcsweynが先頭で、そこからJakob/Aregawiの追走とスパート。勝負はラスト100mに持ち込まれ、スプリントの差でJakobに軍配が挙がった。

「レースは予想通りにスタートした。Mcsweynは、ペースを上げていくと言っていた。私は控えめなペースでスタートしたかったが、彼を一人で行かせてはいけないと思った。本当にタフなレースだったが優勝するという気持ちが強かった」

int_lt (diamondleague.com)
(自己流による訳・原文は上記リンクから)

このレースを見ると、彼は「速くなった」というより「強くなった」が適切かもしれない。

しかもこの2021年にはご存知の通り東京五輪1500mで優勝している。彼の2021シーズンを見ると、確実に合わせに行っていることが試合構成で分かる。シーズン中17本の内11本が1500m・One mileが[Pre Classic]で1本と確実に、この「距離」「展開」を積んでいたのだろう。
以下に1500m・1mileのレースをまとめる。

〇Indoor
2/09 1500m:3'31"81 
【世界室内フランス大会優勝
3/04 1500m:3'39"89 【欧州室内予選】
3/05 1500m:3'37"56 【欧州室内優勝
〇Outdoor
5/23 1500m:3'36"27 【DL Gateshead優勝
6/09 1500m:3'29"25 【DL Monaco3位】
8/03 1500m:3'36"49 【東京五輪予選】
8/05 1500m:3'32"13 【東京五輪準決勝】
8/07 1500m:3'28"32 【東京五輪優勝
8/21 One mile:3'47"24 【DL Eugene(Pre Classic)優勝
1500m:3'31"92 ※通過タイム
9/09 1500m:3'31"45 【DL Zurich2位】
9/11 1500m:3'33"26 【ノルウェー選手権優勝

これを見るだけでいかに2021シーズンのJakobが1500mに懸けていたかが分かるだろう。しかもそのほとんどが悉く表彰台圏内であることは彼の「パフォーマンス維持」の強さを物語る。

【Jakobの今シーズン】

上記でも語ったように、彼は「パフォーマンスの維持」には世界でも頭一つとびぬけている。
問題は、果たして今季はどれほど仕上がっているのか・ピークを早い段階から持ち上げているか。彼は最高のスタミナとミドルディスタンスへのスピードを持っている。これがいかに調整されているのか。
彼の今シーズンの立ち上がりを見る。

2/15 1500m:3'32"38 
【世界室内フランス大会優勝🥇
3/02 1500m:3'50"29 【欧州室内選手権予選】
3/03 1500m:3'33"95 【欧州室内選手権優勝🏆
3/04 3000m:7'56"57 【欧州室内選手権予選】
3/05 3000m:7'40"32 【欧州室内選手権優勝🏆
5/28 1500m:3'32"59 【DL Rabat優勝🥇

(走るレース走るレースどれも1着。恐ろしい戦績だ、、、)

DL RabatでのOAC勢とのマッチアップ

[Diamond League Rabat Men 1500m]
Jakob Ingebrigtsen(NOR) 3'32"59 SB
Yared Nuguse(USA) 3'33"02 PB
Oliver Hoare(AUS) 3'33"39 SB

<Splits/Laps>
400m…55"56
800m…1'55"13/59"57
1200m…2'52"26/57"13
1500m…3'32"59/40"33(Last400m:55")

ATHM1500M---DIAMOND---FNL-000100--_C73C1_1.0.PDF (sportresult.com)

1000mをおよそ2'23"でペースメーカーのRanc(FRA)が通過し、縦長の集団。Jakob/Hoare/Nuguseの順で1200mを通過。Jakobがラスト200mからの強烈なスパートを炸裂され、後続を引き離す。
「猛者」の貫禄を示した。
以下レースのフラッシュインタビュー。

「パフォーマンスには満足している。いい感じだった。もっと早く走れるはずだったが、最後のターンで風に影響されて少し難しかった。体調(感覚?)が良かったのと順調に練習を積めたおかげで勝てた。他の選手もいいレースができたと思う。今後のレースに向けて準備を始めていく。観客の応援と会場の雰囲気には驚いた」

