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風呂編②

※基本的には東京近郊をベースにした話です。


2010年くらいに流れたテレビの力は凄かった。今までもスタンプラリーやなんやかんやと浴場組合が頑張っていた集客もなんのその。翌日からは目に見えて2割くらいお客さんが増えた。



また関連する動きも活発になってきたのもこの頃からでサウナを言語化した本も出た(めちゃくちゃ面白い


これ以降、今まで殆ど明るみに出る事がなかった銭湯好き、サウナ好きを公言する著名人達がどこからかニョキニョキと生えてきてあらゆるメディアで銭湯やサウナの素晴らしさを語りはじめ今まで風呂無し生活者達のインフラと思われてきた銭湯や暗闇の中で中年が汗を流しブヒブヒ言っていた怪しく暑いだけの部屋が『なんだか良い物』にランクアップしてきた感じがした。

銭湯というソフト自体は成熟しきったコンテンツだもんできっかけさえあれば人気が出るのも難しい事でもなかったのか2015年あたりには平日すら銭湯がそこそこ混むようになった。

私の元にも銭湯やサウナに行ってみたいと言ってくる知人が増えた。



web界隈なんかにはなぜだか相当クるコンテンツなようで色々なサイトも充実し始め人気は更に加速した

当初はスカスカだったけどあっという間に充実した。口コミが食べログ文学化している。




人気は加速し銭湯もサウナ施設もとにかく混んだ。それは良かった。しかしそれと同時にマナーやルールまでは追いついていけなかったように思えた。だがそれでも業界は止まらない。いや、止まれないのだ。

ここで少しマナーの話に逸れる。古参がマナーやローカルルールに言及するというのはこういう文化の悪い所と言えばそうかもしれないがことこのジャンルに限っていえば公衆衛生が関わる部分であり、銭湯好きサウナ好きを公言し、ネット記事を書き、メディアで煽る人達の殆どがここを重視しない姿勢には疑問を持った。というか今も持ってる。

何も複雑な事が言いたいわけじゃない。

•湯船は身体を洗ってから
•水風呂は汗を流してから
•脱衣所には身体を拭いてから
•ドアは開けたら閉める
•使った椅子や桶は戻す
•使い捨てシャンプーとかのゴミは捨てる

細かい事を言い出したらキリがないが簡単に言うとこういう小学生でも守れるような基本的な事をすっ飛ばしてはしゃぐ輩が異常に目につくようになった(こういう利用者は今までももちろんいたけどせいぜい10人に1人とかそんくらいで最近は5人に3人くらいいる感覚)

かなり辛辣であるが考えが完全にシンクロしている人はけっこう多い。嬉しい。


今まで閑古鳥が鳴いていたような銭湯でも週末になるとどっと人が押し寄せるようになりとっ散らかってしまう銭湯も増えた。

ゴミ箱から溢れたペットボトル、びしょびしょの脱衣所、増える禁止事項の貼り紙...広く清潔な場所から遠くかけ離れなんだかごちゃごちゃした施設になってしまうというパターンをいくつも目の当たりにした。


話しは戻るが飲食店のホールのようにスタッフの1人が脱衣所をうろうろパトロールしていれば少しはマシになりそうだけど(やってる所もけっこうある)浴場経営なんてのは前述したように実際は一度死にかけていてそんな中ギリギリでやっていたような商売だ。

仕組みは割愛するがいくら組合を通し融資を引いて人材育成をしようがメンテナンスをしようがその後返済していく後継者問題は重くのしかかってくる。

ゴールドラッシュが起きたのにハンマーが無い状態で2021年今現在もこの状況を抜け出せていない施設をよく見かける。

そうして荒れた形で加速を続けるムーブメントは今まで近くあればそれで良かっただけの浴場施設に『良い施設』『悪い施設』の意識をユーザーに根付かせそれほど時間をかけずにハッキリと経営の明暗を分けた。

当然の如く今まで細々とやっていた施設の幾つかはゴールドラッシュに乗れず廃業していった(とはいえだいたいは土地を売却したりマンション経営なんかに華々しく転身したりと歴史ある建物が無くなっちゃったなぁ〜というくらいで廃業=生活できないみたいな感じでもなく悲壮感などはあまり無い。都内は。)

