スクリーンショット_2018-11-27_14

データ戦略の会社が考える: 事例を元にしたAIの用途とKPIの分類

面白かった英語記事のまとめシリーズです。今回は、Jen Hyattさんという, troo.ai という会話AIの会社のCEOが World Economic Forum に寄稿した”The eight types of AI you should know about”(あなたが知るべき8つのAI)という記事記事です。

AIの利用用途に関するまとめは数多くあるのですが、この記事はAI利用を応用範囲でなく、ビジネス上の目的とKPIまで書いているのが面白いと思います。

また、会話AIにおける分類記事ではありますが、用途は会話以外にも拡張できるものが多く、ビジネスにおけるAI活用をイメージするには良い内容だと思います。スマートフォンで、自分の置かれた状況にピッタリでないとしても、例えば具体的にどんなことができるのかが把握でき他の人はどんな目的で使っていることがわかると(例: LINEが使える→友達と絵文字よりも豊富な感情表現ができる、メルカリが使える→フリマが手元でかんたんにできて安くものが買える等)、自分だったらこう使うかもというイメージが湧きやすくなるかと思います。

原文中の表に入っている Purpose (上記表の「カテゴリー」に対応) は、直訳すると「目的」ですが中身を見ると「応用分野」とか「応用カテゴリー」くらいの意味が近そうです。

Primary Intent (上記表の「目的」に対応) がまさに日本語で言う所の「目的」にあたる部分ですが、本文中の分類に加えて、大きく

i) 売上を上げる、
ii) コストを下げる、
iii) UXを改善する/新しいUXを提供する、

という視点を加えて分類すると分かりやすくなります。

実際には、自社ビジネスにおいて重点的に取り組むべきプロセスを特定した上で、そのプロセスに対して、上記のような用途と目的別KPIを参考にしながら、何を達成したいかを決める必要があります。

実際の導入事例

上記の導入イメージを膨らませるために、実際にいくつかのAI導入の事例を簡単に見て見ましょう。

メルカリの事例
先にも例に出したメルカリでは、先日Kaggle (企業が出すお題に対して、世界中からデータサイエンティストが応募をしてそのスコアを競う競技プログラミングサイト) にてこんなコンペティションを開催していました。


これはユーザーが登録した出品情報(商品名やブランド、送料有無、ユーザーが投稿した商品説明など)を元に、最適な価格をレコメンドするモデルを構築するという競技です。適正価格で販売する体験を提供することで、安く売ってしまった・高くて売れなかったといった機会損失を防ぎ収益を適正化することが、メルカリにとって重要なビジネスKPIとして認識されていることが伺えます。

同様のレベニューマネジメントに機械学習やAIを用いる手法は、Airbnbやホテル業界でもよく見られ、一定の費用対効果が期待できる分野として知られています。上記の用途別で言うと 売上改善 に相当するかと思います。


Spotifyの事例
また、そのほかの例で言えば、レコメンド分野では古典的ですが Spotify も有名です。Spotifyは最近タレントの杏を起用し「新しい曲が発見できる」をコンセプトにTVCMを展開し、ユーザーが未知の好きな曲に出会えることを自社サービスの提供価値として設定しています。

Spotifyでは、ユーザーの再生履歴に基づきユーザーが好きそうな曲をレコメンドする機能がありますが、一説には、Spotifyは曲の属性情報(ジャンルやアーティストなど)だけでなく、曲そのもの(例えば、テンポやしようされている楽器、曲の雰囲気などの情報でしょうか)を元にレコメンドを行なっているという話もあります。

*100%正しいかどうかは憶測の域を出ませんが、こちらのQuoraの記事で元Spotifyの社員とするひとが回答をしています

Spotifyの場合は、レコメンド技術を自社サービスのコアな提供価値として設定しており、サービスの一部を改善するという話よりも、これがサービスの本質的な価値として設定されているように思います。この場合、必然的にレコメンド技術の開発への投資姿勢も積極的なものになり、自社で守るべき技術の優先度も明確になると思います。 上記表との対応では 繋がり・発見 に相当するかと思います。

AI導入とKPI設定

いずれの例も、サービス上の重要なKPIとして設定されている部分に、そのKPIが改善するように適切にAIに関連するデータ分析技術を導入しています。このように、どの領域に適用し、どのようなアウトカムを期待するかを事前に設定しておくことで、効果的なAI導入に繋げることができます(実際はAIに限らず、レコメンドやBIツールなどのデータ分析技術導入の全般に言えることですが)。

元記事の”The eight types of AI you should know about”でも、カテゴリごとにKPIについて触れられています。

原文表の Indicative Mesures が、上記表のKPIにあたる部分です。これは実際に具体的な運用をする際には、ユーザーの望ましい体験と行動に基づいてもう一段分解したほうがよいでしょう。

例えば、カスタマーサービスの例であれば、

「カスタマーサービスに対するユーザーの満足度 vs. 導入前」
「カスタマーサービス1件あたりの平均対応所要時間 vs. 導入前」
「カスタマーサポート担当者の満足度・退職率 vs. 導入前」

という具合です。ユーザーの満足度が向上していて、対応時間が減ることによる人件費の減少が投資額を(時間的スパンはさておき)正当化でき、カスタマーサポート担当者にとっても望ましいものであれば素晴らしい、ということです。

AIの導入を考えるときには、こういった例を参考に、応用分野・目的・KPIについてざっくりとでも持っておくだけで、AIの開発会社との会話は圧倒的にスムーズになり、その後の投資対効果の検証も素早く行うことが出来ます。

逆に、原文中にも例が挙げられていますが、どんなソリューション(SaaSやベンダー)があるのかについては、日進月歩で進化しているので、信頼できる専門家に任せたほうが良いと思います。実際には、既存ソリューションを使った方が導入コストは抑えられるので、まずは既存ソリューションを考え、フィットしない場合は自社で開発をすることになります。その辺りの具体的な進め方の詳細はこちらの記事でも以前書きましたので、併せてご覧ください。

---

DataStrategyへ相談したい方へ

DataStrategyでは、執筆、イベント登壇、取材、サービスの改善、アドバイザリーなどの相談を受け付けています。弊社へまずは相談だけでもしてみたい、一度話を聞いてみたいという方は twitter (@motohikotakeda) でDMして下さい。

AI可能性診断 https://datastrategy.jp/aikanousei/
弊社ウェブサイト https://datastrategy.jp
資料請求 https://datastrategy.jp/document/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?