ATH-------------------------------_FLASH_1.0.PDF (sportresult.com)
(自己流による訳・原文は上記リンクから)

「他の選手も良いレースができたと思う」というのは、Nuguseのことだろうか。個人的にはなかなか面白いコメントだと思う。

Yared Nuguse(USA)についても少しばかり…

ケンタッキー州出身、Norte Dome大卒のOAC所属。
NCAA時代から活躍し、2019シーズンではNCAA屋外1500mチャンピオンになった。2022シーズンからOACに参入後、さらにその大器を着々と広げ、強さを増してきている。近年のブレイクスルーは、
800m:1'46"30
1500m:3'33"02(Outdoor)/3'33"22(Indoor)…北米記録(Split times)
One mile:3'47"38(Indoor)…北米記録
3000m:7'28"24(Indoor)…北米記録
これらの記録であれば、充分国際大会でも戦えるはずだ。
(現にJakobに対して追走できている)
今後のアメリカ中距離界にBTCのTeare/OTCのHockerとともに新たな風穴を開ける日は近いだろう。

偉大な記録たち。

Jakobが挑む2mile、7'58"61。
これは先述したが、Daniel Komen(KEN)によって1997年に樹立された。
彼は、屋外・屋内であっても3000mの当時の世界記録を叩き出した。
(屋外は依然世界歴代1位
屋内は2023年インドアシーズンでL.Girma(ETH)とM.Katir(ESP)によって更新され、現在世界歴代3位)

Daniel Komen(KEN)[1997] 7'58"61
Haile Gebrselassie(ETH)[1997] 8'01"08
Craig Mottram(AUS)[2007] 8'03"50
Tariku Bekele(ETH)[2007] 8'04"53
Matt Tegenkamp(USA)[2007] 8'07"07

(何と錚々たる面々だろうか)

世界歴代5位以上は、2010年代でも更新されず、Joshua Cheptegei(UGA)の8'07"54(2019)とPaul Chelimo(USA)の8'07"59で5/6位に止まり、2020年代に至ってはJ.Kiplimoの8'10"16が最高記録になっている。

2mileの「記録」を狙う上で難しい点は

  • そもそも2mileのレースが少ない
    =レース距離に対しての経験が浅い

  • あったとしても早い展開にならず、「勝負」のレースになる

だと感じる。

しかし、今回の場合あらかじめ記録を狙うことを宣言しているため、Jacob本人もペーサー含めた周りの選手もそれ相応の心持ちができるというものだろう。

Entry List

2023 DL Paris 2mile Entry List
(2023/06/07)

以上が公開されているエントリーリストになる。
有力選手をフューチャーする。

  • Paul chelimo(USA)
    今季10000mに挑戦し、NikeからKiprunにスポンサードを変え、32歳で27'12"73の記録を叩き出した
    オリンピック5000mで2大会連続表彰台に立った実力がどこまで通用するのか

  • S.Mcsweyn(AUS)
    Jacobとは何かと縁がある、、、
    今季は世界クロカン3位
    2月のMelbourne で3000m:7'44"36
    DL Doha 3000m:DNF
    DL Florence 5000m:13'23"81
    (彼のシーズン序盤は例年少々パフォーマンスが不安定、この時期になると調子を上げてくる)

  • Rokkito Kipkurui(KEN)
    U20世界クロカン優勝🥇

現時点(6/7)ではペースメーカーの発表はないが、少なからず着くはず

期待は...

J.Ingebrigtsenは少なからず8'04"は切ってくると漠然と考えている。決して懸念点があるわけではない。だが、イマイチ今シーズン中での好材料と言えるものもない。「勝負」においては好調だと思うが、果たしてそれが「記録」になるとどうだろうか。

Trackstaaによると、3000mの通過が7'26"21。これは彼の3000m自己記録を上回る
仮に2mileの世界記録を更新することになれば、ブダペスト世陸1500m/5000mの二冠がかなり現実味を帯びてくる。

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