後継がいる所や当代がまだまだエネルギッシュな所は次々と大小リニューアルをかけその人気をただのブームに終わらないよう経営努力に磨きをかけた。



綺麗な銭湯は良いがリニューアルがワンパターンになりもう少し違うデザイナーにも頑張ってもらいたい気持ちがあってたりもする。





さて、この頃の私といえば仕事で遠征が増えたついでに地方の銭湯巡りに精を出していた

良い事言ってはりますわ
最近禁煙になっていた九州某所。信じられないけど都内も5.6年前くらいまで脱衣所で煙草吸えるとこもあった。
都内の銭湯ではなかなか味わえない風情もある。



けれども地方の銭湯は2021年いまだに厳しい感じがありゴールドラッシュもクソもないまま当代が引退したり亡くなったりしたら継続は厳しいものになるだろう。

時間が許す限り色々な施設には足を運んでみたいと思う。地方の銭湯は限りある資源。



後継問題といえばこういう好事例も出てきた。

この人の存在を知った時はなるほどこの手があったかと思った。情熱と愛情に裏打ちされた素晴らしい行動力。何軒か実際に足を運んだが実に良い銭湯だった。

若くガッツがある人が事業に興味を持つほどひと目に触れるようになっているのは本当に良い流れだと思う。好みの問題はあるが無くなるよりは1万倍良い。



こういう流れは今後更に加速していくだろう。新しい物も混ぜていく施設、古くからあるものを大切に守っていく施設、多様なスタイルがあるから面白いんだと思う。





2020年。世界を揺るがすウイルスがやってきた。ゴールドラッシュに湧く銭湯業界にも当然影響はあった。人から人へ猛スピードで感染していくという正体不明のウイルスに人々は恐怖し偉い人達からは外出禁止(自粛)の命が下った。

近年連日大盛況だった銭湯も日を追う毎に人が減っていき遂には週末ピークタイムでもポツンと1人になってしまったのでバカでかい湯船でnano湯に浸かりながら、銭湯が潰れる最後の最後まで俺は通おう!と誓った事すらあった。

しばらくするとウイルスは密室だったり密着だったりってのと相性が良くない事がわかってきた。そんならアウトドアなら良いだろうって事でテント型サウナが爆売したり密着せず個人で入れるサウナ施設ができたりとこの10年お風呂と共に人気道を歩んできたサウナはウイルスをきっかけに独立して新しい形で強く歩みを進めたように思える。

風呂とサウナはその特性上関連性は強いがそもそも一括りに語れるような文化では無いのでこうして細分化していくのは良い事なんだと最近は思う。

こちらも好みの問題はあるが増え続けるユーザーには様々な受け皿があって良い。

サウナフェスってのにも行った
ほら穴


私も今まで実際に多種多様なサウナを経験してみたけどどれも特徴があってそれぞれの良さがあった。



リンクなどは貼らないけど銭湯やサウナを利用しているだけのいわゆる便乗商法ぽいのも目立ってきていて人気になるとなんでもこうなるよなと悲しい気持ちにもなる事も増えた。

このへんに関してはめちゃくちゃ言いたい事はあるけど5万字くらいになりそうなのでそれはまたの機会に。

みんな本気じゃないってさ






そんなこんなで現在に戻る。

2021年の秋には長かった緊急事態宣言も一応の終わりを迎え銭湯にもいつもの賑わいが戻ってきた。戻ってきたって言うかまた一段と客数が増えて戻ってきた。

曜日や時間帯によって空いてる銭湯を狙っていくのも年々難易度があがってきた。

なかなか昔のようにはいかないが、それでもデカい浴槽にざぶーんと浸かってサウナで汗を流せばツラい現実も少しはマシになるってもんだと言い聞かせ今日もチャリンコを漕いで私は銭湯に向かうのだ。




最近良かった銭湯




色々書いたけど古過ぎず新し過ぎないタイプの銭湯が好き。平成初期リニューアルしたくらいの。


おわり



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